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Tokyo, 2004.6.3
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Shizu Kawata
thanks to Satoshi Tsugahara


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 秀作アルバム『BE A CRIMINAL』を2001年に完成させ、その後2枚のEPを発表してきたGarrison。2004年5月に、センス・フィールド、ランニング・フロム・ダーマとともに初来日を果たしたものの、なんと今回の日本ツアーを最後に解散してしまうとのこと。解散が決まっているバンドにインタビューするというのは何とも不思議な気持ちがしたが、ちょっとしんみりしながらも、なかなか興味深い内容の話が聞けたのではないかと思う。中心メンバーのエド・マクナマラから取材時に貰った、彼のニュー・プロジェクトとなるthe Campaign for Real Timeのデモ音源を聴いてみると、エレクトロニクス機材も駆使して、よりプロダクションに凝った重厚なサウンドを聴かせる方向性を目指しており、現在のバンドを解散させたうえで新しいことを始めたいという気持ちも充分に理解できるだけの内容になっていた。そちらはもちろん、プロの世界からは身を引くと言うジェイ・モリセットも含めて、彼らの今後の音楽人生に幸多からんことを願う。

「友達が忘れていったカセット・テープに、片面はジョウボックス、もう片面にはフガジが入ってたんだ。何も書いてなかったから、どんなバンドかも知らないまま、『こんなスゴいの聴いたことない!』って、それからずっとそのテープを聴き続けたよ」

初めに、今回の日本ツアーの感想を聞かせて下さい。

Ed:最高だよ! 今までにもヨーロッパに行ったり、全米を廻ったりした経験はあるけど、日本は俺にとって最も異質というか、これまでに行ったどこよりも馴染みのない場所だった。だから見るもの聞くものすべてが新鮮で、ほんとにいろんなことを吸収してる。

J:オーディエンスの反応も全く違うね。来日して最初のライヴでは、とにかく驚いたんだ。演奏が終わっても会場がしーんとしていて、みんな本当に静かだったから(笑)。すごく妙な感じではあった。みんな楽しんでないのかな?と思ったぐらいで。でも、そういうものなんだってことがライヴを続けるうちに分かってきたんだ(笑)。オーディエンスもライヴも、来日前に予想していたのとはかなり違ってたよ。

さて、このツアーを最後に解散してしまうそうなんですけども、何故そういうことになってしまったのか、ファンの人達に向けて説明してもらえますか?

J:Garrisonが結数されてから数年になるけれど、その間には幾度となくメンバーチェンジが繰り返されてきた。そして、オリジナル・メンバーの間にも他にやりたいことが出てきたんだ。つまり、全員にとって別の道を進む時期が来たってことさ。僕達には、それぞれが追いかけたい別の目標があって、Garrisonだけに集中するのがとても難しくなってきたんだよ。なんといっても時間が足りないのが一番の理由だな。過去4年間で約350本という数のライヴをこなしてきたけれど、これ以上はもう無理だろうってね。だからメンバー全員にとって今が潮時なんだ。エドには新しいバンドもあるしね。

Ed:ああ、今回は来日していないジョー(・グリロ)もInstructionの正式メンバーになったことだし。

J:ジョーとエドの2人がGarrisonを結成したんだ。

Ed:そう。で、ジョーがInstructionに加入して……レーベルはゲフィンでね。奴も多忙なんだよ。

J:先週はロサンゼルスでMTVのビデオ撮影があって、今はイギリスに行ってるそうだよ。

Ed:ジョーがInstructionに入る以前から、Garrisonの解散は決定してたけどね。

せっかく『BE A CRIMINAL』という良いアルバムを作り、その後の2枚のEPでは新たな音楽的可能性を示したばかりだというのに、非常にもったいないという気持ちがしています。せめてもう1枚くらいGarrisonとしてアルバムを作れなかったんでしょうか?

Ed:『BE A CRIMINAL』の後に出した2枚のEPは、ほぼ同時期にレコーディングしたものなんだ。曲調が違い過ぎるんで2枚に分けたけど、合わせて1枚のアルバムと言うこともできる。で、また新たにアルバムを作るとすると、ひどく大変なことになるんじゃないかな。とにかくみんな他にもやることがあるからね。それにRevelationとの契約も終わったし。Revelationはビジネス面で優れたレーベルではあるけど、いっしょに仕事をするのが難しくなっていて……だからEPの『The Model』は別のレーベルからリリースしたんだ。とにかく、レーベルもないし、メンバー全員が他の活動で忙しいこともあって、話し合いの結果、最終的に解散することにした。あとひとつ、個人的にギター・ロックに対する興味が薄れてきたっていう理由もある。だからGarrisonとしてもう1枚アルバムを作るのは、俺にとっては不本意なことになると思う。

そうですか、では未来を向いて、各自これからの予定や計画について教えてもらえますか?

Ed:これ、日本に来る3日前にレコーディングした新バンドのデモなんだけど(と、3曲入りのCD-Rを差し出す)。バンド名はthe Campaign for Real Timeっていうんだ。ジェイが3曲中の1曲、残り2曲はガイ(・ダノルフォ)っていうGarrisonの初代ドラマーがドラムを叩いてて、それ以外のパートはほとんど俺が担当してる。Garrisonとはだいぶ違う感じの音だから気に入ってもらえるかわからないけど、よかったら聴いてみてよ。まあ、今後はプロとして音楽を続けていくかどうか正直言って分からない。様子を見るしかないだろうね。今でも曲は書いてるし、これまで以上に音楽のことを考える機会も多いんだけど、年齢が年齢なんで将来についても考えなくちゃならない(笑)。でも音楽をやる時はいつでも真剣だし、完全に辞めるなんて無理だね。俺にとって、とても大切なものだから「もう辞めた!」って言っても結局また音楽に戻ってるんだよ。だから5年後にGarrisonを再結成して、ラスト・ツアーでまた日本に来るかもしれないし(笑)。分からないな……ミュージシャンよりもっと楽な仕事だってあるから……。

J:僕は今後、音楽に携わることはほとんどないだろうな。他にも仕事を持っているし、子どもが欲しいっていう話なんかもあって。それに旅行だってしてみたいしね。音楽をすっぱり辞めるってことではないけれど、プロのミュージシャンとして活動することはもうないと思う。楽しいけど、時間がないから。

Ed:ものすごく大変なんだよ……俺なんて長いことずっと貧乏だし(笑)。それはそれでいいんだけどさ。

あなた方だけでなく、今回いっしょに来日したセンス・フィールドも解散するそうですし、ここ数年で、バーニング・エアラインズ、シャイナー、プロミス・リング、ジョシュア、ディスメンバメント・プラン、ジュノー、デナリなど解散が相次いでいて、あの界隈のインディー・シーンは転換期にあるのかな?と感じています。実際のところはどういう状況なんでしょうか?

Ed:ああ……すごく複雑な話なんだ。俺が思うに、これは周期的なものなんだろう。インディー・バンドにとって状況がいっそう大変であることは確かだよ。今じゃインディー・レーベルやインディー・バンドでもマネージャーがいたり、プロモーション・チームがついたりしてるご時世だし。

J:きっと日本も同じだと思うけれど、なにせアメリカは物価が高いんだ。それに保健医療が全然なってなくて、国民医療保障といった制度もない。だからバンドをやっていて収入ゼロとなると、ろくに医者にも行けなくて本当に大変でね。J.ロビンズやセンス・フィールドのように、そういった生活を長く続けていると徐々に疲れてくる。自分が生きていく上で必要最低限のものさえ手に入らないんだから。安いアパートに住んで、病気になっても国民保険が無いなんていうミュージシャンも結構たくさんいるんだ。

Ed:音楽だけで食べていくのはとても厳しい。レコード売上が3万枚あったとしてもほとんど無意味だからね。10年前だったらスゴいことだったろうけど、今はそんなの大した話じゃないんだ。一方で、最近では新しいバンドがどんどんレーベルと契約していってる。メジャーは今の流行りはパンクだって目をつけてるから、とにかく契約できるインディー・パンク・バンドをかき集めてるし。でも、それもいつか終わっていくんだろうな。そもそもパンク・コミュニティーっていう意識が薄れてきてると思うよ。少なくとも俺がバンドを始めた頃からは大分変わってしまった。

J:そうだな。もし周期的なものだったとしたら……今の政治的情勢なんかも関わってくるのかもしれない。以前のようなパンクに目が向かないというか……政治的なこともあるのかもしれないね。

Ed:かもな……よく分からないけど(笑)。俺が言えるのは、お金のために音楽を作ろうっていう考えも可能なんだってことかな。で、それを狙うと失敗する。だから俺はずっと貧乏なんだろうね(笑)。でもその一方で、カーシヴやモデスト・マウスのように成功しているインディー・バンドだっているよ。彼らは音楽だけで食べていける。ただ、アメリカの文化ってのは回転が早いから、今後2〜3年はやっていけるかもしれないけど……とにかくみんな新しいものを追うことにばかり気を取られているんだ。だからそういった意味でも音楽を続けるのは難しいと思う。例えばトム・ウェイツのように息の長いキャリアを築くのは並大抵のことじゃない。インディー・ロック・バンドってのは往々にして寿命が短いね。

今、名前の出たモデスト・マウスはメジャー契約しましたが、彼らなんかの活動についてはどう評価していますか?

Ed:彼らの音楽は聴かないけど、信念や音楽性を曲げずに続けてきたバンドの良い例だと思う。メンバーがともに頑張ってきて、ようやく陽の目を見れたんだからさ。あそこまでの成功を手に入れるバンドは滅多にいないけど、これまで続けてきたことにやっと周囲が気付き始めた。もしかしたら今後も人気は続くんじゃないかな。結成して多分10年ぐらい経ってると思うし。彼らは非常にラッキーだったんだよ。そういうバンドだっているんだ。ジョウボックスなんかは幸運に恵まれたようでいて、同時に不運な目にも遭ってる。メジャーと契約して、大プッシュをもらって、素晴らしいレコードを作ったっていうのに、いざリリースの段階でレーベルは見向きもしなかった。それで「だったらもういいよ!」って話になったわけだけど、それでも彼らが良いバンドだったことには変わりない。ただ、俺に言わせれば、バンドには必ず寿命があると思う。右肩上がりに人気が出てもいつか「ここまで」っていう時が来て、その状況を保ちながらバンドを続けるか、止めるか、そのどちらかだと思うんだ。

J:音楽で何か次のことをしようと思ったら、それまでとは違う環境に身を置いて、全く新しい人達に囲まれるのも最良の方法になるんだよ。そうでないと、周囲はもちろん自分自身の期待にがんじがらめにされてしまうからね。

Ed:例えば、俺はジョウボックスもバーニング・エアラインズもどっちも好きだし、J.ロビンズが新しく始めたチャンネルズもきっと好きになるだろう。新しい方向性を見出していくバンドが好きなんだよ。

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