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Deerhoof



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話はズレますけど、以前ビリー・コーガンにインタヴューした時にも「なぜ左利きなのに右利きで弾くんですか?」と訊いたことがあるんです。そしたら「クラシック・ギターはピッキングが主体だから、そっちを利き腕の右手でやる持ち方になったけど、ロックのギターはピッキングより運指のほうが重要だから、左利きでもこの形で弾くほうがいいと思って、こういう弾き方にしたんだ」と言ってました。

Ed:なるほどね。でも、俺たちの場合ふたりとも、変な弾き方をするから……。

John:そうそう、ふたりとも別々に同じこと思いついたんだよな。

Greg:だからこいつらには、ビリー・コーガンの理屈は当てはまらないんじゃないかな。こいつらのプレイはロックのスタイルってわけじゃないから。

Ed:あまりコードを掻き鳴らしたりしないからね(笑)。

なるほど。それでは、サトミさんのヴォーカル・スタイルって、それまでアメリカのどこを探してもなかったようなスタイルだったと思うんですが……日本の童謡とかに近いというか、『おかあさんといっしょ』的な……。

Satomi:あー、アハハハ(笑)。『ポンキッキ』とか?

そういう感じのことをディアフーフでやってしまえ、と思ったのは?

Satomi:別に“やってしまえ”と思って、やったわけじゃないんです。

ごく自然にそうなっていた?

Satomi:やっぱり家にいて歌ってることが多いから、そこからパッと出てきたものをグレッグがいいと言ってくれて。別に奇をてらってとか『ポンキッキ』狙ってやってるわけじゃないんです。でもなんか、お子さんにもウケがいいから……結構ちっちゃいお客さんとかも来てくれるし。

『Pancake Mountain』にも自然な感じで出演されてましたもんね。

Satomi:自然に(笑)。(英語で)『Pancake Mountain』観てくれたんだって。

Greg:クール!

Satomi:“子ども番組の歌のお姉さんみたいな歌い方なのはどうしてか”っていう質問なんだけど……意図的なのかどうかって。

Greg:ウホ(笑)。

Satomi:自然に口から出てくるまんま歌ったら、グレッグが気に入って「それでいこう」って言ったんだよね。

Greg:うん、僕は……僕はサトミのファンなんだ。サトミの歌がホント好きで……だから、ディアフーフがサトミの声を創ったというわけじゃないんだよね。すでに彼女は自分の声を持っていた。で、それがディアフーフというバンドに合ってた、と。確かに僕もときどき「キッズ・ミュージックっぽい声だな」って感じることはあるけど、でも他にも彷彿とさせるものはたくさんあると思うよ。たとえば60年代の終わり頃って、もともとシンガーじゃなかった女性シンガーが結構いたじゃない? ニコとかブリジット・バルドーとか“歌は第2の趣味”みたいな感じでさ(笑)。ふたりともどこか冷めた、すごくシンプルな歌い方をするんだけど――特にニコはそうだったよね――それが、どことなくサトミの歌に似てると思う。あと、ボサノバのヴィブラートを入れないスタイルだったりとか、それから“アーリー・ミュージック(古楽)”を彷彿とさせる部分もあると思うな。つまり、すごく昔のヨーロッパのクラシックの歌唱法っていうか――ボーイ・ソプラノとか、そういうのだよ。飾り気のない、分かりやすい歌い方で、音が絶対滑らないしヴィブラートもまったくかけてなくて……僕はああいうのを聴くとJ-POPを思い出すんだよね。J-POPってある意味で子どもの音楽だけど、子どもだけが好きってわけじゃない。とにかくサトミの声って飾り気がなくてあっさりしてるんだけど、逆にそうだからこそ、ものすごく幅広いスタイルに対応できるんだと思う。しかも仕上がりは、モノクロームのスケッチのようなんだ。完全な模倣になることが一切なくて、彼女の手にかかるとどんな歌もその白黒ヴァージョンになる。ミニマルなスケッチみたいになるんだよ。

John:書道か何かみたいにね。

Greg:そうそう。

Ed:特に今回のアルバムは、君のヴォーカルのエレガントさが出てると思うよ。一瞬で美を生み出す力が、今回は特にすごく出てる。

ステージでのアクションとかも、自然に出てきたものなんですか?

Satomi:あれも自然ですね。“自然”って言うか、何だろ……でも、みんな頑張ってるから――ジョンとか白目むいてやってるし……。

Greg:キャハハハハ!

Satomi:だから“自分も何かしなきゃな”みたいな感じで。でも昔、ロブっていう人がいたときはもっとすごくて、ギターとかでアタックしてきて、押しくらまんじゅうとかしたりとかして、何かそんなことしてるうちに動くようになったんですけど、みんな動いてた方がやっぱり楽しいし、お客さんも見るところが拡散した方が、音楽を聴いてるだけじゃなく、何かこう錯覚を覚えません? “ここのサウンドはああいうふうじゃないのに、なんであんなに動いてるんだろう?”とか。だから、ちょっと演劇的なところっていうのはすごいあると思います。デヴィッド・ボウイとかも好きだし、“見せたいな”っていうのはあるんで……コスチュームとかあればもっといいんですけど。(英語で)もっとおもしろくしたいのよね。もっと何か……ユニークな動きを入れたいっていうか、ただ立ってるだけってつまんないし。

Ed:うん。

Greg:僕はサトミのダンスの大ファンでもある。さっきのヴォーカル話にもある意味で通じてくるけど、彼女はダンスもやっぱりシンプルなものになりがちで、しかも……何て言うか……。たとえばサラ・ジョーンズや……えっと……ピンク・フロイドのオリジナル・シンガーって何て名前だっけ?

シド・バレット?

Greg:そうそう、サラ・ジョーンズや彼なんかいい例だけど、コピーのしようがない絶対的にユニークな声の持ち主っていうのがいるだろ。彼らの歌のスタイルはすべて、彼ら自身のパーソナリティ、ユニークさにかかってるわけ。だからシド・バレットのカヴァーをやるのはすごく難しいんだ。で、その一方では……たとえばビートルズは常にこっちの声を目指してたと思うし、さっき話したニコやブリジット・バルドーはこっちの声の極端な例だと思うけど、真似するのが実際すごく簡単な声、っていうのがあるんだよね。一緒に歌うのがすごく簡単で、コピーもカヴァーも簡単にできちゃう、っていう。“君にも歌えるよ”っていう、すごく普遍的なフィーリングにあふれてるんだ――“俺がやってることはお前にはやれっこない。俺はお前を遥かに凌ぐシンガーだ。だからお前はただ見ていればいい”っていうんじゃなくね(笑)。で、同じことを僕はサトミのダンスにも感じてるんだよ。彼女のダンスはみんなにもできるし、すごくシンプルな材料でできてるものだ。そんな彼女のダンスが、ディアフーフの音楽をさらに“クリア”なものにしてくれてるわけ。ジェスチャーで音楽を説明してくれてるっていうか……歌詞を説明してくれてることもあれば、あるいは歌詞ですらないもっと抽象的な何か――高音とか低音とか、音量の大きさとか小ささとか、停止とか、テンポの速さとか遅さとか。そういったまったく抽象的な音の概念が、別にバリシニコフが踊る『くるみ割り人形』とかじゃない、ただの普遍的なジェスチャーによって説明されてるんだよ。シンプルでクリアで、誰にでも真似できて理解できる動きによってね。

Satomi:でも、それは確かに大事なことで、みんなができるような踊り……これが大切ですね。子どもでも真似したくなるような踊りって、あんまりないでしょ(笑)、ロック・バンドでこういうことしてるの。結構そういうのが好きです。それに、みんなコメントしてくれるし――“動きがよかったね”とか。

John:シド・バレットの話が出たけど、彼自身は別に他人を除外しようとしてああいう歌い方をしてたわけじゃないと思うよ。ただ孤独を感じてて、その孤独を他人にコミュニケートする手段が音楽だった、ってことなんじゃないのかな。

Greg:それは確かに。

John:お前やサトミって、コミュニケートしようといつも必死だろ? それって俺なんかには簡単にできることじゃないんだけど、だからこそこのバンドにいてよかったって、すごく思ってるんだ。というのも、このバンドにいると、自分の意思に関わりなくコミュニケートの努力をせざるを得なくなるからね。人と繋がりあう努力をせざるを得ないんだ。そのことに関しては本当にこのバンドに感謝してるよ。僕にとっては人とのコミュニケートなんてしないでいる方が、ずっと楽だからさ。

Greg:アハハハ(笑)。


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