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Tokyo, 2003.5
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Stanley George Bodman
translation by Ikuko Ono

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文句なしに素晴らしいメジャー・デビュー・フル・アルバム『アンテナ』を完成させ、単独再来日を果たしてくれたケイヴ・イン。彼らのことを深く知れば知るほど、その人となり、登場してきた背景、メンバー全員の意識の高さなどに、ますます惹き付けられていくのが分かる。このインタビュー翌日に行なわれた新宿リキッドルームでのライヴも、本当に至福の体験だった。こういうバンドとの出会いがある限り、音楽を聴き続けることはやめられないだろう。ただの筋肉ドラマーではないジョン・ロバートと、ただ車に跳ねられてるだけじゃないギタリスト(笑)アダムの発言を読んで、もっともっとこのバンドのことを知ってください。

「メジャーに入って最初のツアー中、解散の危機に陥ったんだ。でもミーティングをやって、こういう人生を選ぶんだって再確認して、やんなくちゃいけないんだぞ、っていう覚悟ができたんだよ」

おはようございます。昨日、結構大きな地震がありましたが、あなた達も感じましたか?

JR:ああ!

Adam:すごかったね! 無茶苦茶ビビったよ。あんなの初めて体験した。

アダムは、今回も車にハネられたりしてませんよね?

Adam:してないしてない(笑)。

交通事故に遭ったり、地震に遭ったり、日本では色んなことが起きるのが恒例化しつつありますが(笑)。

Adam:ホントだよ!

JR:その方が面白いからいいけどね(笑)。

じゃあ、JRには去年の取材で話を聞きましたので、今回はまずアダムの音楽的な背景を教えてほしいと思います。小さい頃はどういう音楽環境で育ったのですか?

Adam:ベン・ハーディーという名前の年上のいとこがいてね。彼の影響でキッスを聴くようになったんだ。その時はまだレッド・ツェッペリンもブラック・サバスも、存在自体を知らなくて。だから最初にギターを弾こうと思ったきっかけはエース・フレーリーだったよ。その後、ジミー・ペイジやブラック・サバスやその他のクラシック・ロックのバンドを知って、「エースって大したことなかったんだな」って分かったけどね(笑)。でも最初はエース。マンガのキャラクターみたいなロックンロール・ギタリストって感じが格好良くてね。そうやって年上の親戚とか親に影響される時期があって、それから自分自身で好きな音楽を探す時期が来るわけだけど、その頃にはメタリカとフェイス・ノー・モア、ニルヴァーナを聴いてた。その3つが僕の人生を変えた3大バンドだね。そしてニルヴァーナがパンクやアンダーグラウンド・ミュージックへの扉を開けてくれて、よりハードコアなバンドやパンク・バンドを聴くようになったんだ。

なるほどぉ。年齢的に考えて、キッスとかは全盛期を過ぎてた時期なんじゃないかと思うのですけれども、当初はクラシック・ロックの他に刺激的なロックが周りに無かったっていうことなんでしょうかね? ニルヴァーナが出てくる前には。

Adam:そうだね、キッスはもう全盛期じゃなかった。でも自分にとっては新しかったんだ。『Destroyer』とか『Love Gun』とか昔のアルバムを聴いてたよ。初めて味わったハード・ロックの味、っていうかね。その前にも両親がビートルズを聴いてたから、ロックンロールを知ったのはビートルズからだったけど。

グランジ/オルタナティヴというのが一番最初にリアルタイムで接して興奮できた音楽だったんでしょうか。

Adam:うん。ニルヴァーナの曲って覚えるのもプレイするのも結構簡単なんだよね。で、その頃ちょうど12か13歳っていうパーフェクトな年齢だった。彼らは容姿からしてロック・スターっぽくなくて、近所の兄ちゃんみたいだったし、しかも僕らにとって理解しやすくてプレイしやすい歌だったから、インパクトは絶大だったよ。「これだ、バンドをやろう!」っていう気になったんだ。ギターを弾く意欲も強まったし。だってエース・フレーリーみたいには弾けなかったけど、カート・コバーンのようには弾けたから、すごくやる気を出させてくれたんだよね。

ちなみに、あなたにとっての3大ギタリストは?

Adam:ええっと……ジミー・ペイジ、キース・リチャーズ、それから……。

3人だけっていうのは難しかったですか(笑)。

Adam:3人に絞るのはね(笑)。考えるからちょっと待って……う〜〜ん……スコット・ホバート。ジャイアンツ・チェアーっていうバンドにいた人だよ。あまり人気の出なかったバンドだけど、僕もスティーヴも彼のギターにはすごく影響されてるんだ。エモーションを引き出すような、独特のスタイルで弾く人でね。ソロの弾き方じゃなくて、コードの組み立て方を参考にしてるんだ。

ああ、そのバンドのカバーを『タイズ・オブ・トゥモロウ』でやってますよね。あの曲を選んだ理由は?

Adam:ニルヴァーナって、いつも自分たちが受けた影響を隠さずにいたよね。そういうところがいいなって思ってたんだ。僕がメルヴィンズやヴァセリンズを知ったのはニルヴァーナのおかげだし、マッドハニーもそうだけど、あまり人に知られてないバンドの優れた曲をカバーすることがきっかけとなって、それを気に入った人がレコードを探しに行く、っていうことにインスパイアされて、僕らもやってみたいと思ったんだ。

いい話だなあ。ただ、日本ではジャイアンツ・チェアーはなかなか見つからないんですよ。

Adam:不可能かもね(笑)。

去年の来日公演ではニルヴァーナの“ブリード”をカバーしてましたけど、他にやってみたい曲とかはありますか?

Adam:今は『アンテナ』の曲に集中してるんで、カバー曲まで手が回らなくてね。ジャイアンツ・チェアーとかニルヴァーナとかツェッペリンのカバーはもうずっと長いこと演奏してきてるから少し飽きてきちゃったし(笑)、そろそろ新しいカバーをやろうか、って思い始めてるとこだよ。ああいうのってレパートリーに入れてると、気分を変えるのにいいんだよね。

わかりました。さて今更ですが、その最新アルバム『アンテナ』を聴きまして、本当に素晴らしい作品で感動しました。自分にとって「2003年は『アンテナ』が出た年だ」というフレーズを、「91年は『ネヴァーマインド』が出た年だ」というのと同じような意味で使いたいぐらいなのですが――

Adam:アハハハハ。どうもありがとう!

JR:この上ない褒め言葉だなぁ。

今作を完成させた手応えは、実際どんな感じですか?

JR:とにかくホッとしたんだよね。

Adam:うん、ホッとしたな。

JR:曲作りをしてる期間が2年近くにも及んでしまって、レコーディングの半年ぐらい前までには、とにかく……レコーディングしたくてうずうずしてたんだ。スタジオに入る予定の日がどんどん延期されたりしてたからね。もうじれったくて、早くやっちまおうぜ、って感じだった。だから、実際にスタジオに入れた時はそれだけで嬉しかったし、やっとリリースされた時には、2年間の結晶をやっと世に出せたことに、本当にホッとしたよ。

Adam:メジャー・レーベルでの初めてのフル・アルバムだからね。いろいろ学ぶべきことは多かったよ。この経験を経て、次はもっとこうしよう、って対策を立てられる気がする(笑)。

時間がかかってしまった大きな原因というのは?

Adam:プロデューサーのリッチ・コスティがオーディオスレイヴのアルバムをミキシングしていたから。それが原因(笑)。そっちの方がケイヴ・インより優先順位が高かったんだな。

(笑)ただ、時間をかけただけあって納得のいく作品になったんじゃないかと思うんですけれども、例えば今回のアルバムを作るにあたって、今までのインディーズ時代と最も違ったことといったら何になるでしょう?

JR:『アンテナ』以前のアルバムはほとんど……というかどれも、1〜2週間で完成させてるんだよね。マテリアルを用意してスタジオに入って、レコーディングして終了、っていう。その時点でテープに保存されたものがそのままリリースされたんだ。『アンテナ』では3カ月近くかけてレコーディングしたから、それがまず大きな違いで、レコーディングの方法も……その辺はアダムの方がうまく説明できると思う。

Adam:うん。『アンテナ』で聴けるリフは一つ残らず、それぞれ別のギター、別のアンプ、別のエフェクトペダルを使って録音されてるんだ。メジャー・レーベルの予算で時間がたっぷりあって、実験的なことをやる余裕があった。でも振り返ってみると、低予算と限られた時間で作られた以前のアルバムの方が、かえって勢いの面では勝るような気もするんだよね。『アンテナ』のサウンドは少しぎこちない風にも僕らには聴こえるんで、次のアルバムでは以前の自然さを取り戻したいと思ってるんだ。

レコーディングの現場でも、急にアレンジを変えたりというようなことをやったんでしょうか?

Adam:どんなサウンドにするかはスタジオの中で決めたけど、アレンジとか曲の構造は、リハーサル・スペースでの2週間のプリプロダクションの段階でリッチ・コスティと詰めてあったよ。全体の流れはどうか、各パートがうまくかみ合ってるかどうか、とかね。そういったことはスタジオに入ってしまってからやり直してはいない。スタジオでは特定の音を選んでいくことに集中したんだよね。

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