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Tokyo, 2004.3.21
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Rui Nagashima


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 エンジン・ダウンやフィン・ファン・フーンといった優良バンドも所属するアメリカン・インディー・レーベル=LOVITTからソロ名義でのセカンド・アルバム『エイディッド&アベッティド』をリリース(日本盤はCATUNEより発売)したベン・デイヴィスが、2004年3月に初来日を果たした。作品を聴く限りではパンク・ロッカーからシンガーソングライター・モードへと移行した観もあるものの、その演奏を生で目の当たりにして、彼の音楽がサウンド的な変化とは関係なく高いエモーションの熱量を保っていることがよく分かった。過去にはスリーピィタイム・トリオ〜マイルマーカーに在籍し、現在はバッツ・アンド・マイスというバンドとソロの二足のわらじを履いているベンだが、それぞれでの主な担当楽器がベース/ドラムス/ギター/キーボードとマルチプレイヤーであるにもかかわらず、最終的にはバンドとしてのフィーリングを非常に大事にしているところが、その表現を特徴づけているのではないかと思う。今回ともに来日した仲間達も単なるバック・メンバーという感じでなく、極めて一体感の強い演奏をしていた。このインタビューにもドラムスのルーク以外全員が参加し、「ベン・デイヴィス」という名称を自らが所属するグループ名のように使っている(※2ページ目の写真は、右からアイメイ、ティム、ルーク、イリアーナ、ベン)。
 何度も書いてきたことだが、現在のアメリカのインディー・シーンの裾野の広さと、それが海を隔てた日本のシーンと当たり前のように自然に結びついている状況は本当に刺激的だ。より多くの人に興味を持っていただきたいと思う。


「1人でするよりも複数でやる音楽の方が好きなんだ。色んな人と共同作業をすることによって、よりクリエイティヴになれるんだよ」

今日までに何日か日本でライヴを行なったわけですが、その感想を聞かせてください。

Ben:最高だよ。アメリカとは全然違う。アメリカの観客は、演奏中も酒を飲んで騒いでいたりするんだけど、日本人は熱心で礼儀正しい態度で見てくれる。本当に驚かされるよ。あと、日本は清潔で美しい国というのは本当だね。

観客の反応が違うことで、やりにくかったりとかはしないですか?

Ben:うーん、僕はやりにくいとは感じなかったけど。

Tim:僕の感想を言わせてもらうと、まず関係者のみんながとても親切にしてくれて感謝している。日本のシーンには強い絆のような物を感じたよ。僕も他人のことは言えないんだけど、アメリカだとリハーサルが終わったら、自分達が演奏する時以外は外にいたりして、他の出演バンドのプレイは観ないことも多いんだ。でも、ここではみんなお互いのバンドに興味を持ってきちんと観ていたし、コミュニティーとして機能がしっかりしていることに感心したよ。本当に素晴らしいことだと思う。

Ben:それが日本のシーン全体なのか、それとも僕らを呼んでくれたCATUNEレーベル独自のものなのかは分からないけどね。僕らは本国ではLOVITTからレコードを出していて、このレーベルでも所属バンド間にいい関係性はあるんだけど、各バンドがアメリカ全土に散らばっていることもあって、正直ここまでコミュニティーとして機能してはいないね。

日本のバンドの演奏も観たと思うのですが(※各地の公演には、UP AND COMINGやTOE、THE UNDERCURRENTらが参加した)それについても簡単に感想をお願いします。

Ben:驚かされたのは、一緒にやった中で良くないと思ったバンドが1組もないということだ。本当に珍しいことだよ。ツアーで共演するバンドの中には、絶対に良くないバンドがいるものだけど、今回対バンした日本のバンドは全て、演奏が精密でタイトで、それぞれ完成したスタイルを持っているということが言えるね。

Tim:日本人の性格なのか、音楽に対してとても真剣に取り組んでいるように感じるよ。みんな音楽をとても楽しんでいる。才能もあるし、よく練習もしていると思う。真剣にやってる人が多いことが、より良いバンドが生まれる環境を作っているんだろうね。

そう言っていただけると嬉しいです。さて、昨夜のライヴを僕も観させていただいたのですが、まずとても良いバンドだと感じました。このメンバーはどのようにして集められたのですか?

Ben:最新アルバムをレコーディングするにあたって、できるだけ多くのミュージシャンに参加してもらったんだけど、その中から同じエリアに住んでいて、友達だっていうことから自然と今回のメンツになった。みんな他にもバンドをやっていて、ティムとアイメイはデス・アーク、イリアーナはデヴィル、ルークはオールナイトとバッツ・アンド・マイスをぞれぞれやっているんだ。

Tim:僕は、ベンのことは昔からよく知っていて、彼がいたマイルマーカーも大好きだった。ベン・デイヴィス名義のファースト・アルバムでバックを務めていたメンバーは、今ではそれぞれのバンドが忙しくなりすぎて続けることが不可能になって、その後、僕とアイメイはセカンド・アルバムや、今のバック・メンバーが形成されるまでの期間ずっと立ち会ってきたんだ。今のメンバーはアルバムの音を再現するといったこと以上に、ライヴ・バンドとしての良さを大切にしていると思うよ。

そう言えば、昨日のライヴでアイメイのギターの弦が切れた時、ほとんど中断せずに他の楽器だけで演奏が続けられたのを見て、その対応力の高さに感心しました。ああいう状況にも馴れたもの、っていう感じでしょうか?

Aimee:ライヴにトラブルは付き物だから、それに備えて、たとえメンバーの1人が欠けたとしても演奏できる曲が用意されてるの。昨日は私のギターの弦が切れたけど、その前はドラムのスネアが壊れたりしたし。

Ben:彼女がよくギターの弦を切るのは事実だよ(笑)。

Tim:そして弦の張替えの速さは東海岸でも一番なんだ(笑)。

Aimee:私がやっているもうひとつのバンド=デス・アークは、ギターとドラムの2人編成なの。だからこのバンドみたいに安心して周りに頼ることができて、お互いが支えあってやれる状態はとても心地いいわ。

なるほど。では、皆さんが、どんなふうにして音楽に興味を持ったのか、そして自分で音楽をやろうと思ったのか、それぞれのきっかけについて教えてください。

Ben:僕は両親が2人ともミュージシャンだったから、音楽に囲まれて育ったんだ。母親は音楽教師で、父親は牧師なんだけど、父はアコースティック・ギターを持って教会で歌っていたよ。で、詳しくは覚えてないけど、小さい頃からロック・バンドをやりたいと思ってたね。幼い頃から音楽をやっていたんだ。5歳くらいの時にはヴァイオリンを習ってたけど、それはあまり好きにはなれなかったな。初めて聴いたレコードは、父が持っていたビートルズのファースト・アルバム。あとは、バディ・ホリーとか。もう何度も何度も聞いたよ。バディ・ホリーは僕にとってパンク・ロックだったんだ。彼の演奏の仕方とかね。そのふたつが自分にとって重要な幼い頃の音楽体験だった思う。それから、14歳くらいの時にドラムをやり始めて、長いこと叩いていたけど、あまり上手くはならなくて。その後、ドラムをやめて歌い始めたんだ。スリーピィタイム・トリオではベースを演奏していたけど、マイルマーカーではまたドラムを叩いたり。必要とされれば、なんでも喜んで参加したよ。バンドで演奏するのが好きなんだ。すべて上手とは言えないけど、楽器はなんでもやるよ、広く浅くだけどね。

色んな楽器を演奏できるのだから、全て自分だけで演奏したアルバムを作ろうとは思ったりしませんか?

Ben:ノー(笑)。ずっとバンドをやってきて、1人で何かするよりも複数でやる音楽の方が好きなんだよ。色んな人と共同作業をすることによって、よりクリエイティヴになれるんだ。もちろん曲ごとに僕の中でイメージがあるから、「この曲では僕が絶対ギターを全部弾きたい」とか「キーボードを弾きたい」とかいうこともあるけどね。完全なソロ・アーティストとしての活動にはあまり興味はないな。あくまでバンドが好きなんだ。

Tim:メロディーやベースラインなど、アルバムのほとんど全ての曲をベンが書いている。デモの段階では、ベン自身がギター、キーボード、ドラムなど全ての楽器の演奏を一人でやってるんだ。で、それをもとに、他のメンバーが色々と付け足していくんだけど、僕らにとってもすごく楽しい、非常にクリエイティヴな作業だと思う。

分かりました。では、あらためて他の皆さんの音楽原体験について聞かせてください。

Tim:僕の場合、今でも覚えてるのは、初めて買ったCDがマイナースレットとオペレーション・アイヴィだったこと。ギターとかを始める前の話だね。もっと幼い頃はビートルズとかジョン・デンバーを聴いていたよ。ただ、自分でも音楽をやってみようと思ったきっかけは、ニルヴァーナのファーストとブラック・サバスのファーストだね。それらを聴いて、自分にも音楽ができるんじゃないかと思ったんだ。彼らの音楽は、刺激的であるのと同時にとてもシンプルに感じられたからね。で、自分が演奏するようになって、本格的に音楽に熱中しだしたんだ。高校の時にはパンク・バンドをやっていて、そのバンドを通じて、フガジやその他のパンクやハードコアにおける哲学・思想を知った。もし、僕が影響を受けたバンドを3つ挙げろと言われたら、フガジ、オペレーション・アイヴィ、そしてハンマーヘッドと答えるよ。

では次に、アイメイさん。

Aimee:私は、幼い頃にはマイケル・ジャクソンとかブルース・スプリングスティーンを聴いていた。あ、今でも彼らの音楽は好きで聴くわよ(笑)。で、6歳の時フランスに引っ越したんだけど、引っ越した家にはピアノがあったの。それで行った当時はフランス語もしゃべれなかったから1日中ピアノで遊んでいたのね。その後10歳くらいの頃にアメリカへ戻ってきて、自分のピアノを買ったのよ。それから楽器をやるようになって、高校ではバンドをやっていた。その頃はずっとメインストリームの、今にして思えばどうでもいいような音楽ばかり聴いていたわ。その後、現在みんなが住んでるチャペルヒルに引越して来て、地元の素晴らしいバンドを観るようになったの。ここでの体験が、私の音楽の視野を広げてくれて、今の自分を形成したと思ってる。

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