譜面台の陰から
>テンポ考<
音楽の三要素というとメロディー、和音、リズムというとことになる。
しかし、ここでもう一つ加えたい要素がある。
それはテンポだ。
曲を弾く時というのは、
最初の音を鳴らした瞬間から時間の経過が始まり、
最後の音を弾いたときに経過した時間は止まる。
誰が弾いてもこれは変わらない。
この時間の経過こそテンポということになる。
そしてこの時間の経過の伸び縮みで曲の速さが決まってくる。
曲を弾き始めて弾き終るまでの時間というのは曲によっていろいろだ。
しかし、もっとマクロ的にテンポを見ていくと、
一曲の中の部分部分で実はテンポは動いている。
メトロノームに合わせてみると、
いやに押さえられるところと引っ張られるところがあると思う。
これがその部分におけるテンポの伸び縮みということになる。
これは独奏曲を弾くうえでは避けては通れない、
テンポの揺れということが出来る。
これもあまり大きく振れなければ、
そのまま通り過ぎて曲の最後まで無事にたどり着くこともできる。
しかし、このテンポの揺れが大きくなると、
だいたいそこでミスの起こる確率はかなり高くなってしまう。
1ページの長さの曲で音形にあまり変化の起こらない曲であれば、
普通あまり大きな事故は起こらない。
しかし、曲も2ページに及ぶ長さになってくると、
音形の変化も大きく出てきてテンポは変化しやすくなる。
緊張とともにこの変化は大きくなりやすくなり、
だいたいミスにつながってしまう。
右指の動きと左指の動きが合わなくなる現象が出現するためだ。
同じ音形のパターンが続くと早くなりやすい。
また和音から音階的な動きに変化するときにも早くなりやすい。
また難しい動きから易しい動きに移った時にも早くなりやすい。
テンポが遅くなる場合はこの逆ということになる。
テンポが変化しても何事も起こらないことももちろんある。
これはラッキーと呼んだほうがいい部類だ。
だいたいは何らかのそごをきたす場合がほとんどだ。
特に人前に出た時はこういう現象は大きくなるので、
思わぬ失敗につながることが多い。
ようするに自分で弾いていた時には気が付かなかった状態が、
緊張することによって大きくなってしまう結果、
信じられないようなミスにつながる。
こういうテンポの変化を未然に防ぐことはできないだろうか・・・。
メトロノームを傍らに置いて演奏できれば一番確実だとは思う。
しかし、実際そんなことはできない。
特に舞台に乗ってしまったらそれは無理だ・・・。
やはりメトロノームなしでもテンポをコントロールできるように、
これは練習するしかない。
発表会も近づいてきたことを考えると、
このテンポをコントロールするということは重要度が高いと思う。
では、どうしたら演奏しながらテンポをコントロールしていくのか・・・。
なんとなくというのはまったく無理な話で、
いくつか方法はあると思う。
まず、早くなりやすい音形に入るところでは、
入る直前に必ずいつもより遅めに弾き始める。
これは意識して練習をしないと出来ない。
フレーズの切れ目であれば、
さらにそこでテンポを意識して遅めにしやすいと思う。
長い音符から短い音符に変わると、
そこでも早くなってしまうことが多い。
これが実は一番厄介なところで、
なかなかテンポをコントロールするのが難しい。
この場合、短い音符に移る前から足でテンポをとって入るのが有効だ。
こういうところは無造作に入ると、
だいたいテンポが崩れてミスを犯しやすい。
休符をしっかりとるというのも一つの方法だと思う。
だいたい休符を意識して弾くことはないというのがほとんどだと思う。
音符は想像できても休符は想像外ということはよくあることだ。
しかし、この休符をしっかりとって次に入るというのは、
次に弾かれるテンポにとっては非常に大きな意味を持っている。
休符を止めた後というのはいきなり早くは弾けないものだ。
要するにタイミングが合わないと弾き出せないということだ。
このタイミングというのは、
だいたいその前に弾かれていたテンポでタイミングをとるから、
前のテンポを引きづることが出来る。
休符を無視しているあなた!
今練習してる曲の休符を確認してみましょう。
ひとつの曲をメトロノームのように、
同じテンポで弾き通すことはまずできない。
遅くなったり早くなったりしながら演奏していくわけだが、
このテンポの速くなったり遅くなったりを、
しっかりコントロールできれば、
かなりの確率でミスのない演奏に、
たどり着くことが出来るのではないだろうか・・・。
もちろん口で言うほどやさしいことでもないし、
ここに言葉ですべて書ききれるわけでもない。
細かくは是非質問してほしいところだ。
ギターという楽器は和音が弾ける大きな利点がある反面、
和音とメロディーを一曲の中で同時に弾くという、
大きなギャップというか矛盾を抱えてる楽器だ。
他の楽器以上にテンポについては研究を要すると思う。
無手勝流ではなかなか思ったような演奏に結びつきにくいということはいそうだ。
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