譜面台の陰から
>気になる演奏(一)<
7月の発表会が終わって、
一か月余りが過ぎたところで、
録画されたDVDを見て気になった演奏に遭遇。
どの演奏もいろいろ感性をくすぐるものはあるのですが、
特にこの二曲の演奏は引っ掛かりを感じた。
バロック時代のイギリスの音楽家、
ヘンリー・パーセル作曲のロンド。
この曲はイギリスの作曲家であるブリテンが、
青少年のための管弦楽入門という曲に使っている。
まあ、知る人ぞ知るの名曲でありよく知られた曲でもある。
ギターにも編曲されていてセゴヴィア、ブリームも録音している。
バロックのギターのレパートリーとしてもポピュラーな曲ではある。
今回発表会で弾かれたこの曲の演奏について、
いろいろ気になったことを書いてみたい。
上手かったかどうかを論じても意味がないので、
この演奏がどういう意味を持っていたかを書き留めておきたい。
まずテンポ。
全体のテンポはいわゆるこの曲が持っているテンポよりもだいぶ遅めだと思う。
もちろんCDなどに録音されてる演奏のテンポとはかなりの差がある。
では、この演奏がテンポから見て失敗であったかどうか・・・。
この演奏を聴く限り、
これはかなり計算されたうえで成り立っている演奏だと思う。
要するに自分の今のギターを演奏する技量と、
真正面から向き合って計算されて演奏されたと思う。
この曲の持っている危険度というのはかなりのもので、
時々破綻してしまう演奏を聴いたことがある。
非常に細かい動きを要求されるために、
緊張してしまうと指がとまってしまうという危険がある。
この危険を考えた時に、
どのテンポで演奏するべきかを考えないといけないと思う。
その時に一番気にするべきことは、
自分の持っている技量と相談ということになる。
正面向き合って冷静に判断できるかどうかだと思う。
その時に割り出されたテンポなんだと思う。
この曲はスラーが多用されていて、
ただ弾いてるだけでもテンポが速くなっていくというのがよくある。
これも計算しておかないと弾くに任せてしまうと、
結局、後半になって指が追い付かなくなって、
止まってしまうというのも非常な確率で起こりうることだ。
この演奏もやはり後半に向かってテンポは速くなっていっている。
しかし、出だしのテンポの速さをおさえることによって、
早くなっていくテンポも許容範囲に収めてしまっている。
最後までこれといったミスをしないで弾ききっているのはそのためだ。
人前で初めてこの曲を演奏するというのはかなりプレッシャーがかかると思う。
細かいスラーの連続というのは指の緊張が最大の敵となる。
この緊張するというのは実はテンポとも深い関係がある。
緊張する度合いが持っている技量のテンポを上回れば、
最初から危険度の高い演奏になってしまう。
緊張する状態を持っている技量のテンポが下回れば、
余裕が出てくると思う。
このちょっとした余裕が弾くテンポによって出せるかどうかが、
演奏の成功、不成功の分かれ目になると思う。
演奏というのは一回目から100%で弾きたいとは誰しも思うもの・・・。
しかし、実際はなかなか難しい。
今回のこのロンドの演奏には、
一回目の演奏ということも大きな意味があると思う。
要するに次に弾く時の演奏の仕方に伸びしろを残したといういことだろう。
このくらいの曲になると一回で100%の演奏は難しい。
100%を目指すあまり破綻してしまっては、
次の伸びしろの芽も摘み取ってしまうことにつながりかねない。
曲のレベルが上がっていくほどに、
完成させるのもやはり一歩づつということになる。
伸びしろを残しながらいかに演奏していくかだと思う。
初心者から始まってこの曲を弾くようになるまでの過程と何ら変わらない。
やはりまずこのレベルの曲を演奏するには、
自分の持っている演奏技量としっかり向き合って、
そこから一つ一つの演奏するための要素を、
割り出していくことが重要だと思う。
とにかく周りの演奏の情報に振り回されず、
自分としっかり向き合うことだと思う。
そして自分の演奏をまずしっかりできるようにすることが重要だと思う。
次回はもう一曲の気になった演奏を取り上げてみたいと思う。
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