譜面台の陰から
>コレクション<
音をコレクションする・・・。
なんのことだという人もいるかもしれない。
今、生徒のS氏のコレクションである、
ロイヤルコペンハーゲン&ビングオーグレンダール展が、
渋谷の松涛美術館で開かれている。
これはS氏が長年かけてコレクションした一品ばかりだ。
希望があれば入場招待券を差し上げます。
若干のコマーシャルから入ってる感はありますが、
ここからが本題です。
コレクションする、物を集める。
この言葉のイメージは、
目に見えるものを集めるということを、
すぐに連想させる言葉だと思う。
実際切手を集めたり、
歴史的なものを集めたり、
絵画を集めたり、
骨董品を集めたり、
とにかく集める対象というのは驚くほどいろいろあるもんだ。
なんでも鑑定団が長寿番組になるのもうなずける。
「集めてる」
「何を???」
この簡単な会話の中でお互いの認識というのは、
どんな物体を集めてるのか・・・。
要するに目で視認できるものと決めつけてるわけだ。
しかし、音楽という分野で集める、集めてるという会話では、
何を連想するだろうか・・・。
これまた間違いなくどんな楽器を集めてるのか・・・。
この認識だろう・・・。
いわゆる目で見あてる具体的なもの・・・。
これも個人の趣味である限り問題のないことだ。
しかし、音楽というものは、
そもそも楽器を奏でるというところから始まってるはずだ。
音の出るものであれば何でも楽器たり得るわけだ。
そのいろんな楽器いや出てくる音を楽しむ・・・。
これが音楽の本質ではないかと思う。
実はこの音をコレクションするという会話が、
なぜ出てこないのかがちょっと不思議に思う。
今まで何十年と楽器にかかわってきたが、
音をコレクションするという会話をしたことがない。
もしかしたら自分だけかもしれませんが・・・。
音は目に見えないから具体的に楽しめない・・・。
確かにそれはほんとだなと思う。
でも、音楽というのはそもそも感性で受け止めるべきもので、
目で見て物体として受け止めるべきものではないと思う。
いろんな楽器から出てくる音を感性の中に、
コレクションとして保存していく。
これもある種立派なコレクターだと思う。
しかし、なぜかあまり熱心な会話まで発展しない。
感覚的なものだけに、
言葉で表現しにくいということもあるかもしれない。
それ以上にそういうコレクションに興味を持っていない、
楽器愛好家が多いのかもしれない。
もちろん実際にそういうコレクターもいることは確かなのだが、
少数派ってところが現実じゃないかと思う。
少数派というのは少数派で、
顔を合わせる確率も少ないから、
そういうコレクションの会話も当然限りなく少なくはなるわけだ。
ギターという楽器は独奏楽器という側面が強い。
一人で籠って弾くというと若干語弊があるが、
一人で完結してしまう楽器だ。
そうなるとそこだけの留まってしまって、
幅広く他の楽器の音を聞く機会を、
持とうとしなくなるのも無理からぬこと・・・。
それがどうしたといって当別悪いことでも、
非難されるべきことでももちろんない。
しかし、自分の庭の芝生を語るとき、
自分の芝生だけ見ていたのでは、
実際、良いも言いも悪いも語れないはずだ。
できるだけ広くいろいろの芝生を見て歩いてこそ、
自分の庭の芝生のことを語れると思う。
要するにいろんな芝生を見て、
自分の感性の中にコレクションすることで、
初めて多面的にものを見ることができる。
ギターを演奏していて、
自分の楽器をの音を聞くとき、
その音がどんな音なのか、
はたして感性で受け止めたことがあるだろうか・・・。
自分の楽器を語れるということは、
いろんな音のコレクションをたくさん持っていれば、
より多くを語ることができる。
コレクションした音のことについて、
より調べて深めれば、
それだけまた自分の感性を進化させることができる。
趣味と遊びの違いはここにあると思う・・・。
ギターという楽器を演奏しているなら、
この音をコレクションするということを、
少し考えてみてもいいのではないだろうか・・・。
自分のギターというものに、
より幅を持たせた興味を持てるのではないだろうか・・・。
興味を持つということは、
新しい刺激を受けるということとイコールだと思う。
新しい音との出会い・・・、
これによってより自分のギターで語れることも、
より多くなるのではないだろうか・・・。
音楽は万国共通語だという話がある。
しかし、籠っているだけでは実際何も語ることはできない。
いろんな音を自分の感性の中のコレクションとして集めてみてもいい。
集めた音を自分の楽器を通して楽しむのもいいと思う。
ただし、はっきりと言えることは、
CDはだめです!!
CDは音に関しては何も語るものはありません。
音というのは楽器を弾くことによって、
演奏者と聞く人間の間の空気を振動させて耳に届くもの・・・。
CDの電気を媒体にしたものは実際の音とは何の関係もありません。
このことだけは気をつけなければいけないことです。
レオナルド・ダ・ヴィンチの絵を絵葉書を見て語れないと一緒です。
単純に知るということだけです・・・。
これは感性には絶対に届きません。
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