譜面台の陰から



                   


                          >弦を替える(三)<






 猛烈な暑さの夏も、
9月の終わりころでようやく終わりになりそうな気配・・・。
気配というのは、
まだ猛暑を盛り返す可能性がありそうなのだ。
そう思っていたほうが無事って気がしないでもない。
一夜で初冬を思わせるくらい下がった気温が、
そのまま低い状態で行くとも思えない。
またジワジワっと来るのではないと、
つい疑ってかかってしまう・・・。
そのくらい厳しい暑さで神経が痛んだということだろう。

 これだけ暑いとギターの弦の消耗もかなりひどい状態だと思う。
ものすごい湿気と暑さにさらされれば、
ギターの弦というのはかなりもろくなるものだ。
暑くて練習してないからそれほど傷まないという問題ではない。
この強烈な湿気に毎日さらされれば、
弦の痛みもひどくなっていると思う。

 涼しくなったここが弦の取り換えどころじゃないかと思う。
これだけの湿気の中で消耗した弦を新しい弦に変えると、
ちょっと弾いても全く違った音が出てくると思う。
すっきりした張りのある音というのだろうか。
今までの弦とは、
はっきり違った音が出てくるのはよくわかると思う・・・。

 消耗した弦をそのまま張って弾いていると、
楽器自体にもいい影響は出ない・・・。
いまいちになった弦の振動を楽器に伝え続けると、
楽器がその振動を覚えてしまって、
その音がその楽器の出す音に固定されてしまう危険がある。
次に弦を変えても容易には戻らなくなってまう。

 大体古くなった弦の音というのは、
魅力には乏しい音になっているのが普通だ。
その魅力のない音に慣れてしまうと、
それがギターの音だと弾いてるほうも思い込んでしまう。
それはそれで悪いということもないわけだが、
その結果が問題になってくると思う。

 大体人間というのは、
新鮮な感覚を呼び覚ましてくれるものには、
相応の魅力を感じるものだと思う。
いつも変わらずの中では、
大して魅力というものを感じなくなるのが人間だと思う。
ようするに変化のないところでは、
イマジネーションもわかないということだと思う。

 これはギターを弾いてる時でも同じことだと思う。
古い弦のままいつも鮮度の乏しい音を聴いてると、
人間の感覚というのは、
徐々に反応しなくなってくるもんだと思う。
新鮮な反応の乏しい状態を長く続けていくと、
結果的にギターに対しての飽きにつながりかねない・・・。
飽き自体というのはそれだけで多様な要素を持っているから、
これだけとは断定できないが、
一つの飽きという状態におちいる要素にはなると思う。

 人間というのは飽きの状態に陥ったものに対しては、
驚くほど反応というのは鈍くなってしまう。
反応が鈍くなればなるほど飽きの状態は深まってしまう・・・。
しかし、この状態におちいってしまう原因は、
意外とギターにかかわっている本人にあることが多い・・・。
弦を替えるということが面倒くさがるというのは、
結構多く聞く話でもある。
時間がかかるということ言われればそれはそうだが、
ギターという楽器にかかわっていく以上、
弦を替えるという行為は避けて通れない。
また、マメに替えていくと、
かかる時間も短縮していけるというものだ。
かかる時間が短くなれば、
面倒と思う気分も縮小させることができる。
ギターに触れるというのは何も練習するときだけとは限らない。
弦を替えるというのも十分ギターにかかわっていく行為だと思う。

 ギターを弾いていても忘れそうになるいい音。
新鮮な感覚を呼び覚ましてくれる音というのは、
弦を新しく替えてみるとわかると思う。
少なくともそれまでとは全く違った音が出てくると思う。
そこで新鮮な感覚が呼び出されれば、
気分的にずいぶん違ってくると思う。
弦を替えるのをめんどくさがらないで、
気温の低くなった秋の夜長を、
弦を取り換える時間にしてもいいと思う。

 楽器を弦を変えても何をしても動かない状態にしてはいけないと思う。
あまりひどい状態になると、
音自体を元に戻すことも難しくなってしまう、
弦はやはり替え時を間違えないように替えていったほうがよさそうだ。


 


 
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