譜面台の陰から



                   


                         >テンポについて(二)<
  





 最近ちょっとギターという楽器のテンポということについて、
考えることが多くなった。
少しまとめてみたいという気になった。

ギターという楽器を演奏する時、
なにを一番気をつけるだろうか・・・。
音を間違えないように、
音符の長さを間違えないように、
細かく言えば気をつけることというのは、
いろいろ出てくるのかもしれない。

音を間違えたり長さを間違えたりすると、
メロディー自体が変わってしまう。
いわゆる「聞いたことはあるけど・・・」
知っている曲とは一致しないメロディーになる。
そこは曲を仕上げていく段階の最初で一番気をつけることだろう。

では、曲を仕上げていく最終段階では、
なにに気をつけて練習したらいいのだろうか・・・。
楽譜に書かれたことを覚えて、
最後に人に聴かせる段階で、
なにを気をつけて練習するのか。
それはテンポだといえる。

ギターという楽器の特徴で一番他の楽器と違うと感じるのは、
いわゆる曲に対するテンポ感だ。
ギターという楽器は、
とにかく快速で弾くことの不可能な楽器だと思う。
もちろんプロのギタリストたちを対象にしていってるわけではない。
プロは、一般ではできないことができるからプロなのであるから、
当然テンポの問題も解決していて当然だ。
むしろ一般のギター愛好家に絞った話ということになる。

ギターという楽器は。
ピアノに次いで伴奏とメロディーを一緒に弾くことのできる楽器だ。
これは非常に便利で、
一人で曲を演奏できてしまうという大きなメリットがある。
楽器も持ち運びができて、
その場でケースから出して演奏できる。
ギターという楽器の魅力を支えている大きな部分だと思う。

しかし、メロディーと伴奏を同時に弾けるということは、
運動性というめんではかなりマイナスとなる。
6本の弦を左手だけで複数押さえて移動しなければならない。
この状態で運動性がいいとはとても思えない・・・。
逆に右手は狭い弦と弦の間を、
4本の指で分担して小刻みに行き来するだけの運動だ。
これは左手より敏捷に動きそうだ。

こう見て見ると右手と左手とでは、
運動性に大きな差があることが分かる。
ギターというの弦を弾く側に利き腕が来るのが普通だ。
左利きの人はそればかりではないが・・・。

利き腕が弦を弾くということは、
細かい動きを正確に弾くことができるということであり、
左手より俊敏に動くということだ。

6本の弦をセーハしたり複数の弦を押さえて移動する、
左手の運動性はとても右手にかないそうにもない。

右手というのは、
自分がいろいろな情報から手に入れてイメージした、
メロディーの速さ通りに弾こうとする。
それは右手の動きだけだと、
かなりのところまで近づけるのかもしれない。
しかし、ギターは左手で、
複数の弦を押さえて移動しなけれんばならない。

こう考えて見ると右手と左手というのは、
運動性ということで見ればとても一致するものではない。
これはギターの持つ非合理な現実だ。

ほかの楽器を少し見て見ると、
フルートは左右の指の組み合わせでメロディーを演奏する。
ヴァイオリンは弓で弾いて、
4本の弦を短いネックを押さえて演奏する。
チェロは指板はかなり長い、
これは運動性は少し厳しそうだ。
ヴァイオリンのようなわけにはいかないが、
それでもおおかた単旋律を弾く。

管楽器も弦楽器も複数の音を、
たくさん弾いて演奏するといういことはなさそうだ。
ギターのようにほとんどの音に複数の音がついていて、
演奏する楽器は特異な部類といえるだろう。

こう考えてくると、
ギターという楽器のテンポの選択範囲というのは、
かなり狭いことが分かる。

当然ながら速いテンポは苦手ということになる。
ゆっくりしたテンポの曲は、
それほどの制約を受けずに弾くことができると思う。
しかし、問題はテンポが速いという設定のある曲を弾く時だ。
この速いというイメージの速さが、
どこを基準にしてイメージを持っているかというのは、
かなり大きな問題だ。

ギターという楽器はほかの楽器が持っている、
アレグロという早さとは一致できない。
これはもう宿命だと思ったほうがいい。
ヴァイオリンの持つアレグロの速さで、
ギターの独奏曲を弾くことは一般では不可能だ。

最終的なギターのテンポを決めるときというのは、
極めて慎重にならなければならない。
特にある程度早いというテンポが要求されている曲には、
より慎重さが必要だ。

早さを必要とされている曲で失敗する演奏を聴くことがある。
舞台に立てば緊張もプラスされるから、
より慎重な対策が必要だ。

ギターという楽器は、
テンポに関して言えば極めて神経質な楽器だと思う。






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