譜面台の陰から


                 >アンサンブルの楽しみ<


 
もう二月も終わりですね。

一月は正月があったせいか感覚が鈍化していたせいか、

少し長く感じましたが、

二月は情け容赦なく過ぎていきます。

素直に、早えーな・・・と、

まあ、コロナウィルスに振り回される令和二年の始まりです。

 アンサンブルの楽しみ・・・。

これはなんだというところから始まるわけですが、

音楽というのは大元はアンサンブルから始まってます。

大元は個人で名人芸を聴衆の前で披露というのはなかった。

特に教会関係では声のアンサンブルが主だった。

グレゴリオ聖歌は無伴奏の声のアンサンブルだ。

楽器も現代とはまた違ったものが使われていたが、

アンサンブルが主だった。

その中で卓越した技量を持つものが単独でも演奏するようになり、

ソロで音楽を表現するという世界が生まれて、

現代まで続いてると思う。

ソロ演奏はもちろん自分の完成を発揮して表現するという、

大きな魅力を持っていますが、

ソロ演奏の土台というのはアンサンブルにあるんですね。

大体演奏に必要なテンポ感、リズム感、ピアノフォルテは、

アンサンブルをする中で培われるもんです。

ギターは独奏をする楽器という根強い観念が存在しますが、

強固なこの行き方というのはギターの世界だけじゃないですかね。

ピアノの世界にもそういう傾向は存在しますが、

共通して和音が一台の楽器で出せるというのがありますね。

一台でメロディーも伴奏も弾けるという世界は、

楽器の孤立化を招いていくんですね。

ギターのソロの演奏で唯我独尊的になるのは、

この楽器の特徴を見れば当然と言えば当然なんです。

しかし、そもそもテンポ、リズムというのは、

目で見えるわけではないので、

ほとんど気にされることがないんですね。

そうなると大体、超個性的なものに出来上がってくるんですね。

目に見えないテンポ、リズというのがヤマ勘で形作られますから、

きわめて個人的なものになって聴いてると、

聴いてるほうには理解不能というものになってくるんですね。

なにを弾いてるのかわからないという感想が出てくる演奏です。

テンポ、リズムを無視して練習していくと超自己陶酔型の演奏になり、

なんだか気持ち悪いものが出てくるんですね。

だいぶ前ですがどこかの楽器店が主催したコンサートで、

そういう演奏にお目にかかったことがあります。

演奏してる本人はもう完全に自己陶酔の中に浸ってるんですね、

聴いてるほうはなんだか夢遊病の中にいる感覚なんです。

聴いてるとテンポ、リズムがほとんど天上界で、

地上には足がついてないんですね。

こういう状況って結構ギターの世界ではありがちですよね。

よく生徒の皆さんにはメトロノームで練習ですね、

ということを言うのですが、

一番手っ取り早いのはアンサンブルをするということですね。

一人一人というのは大体独自のテンポ感、リズム感を持ってるんですね。

この独自というのが非常に重要で、

この独自を推し進めていくと、

地上から離れて天上界の感覚になっていくわけです。

どうであっても自分の勝手じゃないかと言えば、

そうですね。

しかし、人間というのは自分のやってることが、

人に認知されないと続けていくことが難しい動物です。

天上界の感覚というのはなかなか第三者には理解するのは難しいです。

地上に足をつけてないと伝わりにくいですね。

ピカソの絵なんか天上界の最たるもんじゃないかという人がいますが、

ピカソは基本の天才で基本的なことがすべて完璧なんですね。

そこから出発してるので一見めちゃくちゃなキュピズムの世界あっても、

地に足がついてるんですね。

地に足がついてるから共感を呼び込むことができたと思いますね。

ただめちゃくちゃに書いても単なる天上界の世界になってしまって、

誰もなんだかわからない世界だったんじゃないかと思います。

 このテンポ感、リズム感をどうやって共通のものとしていくか。

テンポ感、リズム感というのは一人一人独自に持ってるもので、

双子であっても完全に一緒なんてことはありません。

このひとりひとりバラバラなものを、

どうやって共通なものへと変えていくのかということです。

メトロノームに合わせるは確実にいいですね。

でも、メトロノームには表情がありません。

テンポ、リズムの形成には、

非常に有効であることに間違いはありません。

テンポ、リズム、プラス情緒感をプラスできるのが、

実は、アンサンブルなんですね。

人と合わせるときは、自分の独自のテンポ感リズム感では、

合わせることはできません。

ズレにズレて不快なものとしか表現されないんですね。

それぞれの共通のテンポ、リズムに合わせようとしていくわけです。

そこからだれでも受け入れられる、

テンポ、リズムが作られていくんですよね。

ピアノ、フォルテもみんなで渡れば怖くないの精神で、

その感覚も結構できていくんですよね。

ただアンサンブルで大事なことは、

それぞれが同じレベルで弾けてないと、

どうにもならないということです。

それ相応の責任というのは出てくるんですね。

メトロノームにはない人と人との感性のキャッチボールも、

楽しみの一つになるんですね。

アンサンブルをする機会というのは、

なかなか簡単にあるもんでもないし、

その辺に転がってるもんでもありません。

アンサンブルのできる環境というのは、

大事にしていったほうがいいでしょうね。



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