譜面台の陰から



                       >身につける<



 2019年も一か月が過ぎますね。

2018年の12月も末になってくると、

来るぞ!来るぞ!というなんとも言えない気分。

なにが来るのかというと2019年。

元号が変わる年。

オリンピックの前の年。

ラグビーの世界大会がある年。

消費税が10パーセントに上がる年。

あまりうれしくない・・・。

けっこうほんとに上がるか懐疑的な見方もあるが・・・。

なんだかんだいろいろある2019年、

ポコッと明けて一月も最後の日。

朝からどんよりで降らなかった雨が降る予報。

夜には雪になるかもという予報・・・。

 今年の最初に書いてみようと思ったことは、

身につくということはどんなことってお題です。

よくというかしょっちゅう聞かれるのが、

せっかく覚えた曲も次の曲に取り掛かると、

きれいさっぱり忘れてしまうという話。

ほんとにもったいないと思う、という嘆きに近い言葉をよく聞きます。

ほんとに発表会などで演奏するためにしっかり覚えた曲も、

次の新曲に向かうときれいさっぱり記憶から消えてしまう。

ほんとにもったいないという言葉。

確かに人間というのは新しい情報が頭に入ってくると、

前のことはけっこう忘れてしまう。

しかし、ほんとにきれいさっぱり消えてしまうのだろうか・・・。

人間生まれてこの方の記憶がすべて消えてしまっていると、

どういことになるのか。

想像するとけっこう恐ろしいですよね。

なぜ今、仕事ができて、生活ができているのか。

なにもない状態では決してないですよね。

何十年と生きてきた記憶の積み重ねで生活し、

仕事ができているわけだと思うのです。

生まれてこの方記憶で思い出せるの5歳くらいの事からかな。

でも、その前から人間というのはいろんなことを体験してるんですよね。

でも、記憶によみがえらせることってほんの少しですよね。

では、なぜいろいろな状況に対処しつつ今を生きていられるのか、

考えてみれば不思議ですよね。

沸騰したやかんは触ると火傷するから誰も触ることはないですよね。

でも、それっていつ覚えたか分かる人ってほぼいないんじゃないですか。

人間どこかで痛い思いをしたことで体が覚えてるんですね。

親に怒られたり、実際、熱いやかんを触ってしまったり・・・。

でも,そのことは意外と頭では覚えてないですよね。

では、どこで覚えてるのかということです。

頭の記憶ではなく体の記憶として覚えてるんですね。

熱いやかんに触れたら危ないということを、

実際、そのやかんの前で状況を頭で説明したりしないですよね。

体で覚えてるから頭で反応しなくても大丈夫なんですね。

こういうふうに人間の記憶というのを眺めてみると、

頭で記憶したものというのは必要な部分というのは、

体に蓄えられてることが分かりますね。

ほんとに印象に残ったこと重要だと強く判断したこと、

これらのことは体に貯蔵されていくんですね。

 もとい・・・。

せっかく苦労して暗譜して発表会で必死で弾いた曲は、

ほんとに新しい曲の情報が入ってきたら消えてしまうのだろうか・・・。

よく聞くのが前に覚えた曲がまったく弾けなくなってしまったということ。

ほんとにきれいさっぱり消えてしまったのでしょうか・・・。

そうではないと思いますね。

やはり体にその情報というのは貯蔵されてると思います。

人間というのは頭で記憶しただけのことは忘れてしまうんですね。

ただ、体に染みついたことというのは簡単には忘れないようにできてると思う。

人間の五感というのはパニックになった状況というのは忘れないんですね。

細かいことは忘れてしまうのですが、

パニックになった事柄というのは体は覚えてるんですね。

時間をかけて覚えても曲というのはそのままでは忘れてしまいます。

要するに頭で止まってしまってるからです。

頭の記憶というのは時間とともに消えてしまうんですね。

そこで人前で弾くという一種のパニック状態を引き起こすことで、

体にまで記憶を落とし込んでいくんですね。

体に貯蔵された記憶というのは、

一度忘れたと思っていた曲でも楽譜をたどっていくと、

かなりの部分で思い出してきますね。

だいたい記憶した時に印象深かったところから思い出しますね。

後はパズルのように欠けたところを埋め込んでいけば、

一曲を思い出すことはできます。

最初に覚えた半分くらいの時間で思い出すことができるんですね。

まったく忘れてるのは頭だけで、

体で貯蔵された曲は簡単には忘れないということです。

比較的最近経験したのは20年前にコンサートで演奏した曲を、

また演奏したみようと思い譜面をたどってみたのですが、

譜面自体はまったく覚えてないのですが、

音符をたどっていくと指が自然な感じなんですね。

まったく初めてという感じがしない・・・。

20年間まったく一回も弾いたことがない曲を、

なんだか自然な指の動きなんですね。

これはほんとにびっくりで、

かなり怖いところも完璧に弾くことができましたね。

一度しっかり覚えて人前で演奏した曲というのは、

体に貯蔵されているということを確信しましたね。

頭の記憶では20年間まったく思い出すことはなかったわけですから・・・。

一度しっかり覚えて発表した曲というのは、

決して完全に消えてるわけではなく、

体にしっかり貯蔵されていますね。

頭の記憶というのは時間が経てば消えてしまうのは当然なんですね。

すべて頭にとどまってしまえば、

頭も機能不全に陥ってしまうかもしれないですね。

しかし、人間というのは体で貯蔵していけるシステムが備わってるんですね。

身につくというのは、この体に貯蔵されたことなんだと思いますね。

一度演奏した曲を忘れないようにするには、

ときどき体の貯蔵庫から出していくことが必要なんですね。

繰り返し貯蔵庫から出してほこりを払っていけば、

確実に忘れないで済むということですよね。

身につけるということは、そういうことの繰り返しなんでしょうね。

頭で覚えただけにしないで、

体の貯蔵庫にしっかり貯蔵していくことが、

すごく大事ということが分かりますね。

体で覚えたことは忘れない。

よく言われる言葉ですがここでもやはり生きてるんですね。



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