譜面台の陰から






                     >緊張について・・・(一)<
  






 いよいよ発表会が近づいてきました。
そこで今回はよく話題になる、
緊張するについて書いてみました。
何回かに分けて書いていきます。

人前で演奏する。
発表会でありコンサートであり、
友人であり家族であり・・・。
とにかく自分だけで演奏する状況とは、
かなり違った環境で演奏するということがある。
そこで必ず話題になってくるのが緊張する、
またアガッテしまう・・・。

緊張したりアガッテしまったりした時に、
何が起こるのだろうか・・・。

手のひらに汗をかく、
右手が震える、
左手が震える、
両方の手が震えてしまう・・・。
足台に乗せてる左足が震えてしまう。

若干極端な例では額に汗をかいて、
それが流れてきて目に入ってしまう・・・。
ここまで来ると、
演奏そのものにかなりの影響が出てきてしまいそうだ。

どうして人前に出て演奏しようとすると、
このような現象が体に起こるのだろうか・・・。
生理学的に論ずれば納得するだろう。
しかし、納得したからといって
それで緊張しなくなるなどということはまったくない。

緊張に打ち勝つ方法というのも聞く限りいくつかあるようだ。
前の人が演奏している間に、
手のひらに人の字を書いて飲み込む・・・。
三回くらいこのことを繰り返すと落ち着くようだ。

ワンカップを一杯ひっかけてから出る。
深呼吸を三回して出る・・・。

なんとなく涙ぐましいの感ありというところだ。
そして、よく聞かれるのが緊張しない方法を教えてほしい・・・。
そんな方法があるならこちらが聞きたいと思うのだが・・・。
まあ、聞いてくる方にすれば切実なものがあると思う。
やはり緊張というのは、
演奏するという行為の結果を良好にすることを妨げる、
悪い菌のようだ。
うまく弾きたいのにそれを妨げるわけだから、
どうみても歓迎されるわけがない・・・。

やはり何か解決策はないかと質問される。
しかし、これに関しての決定的な回答というのは実はない・・・。
逆にいえば人前で緊張することを前提にして、
考えてみたらどうかということだ。
これはもう防ぎようがないという結論から、
始めてはどうかということだ。
ちょっと安易な前提だろうか・・・。

人の字を書いて飲み込む・・・、
ワンカップ大関かどうかわからないが、
一杯飲んでから舞台に出る。
それぞれ効果があるのかもしれないが、
全員に当てはまるかというとそうも言えない・・・。
ワンカップといってもアルコールがだめな人はどうにもならない・・・。
無理に飲んで舞台で居眠りしてしまえば元も子もない・・・。

何か一般にできる対策はないだろうか・・・。

対策という話になったところで、
まず考えてみたいのはなぜ緊張するのかということだろう。
人は演奏にかかわらず人前に出ると、
強弱はあるにしても、
ある種の緊張感が自分の中に発生すると思う。
緩んでいた神経がピンと張るわけだ。
これはほとんど無意識で条件反射的に緊張する。
これが目の前に美女が現れると、
言ってることも意味不明になってしまう・・・。

神経がピンと張るのは人前だけということはない。
山登りで危険と感じるか所を通過する時でも、
神経はかなり強く張りつめる。
こんなところで神経が緩んだままであれば、
間違いなく転落だ。

要するに人間というのはそういう動物なんだと思う。
自分にとって非日常的な状況が出現した時に、
一気に神経は張りつめる。
毎日に慣れた飽きるほどの相手の前では、
まず神経は張り詰めない・・・当然だ。

自分だけの空間にいる時はだいた神経は緩みきっている。
その状況でギターを演奏すれば、
まあほとんど信じられないくらいスムーズに演奏できる。
適度に無駄な力が抜けて指の動きもスムーズになる。

しかし、ステージなどに乗って人前に出れば、
神経はいきなり自分の意志とは関係なく張り詰める。
この自分の意志とは関係なくというのが問題になるわけだ。

この神経の張り詰める状況に出て、
この神経をコントロールできれば演奏というのは、
思ったとおりに近くなるわけだ。

なぜ思ったとおりにコントロールできないのだろうか・・・。
自分のことだけに悔しい気分にもなろうというものだ。

しかし、コントロールはできない。
いや、コントロールできないように人間の機能はできている。
あぜなら、危険な場所に来て緊張する神経を、
コントロールして緊張しないように押さえこんでしまえば、
まず危険な通りに落ちるだろう・・・。
張り詰め続けるから慎重になるわけだ。
人間というのはコントロールできる神経と、
コントロールできない神経とはっきり分かれているわけだ。

人前に出たり舞台に乗ったりするときは、
このコントロールできない神経が働くわけだ。
だから緊張せずに演奏するということはまずできない・・・。

実は上達するにはこの緊張する神経が是が非でも必要だ。
舞台に出て緊張する。
この緊張した状態は体に強烈にインプットいされる。
そして指を動かして演奏した状態は、
その状態を逃れる術として体は覚えこむ。

これは人間の五感すべてにインプットされる。
その時にそれまでの練習を完全に超えて次に受け入れる体制になる。
ということはそこで上達するわけだ。

だからといって弾けないほどの緊張を、
そのままにして舞台に出ることもできない。

そこで対策というのが結構用意されている。
その対策ですべてがクリアーされるわけではないが、
緊張を押さえこむ術にはなると思う。
                
                   (以下次号に続く)





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