譜面台の陰から



                        >音を楽しむ<



 音楽という漢字は、音を楽しむと書きますね。

あまりに読んで字のごとしなので、

まあ、なにも気にせず普段使いしてますね。

ギターを弾いてればギターの音を楽しむとなります。

ほんとに当たり前のことですが、

では、ギターの音の魅力とはなんですかと聞かれて、

明確に答えられる人って実は少ないんですよね。

好きなんだからどうでもいいじゃないかと言われれば、

その通りです。

しかし、富士山は確かに美しい。

といっても実際毎日眺めてれば飽きるんですよね。

人間というのは同じ刺激に対しては、

徐々に無反応になっていく性質の動物です。

要するに飽きるんですよね。

ではなぜ、ギターを弾くことが、

長く続けていられるんだろうとなれば、

それは曲が変わるからです。

音というのは基本的に変わらないですから、

ただ同じ音だけを聴き続ければどんなに好きでも飽きます。

そこに曲の変化が出てくるので飽きずに弾き続けられるわけです。

しかし、実際はギターの音色というのは日々変化してるんですよね。

楽器の音色といってもいいかもしれないです。

毎日同じということはないんですよね。

その時の爪の状態にもよっても変わるし、

気候によっても変わります。

空気が乾燥してるか湿ってるかで変わってきます。

弦を弾く爪のタッチの状態でも変わってきます。

その都度、喜悲こもごもでイライラしたり喜んだりの繰り返しです。

ギターは特にダイレクトに指先で弾くので音の変化は大きいと言えます。

難しいし奥が深いともいえるわけです。

では、ギターの音ってどんな音?

って、聞かれて答えられる人って結構少ないんじゃないですかね。

要するに比較対象するものを知らないからです。

もちろん全員がということはないです。

しかし、ギターを弾くということは、

一人で完結してしまうのです。

要するにメロディーも伴奏も一人で完結できる楽器だということです。

要するにギターという部屋から出る必要がないということです。

ところがほかの楽器というのはそうはいかない。

バイオリンにしてもチェロにしてもフルートにしても、

その世界だけに引きこもっていることはできないのです。

メロディー楽器には大体ピアノの伴奏が入ります。

そこですでにピアノの音とメロディー楽器の音を聴いているわけです。

オーケストラもありますね。

ほかの楽器というのは、実は音のバリエーションが豊富なのです。

ギターのように単色の世界観ではないわけです。

ギターを弾くということは実はギターの音を楽しんでるとは言えない。

曲を楽しんでるかもしれないですが、

音を楽しんでるとはなかなか言えないのではないか・・・。

自分の楽器がどういう音を出してるのかさえなかなか分からない。

同じギターの音だけの世界では、

ギターの音を理解することはなかなかできないと思う。

ギターを弾いていてもギターの音には興味がなければ、

まったく必要のない話ではありますが・・・。

生で弦楽器の音なりフルートの音なりを聴けるように、

室内楽のコンサートを開催してますがなかなか難しいですね。

CDを聴いてオーケーということであればまったく意味がない。

CDで聴く音にはまったく意味がないにもかかわらずです。

楽器の音というのは非常に多様性に富んでいて、

それ自体非常に興味深いものだと思います。

しかし、生で聞かなければまったく意味がない。

空気を震わせて耳に届く音というのは、

CDでは100パ-セント再現できない。

例えばチェロの音はCDで聴く音と生で聴く音では、

似ても似つかない音です。

それでも同じに聴こえると言われてしまえば、

ハァ…そうですかとしか言わざるを得ない。

CDに慣れた耳ではそういうこともあるのかもしれない・・・。

ゴッホの絵だけ見てたらゴッホの良さは分からない。

ギターだけを聴いていてもギターの音の本当の良さは分からない。

人間というのは必ず比較対象物があって、

初めてそれがどういうものかを判断する。

一つのものだけを見続けたとしても、

なんの感想も出てこないのが人間です。

単純に飽きるだけです。

比較対象物を見て刺激を受けてどういうものかを判断する。

それが人間の感性というものではないかと思う。

曲のことは言えても音のことを言える人が何人いるのか・・・。

それほど多くはないと思う。

人間というのはいろいろ聴かないと、

音に対してなんの感想も出てこない動物ではないかな・・・。

ギターの音の魅力を楽しむには、

それなりの幅広い努力が必要のようですね。



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