=街道をほんのチョビッと行く=
志馬遼二著


=白峰三山縦走記⑨=

2020年はコロナ禍により旅に出られず・・・。
仕方がないので2008年に登った北岳を盟主にする、
白峰三山を縦走した記録を連載します。
「街道をほんのちょびっと」なんてことはなく、
結構な大縦走だった・・・。
コロナ禍終息まで連載します。






恐怖の雷雨から一夜明けると山の空は快晴だった・・・。
朝焼けが眩しい・・・。
昨日の大荒れの空がうそのようだ。
変わりやすい山の空そのものだ・・・。
朝焼けの中を「農鳥岳」へ出発した。






登り始めるとすぐに小屋は小さくなって、
視界から消えようとしている・・・。
後ろには「間ノ岳」の巨魁が重量感を持って控えている。
この泥臭いが強烈な存在感がこの山の大きな魅力だ。

懐の深い南アルプスの象徴的存在だ・・・。






岩場の足場の悪い縦走路を、
一路「農鳥岳」を目指して歩く。

まだまだ先は長い・・・。





斜め前方に、
南アルプス南部の山「塩見岳」が見えてきた。

もうずいぶん前に登った山だ。
深い原生林の中を登る印象的な山だった。
一本一本の木が太くて、
昼なお薄暗く、
神秘さを漂わせたいい山だった・・・。





農鳥岳」の山頂が見えてきた。
すでに登った人たちが山頂のへりに集まっている・・・。

「農鳥岳」で白峰三山の3000メートル峰は終わりだ。
空中漫歩の山旅もこの山頂で終わりだ。

膝は完全に痛んでいて、
一歩踏み出す度に痛みが走る・・・。






農鳥岳」の山頂から見る「北岳」は、
富士山を小型にしたような円錐型をしており、
優美な姿に見える。
「農鳥岳」の角度からでないと、
この形には見えない・・・。

登ってきた者にしかその姿を見せようとしない。
凛として品があり、
赤石山脈の盟主として風格十分だ。





本題に入る前に「白峰三山」をどう読むか・・・。

正式な呼び方を書いておきます。
「しらねさんざん」と読みます。

「農鳥岳」からの「北岳」の優美な姿に別れを告げて、
「白峰三山」から地上への下降点となる、
「大門沢下降点」へ出発。

「大門沢」の下りは6時間・・・。
膝の痛みはすでにあきらめて、
とにかく「奈良田温泉」を目指して降りなければならない。
帰りの時間を考えるとのんびりはしてられない・・・。





「農鳥岳」からの雲海。
雲海の中に浮かぶ山の頂は、
海の中の島影のようにも見えますね。
大自然はやはり基本は海と山なんですね。

雲海こそは山を楽しむ基本の一つ・・・、
という気もしますが・・・。





農鳥岳」山頂での南アルプス最後の記念写真。
今は、8月の終わろうとしている29日。
なんとなくすでに遠い記憶のような錯覚をする・・・。

現実の世界から非現実の世界を思うと、
なんだか一枚フィルターがあるような、
不思議な感覚にとらわれる。
それが記憶を遠くする原因だと思う・・・



=つづく=


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