歌だけでなく、執筆活動も精力的に取り組んでいるReyのエッセイ、コラムをご紹介します。
 《河北新報(夕刊)4月より6ヶ月間、隔週木曜エッセイ執筆
                           『桜の咲く頃』
 
 兵庫から仙台へ引越しして来て、三週間程になりますが、四月に入ってようやく北国の寒さも和らぎ、遅い春の訪れを感じられるようになったこの頃です。
 以前、私が住んでいた家のすぐ前には夙川と言う日本百選のさくらの名所にもなっている川が流れていました。この時期になるとたくさんの屋台が河岸に並び、普段はとても静かな住宅地が一変して見物客でいっぱいになります。
地元の人達はもちろんの事、日本各地からこの桜を見に夙川へ足を運ぶ人もたくさんいると聞いています。
もともと日本古来の花と言えば「梅」だったのが、平安時代から「桜」に変わっていったそうです。そして、その満開の花の下で宴を行い春を楽しむと言う何とも日本的な情緒ある風習が今日につながっているようです。
 しかし、本来の「花見」とは、今のようにただドンチャンと酒宴をくり広げることではなく、神様へのお供え物をいただくと言う意味を持っていたらしいのです。
 「さくら」の「さ」は作物や穀物を示し、「くら」は神の居座る場所・・・・だから人々は桜の木の下にお供え物をして、神様が召し上がらないから皆でお供え物を食べたと・・・・。
 頭の片隅にこのことを想いながら、今年は仙台の桜を見に行って来ようと思ってます。
 ただ桜の木自体の寿命は約六十年位と言われているらしく、現在植えられているもののほとんどが、昭和後期のもので、もしかしたらそろそろ寿命を迎えるのでは・・・・・と言われているそうです。それも、桜の約八割を占める「ソメイヨシノ」はもともと「エドヒガン」と「オオシマザクラ」を掛け合わせたものを接ぎ木で増やしたもので、同じ遺伝子を持ち、とてもデリケートな木だそうです。
 毎年、約束したかのように春の訪れと共にかわいい薄紅色の花びらを開かせてくれるこの桜の木を私たちはもっともっと大切に見守ってゆかなければいけないのかも知れません。
                         『未来予想図』  (4月28日掲載分)
 
 4月23日に初アルバム「EXPRESSION」が発売されましたが、今回のアルバムは私にとって忘れられない一枚になりそうです。
 何故かと言えば、このアルバムのレコーディング中に主人の楽天イーグルスへの監督就任が決まり、私自身も今後の音楽活動を大きく路線変更する事となったからです。
 私は歌い始めて15年程になりますが、最初は主人の反対もあり(自分の夢を叶える)ことが、主婦という立場ではこんなに大変な事なのかと思い知らされるような毎日でした。
 それでも懲りずに幾度も話し合い、時にはケンカに発展する事があっても、この数年で主人がようやく私の熱意や頑張りを受け入れてくれるようになり、やっと本格的に音楽活動が出来る環境が整ってきた矢先の監督就任の話でしたから、本音を言えば手離しで喜べたわけではありませんでした。
 だけどあれ程、音楽活動を反対いていた主人が「僕らは今とても幸せに暮らしている。ママが監督の仕事を受けて欲しくないなら断るよ」と、まず私の気持ちを第一に考えてくれたのです。あの時もしも「俺が決めたんだから黙ってついて来い!」と言われてたら「私にもやりたい事があるから・・・・」と、こんなにすんなり仙台行きが決まらなかったかも知れません。(言い方ひとつで人の気持ちって動くんですよね・・・・・)
 今は、悪戦苦闘中の主人の傍で、何が出来ると言うわけじゃないんですが、ご飯を作って帰宅を待って、たまに気分転換の散歩やドライブにお伴する・・・・そんなささやかな存在になれている事にちょっぴり喜びを感じている毎日です。
 それでも月の半分は遠征に出掛けるので、留守中にラジオや執筆、新曲制作と出来る範囲で自分の為の時間を作っています。
 ただ、わたしの未来予想図は大幅変更を余儀なくされた事だけは事実ですが・・・・これもまた人生の面白いところかも知れませんよね。
 
『カタルシス』  (5月19日掲載分)
 
 緊張や制御から解放されてスッキリする事を(カタルシス)と言うそうですが、ストレス解消の方が一般的な言い方ですよね。
 私のカタルシスは、雰囲気のいい静かな喫茶店で優しいBGMを聴きながら美味しいコーヒーを飲む事と、主人の留守中に子供が寝た後、スカパーで映画を観る事かな?
 作詞=詩を書くと言う事は感性の部分がとても大切で、こと恋愛ものの詩に関しては、ドップリ主婦をやっていると程遠い世界の話になってしまうんですよね。だからって、現実に恋をするわけじゃないから(これは大問題ですからね)、でめて映画を観たり本を読んだりして擬似恋愛の世界で(あの頃の感動を今一度〜)って体験してるわけです。
 そう言えば、主人のカタルシスって一体何なんだろう?思いつくのは、ジョギングや魚釣りなどですが、最近は忙しくてそんな時間もないように見えますが・・・・・・。
 だいたい普段から「ストレスが無いのがストレスだ!」って豪語しているような人ですから、相当の強がりで、強がっている事自体がストレスの筈なんですけど・・・・ね。きっと、今のチーム状態や主人の立場を考えると、今までに味わった事のないプレッシャーと日々格闘中だと思っています。(本人、絶対に言いませんけどね)
 仙台に引越して約二ヶ月・・・・。主人も私も新しい環境にだいぶ慣れてきました。それでも住み慣れた場所と言うわけにはいかず、これからの暮しの中でたくさんの新しい発見と出逢い、自分達の居心地の良い場所を探してゆかなければなりません。
 そんな中、海と山に囲まれた最高の立地と仙台の人達の素朴な優しさが、思えば今の私達にとっては何よりのカタルシスになっているような気がします。
 あらためて、感謝、感謝です!!
《サンケイリビング仙台》4月23日号より、毎月レギュラーコラムスタート
 「やっと・・・」と言うか、「ついに・・・・」と言うか(日本語独特の言葉のニュアンスはとても難しいですね)西宮からの荷物も無事に仙台に届き、いよいよ新生活がスタートしました。
 思えば主人の楽天ゴールデンイーグルスへの監督就任が決まった去年の11月以降(私自身は10月から始まった初アルバムのレコーディングのまっ最中で)公私共に本当に忙しい毎日でした。おまけにこんな時期に限って、三人の子供達がそれぞれに卒業や入学が重なり、週末の金曜から日曜は沖縄〜福岡〜仙台〜松本と飛び回っておりました。普段からそんなに身体が強くない私にとっては、自分の体力が一番心配でしたが、やっぱり「女は強し」ですね・・・・。自分でもビックリする位の元気さで何とかこの忙しい日々を乗り切ることが出来ました。
 また幸いな事に、この忙しさのお陰で細かい事を色々考える暇もなく、15年間住み慣れた場所を離れるという淋しさに浸る余裕もなく、「あっ!」と言う間に仙台に移り住んだって感じがします。
 それにしても、仙台に住んでまず一番に感じた事は、仙台の人達の優しさがこれまでに住んだ何処よりもいっぱい溢れている事です。
 例えば、ほんの1メーターの距離しか乗車しないタクシーの運転手さんで(もう何10回も乗車したのですが)誰ひとりとして、近距離で嫌な顔をした人とは会っていません。又、道を尋ねた際も誰もがとても親切に道を教えてくれました。
 寒い北国の春の中で、仙台の人たちの優しさに包まれて感じるこの心の温もりが、新参者の私には何よりもうれしい毎日をもたらしてくれています。本当にありがとございます。
 主人の契約が3年なので、3年で西宮へ帰る予定ですが、このままだと仙台大好きな私はこのまま仙台に居着いてしまいそうです。