アクロバットバイオリン弾きの部屋

　啼鵬　　編（2006年　ちょっと改変）

自分の音楽歴を語る中で、この人だけは紹介しなくては…

と思っている、自分にとって音楽への考え方その他多大に影響を受けた

もっとも重要な師のひとりです。

　もちろん、現在まで色々な先生に音楽を教えていただき、その先生方や先輩達からも、

多く影響を受けていますが、おそらく現在の自分の音楽や、価値観に最も影響して

いるのは、この啼鵬先生です。

　ちなみに啼鵬（ていほう）と言うのは音楽活動をなさっている時の

芸名です。

別に中国系の方ではありません…純粋な日本人です（笑）

　ギタリストのお父様の本名が「定芳」といって、それを音読みし、「ていほう」

という名前で活動なさってた事から、この名前をいただいたそうです。

　啼鵬先生は、1973年東京生まれ（と、多くのプロフィールではなっていますが…

小学生以前に同じ地元の茨城県土浦市に越してきました（って言っていいのか…の前に

周知の事実？(笑)）。の、作曲・編曲家です。

　中学を卒業したのち、芸大付属音楽高等学校の作曲科に入り、そのまま

芸大の作曲科に進みました。

　自分は、先生がこの大学時代にバイオリンの先生から紹介していただき、

この頃から、色々と音楽の手ほどきを受けました。

（現在も色々と公私共にお世話になっていますが…もうかれこれ10年以上経つんですねぇ…
というか、出会った当時の先生の歳を越えてしまいました…。先生は当時まだ19歳とかでしたねぇ…）

　作曲科出身なので、もちろん本業は作曲…というコトになりますが、この方

の場合、単なるクラシックの作曲家…というワクにははまらない方です。

　実に多くの楽器を弾きこなし、特にバンドネオンという楽器では、音楽界で、

一目置かれる演奏家でもあります。

　また、そのバンドネオンという楽器からも分かるように、タンゴにも多く精通しており、

タンゴ関係の楽譜の出版や編曲も多く手がけています。

　その他、須川展也氏のCDの編曲＆RECに参加した辺りから、積極的にSAX関係

の編曲も手がけたり、最近は葉加瀬太郎さん関係でのアレンジ・演奏共演他、TV出演、

TV曲のアレンジ・作曲…他書ききれないくらい活躍なさってます。

（※これを書いたのが数年前だったので、主にこの辺りを直さなくちゃ…という事で2006年改定。
多分これからも、もっと書き換えが必要なくらい活躍なさる方なので、詳細は本人HPで(笑)
http://members3.jcom.home.ne.jp/3113924401/takumi-studio/）

　その他にも、オーケストラやブラスバンドの作曲／編曲や、自身のバンドである

なおてい（なおとくんとていほうくん）というバンドや、その他色々な在籍しているグループ

在籍していないグループ問わず、様々なジャンルのどんな編成のものでも、

得手不得手なく、幅広く手がけています。

　そして、ライブ等では、バンドネオン以外の楽器も多く使用しています。

ピアノ・クラリネット・シンセサイザー・サックス・マンドリン…etc.

とにかく、出来ない楽器は何？っていう位、どんな楽器も弾きこなしてしまう方です。

　その演奏も、クラシックのお堅いものから、ジャズのアドリブ、情熱的なタンゴの

リズム、歪み系まで、何でもござれです。

　まさに、マルチミュージシャン…という言葉がピタリとはまる方です。

啼鵬先生との出会い　編

　前項でもちょっと書きましたが、この啼鵬先生についたのは、

先生が大学生の時、自分は中学生の時でした。

　自分が中学生の時、音楽科の高校に進学しようと考えたのですが、

親もまさか高校から音楽専門の科へ行くとは思っていなかった

ようなので、バイオリンは、まだ、ある程度頑張ればまだ大丈夫そうだったのですが…

実際音楽高校に入学するために必要なその他の能力（ソルフェージュ（聴音・新曲視唱）・

音楽理論・ピアノ等。）は、全然身についていませんでした…。

　その点を心配した、当時のバイオリンの先生が「家も近くだし、能力もとてもある人

なので、この先生に習ったらいいよ…」と、紹介してくれたのが、この啼鵬先生でした。

　早速電話をし、次の週から習いに出かけました。

そしてお宅に伺うと（当時はまだ先生は実家でした…）レッスン室には当時の自分には

見慣れてない楽器がごろごろと…。

　ま、ピアノ…は分かる…。クラリネット…バイオリン…etc...　黒いハコ？（バンドネオンでした）

真鍮製じゃないSAX？？（デジタルホーン（ウィンドシンセ）でした）その他もろもろ、

楽器博物館状態。（今はもっと増えてますね(笑)）

　しかも、レッスンをはじめ、「じゃ、まず曲弾く？」って言われたので、「はい」と返事を

し…バイオリンを弾こうと思ったら…「伴奏譜ある？」と…

いきなり伴奏譜を開くとぜんぜん読譜もせずに、「じゃ、合わせようか！」

！！

いきなり結構難しい伴奏だったのに、一度も合わせたことのない自分に合わせて

伴奏を弾いてくれました。

びっくりしましたが、（ま…まぁ、作曲の人はピアノ上手いって良くいうし…初見とかも

きっと強いんだ、うん。）と平静を装いつつ感心して見ていたら…

「バイオリン貸してもらえる？」と言われたので、どうするのかなぁ…と思いつつも

バイオリンを手渡すと…

ここのフレーズはね…といきなりスラスラとバイオリンを弾き始めました　(^^;

！！！

バイオリンもこんなに弾ける！？　ピアノもあんだけ弾けるのに！？…

と思いました…。

（当時は知らず、後から知りましたが、バイオリン族全て弾いちゃいます。。1人弦合奏（多重録音）もお手の物。
1人オーケストラもまんざらウソじゃないかも…）

そして、レッスンが終わって、気になっていた黒いハコ（バンドネオン）のコトを

聞いたら、この楽器はねぇ…

と、弾き始め…。

その楽器博物館にある楽器を全部弾いてしまうのでした…。

世の中にはすごい人が居るもんだなぁ…となんだかキツネにつままれたような

気分になりながらも関心して、その日はレッスンを終えました…。

そして、また次の週・その次の週…とレッスンをしてもらううちに、

楽器を色々弾ける能力だけじゃない、先生の色々な面が見えてきました。

まず思ったのが、普通のバイオリンの先生と違う切り口で教えてくれるのが

印象的でした。今まで習った多くのバイオリンの先生は、弓の持ち方が…

とか、音程が…とか、この指使いはこっちのほうが…と言うような技術的なことが

主でした。

（もちろん、こういう教え方が良くない…って言っているわけじゃありません。

基本ですし、「バイオリンを弾く」ということに関して言えば、やはりこういった教え方

が普通なんだと思います。）

でも、先生は、もちろん音程や指使い等のコトも言うのですが、

「う～ん、この曲はバッハだよね。この時代のことは勉強したかな？

この頃の時代のトリルは、後の時代のものとは少し意味合いが

違ってくるんだよ。この頃はね…etc..（と時代背景を教えてくれ…）

だから、より意識して、大事に弾かなくてはいけないんだよ。」

とか、「う～ん…。ここは展開部だね。（…等と言いながらピアノの前に座って

ピアノを弾き…）ここの小節のこの和音で、その展開部が始まるきっかけに

なってるね。展開部っていうのはソナタ形式の曲のクライマックスになる部分

だから、ここはそれを意識して…」　等と。

なんかとても〝音楽〟を教わっているー…という気分になりました。

もともと理論的な事が好きなのもあったし、何より言い方がすごく説得力が

あって、かっこよかったんです！

しかも、当時は作曲の知識なんてほとんどなかったのでどうしてその和音を

弾くと、今までと違う展開に持っていけるのか…とか全く分からず、

何でも知りたがる、好奇心旺盛でやりたがりの自分は、レッスン中にも関わらず、

「え？先生、どうしてその和音を出すとこういう展開に持っていけるんですか？」

とか、ちょくちょく聞いていました（笑）

先生も嫌がらずすぐにその場で、

「この和音は属七系の和音で、こういった種類の和音に行きたがる性質があってね…」

と丁寧に教えてくれました。そしてさらに

「う～ん、ココはこういう展開でもカッコイイよね。他にJAZZっぽくしてみたりして♪」

とか、遊び心を入れながらパラパラとアドリブで曲を作ってみたり、弾いたりしてくれるのを

見て、作曲できるの（音楽理論詳しいの）ってかっこええ～。

と当時中学生だった自分にはなんだか知らない不思議で、カッコイイ世界に、

すっかりと心酔してしまったのでした。

で、作曲に限らず音楽のことならジャンルも問わず、CMなんかで聴いた曲や

ちょっと気になったものでも聞けば、クラシックからJAZZ、楽器の事、音楽機材、

ミュージシャンについて…それに人物像からその歴史的背景まで、細かに

すごく詳しく、しかも楽しく教えてくれ、何でも辞典のように答えてくれる先生

の造詣の深さと、その人間性にすっかり憧れてしまい、無事高校に入学してからも、

通いつづけたのでした。

そういったいきさつの中で、中学生頃までは音楽といえばクラシック！というかんじだった

のですが、先生自身ジャンルにこだわらずに音楽を楽しむ人で、クラシック以外

にも色々とおすすめの曲を教えてくれたりして、フュージョンとかロックとかJAZZも

聞くようになりました。

そんな中で、作曲を教わりたい！と先生に言うと、当時JAZZやロックにも

すごく興味が向いていたということもあって、

「クラシックの和声とかではじめるのもいいけど、色々なジャンルの音楽に

展開できるし、便利で入りやすいと思うから、別にクラシックの曲だけ作りたい…

とかいうのでなければ、コードの勉強からしてみたら？」

といわれ、コード進行法を主とした作曲法から入りました…。

高校・大学…と授業やプライベートで和声の勉強もしたりしましたが、

今でもどっちかというと、コードを使って曲を書いたりすることが多いです…。

で、作った曲を気軽に聞くのに、シーケンサーとかあると便利だよ。

とかも言われ、そっちの世界にもどんどんとはまり…

PCをやり始め、シンセの世界にはまってゆき…

というかんじで…クラシックのバイオリン以外の自分のステータスの始まりは

全部この先生から…と言っても過言じゃないくらい影響されました。

シンセも…シーケンサーも作曲も…。音楽以外の部分でも、先生はその当時から自作で

PCを作ったりしていた位、コンピューターもやっていたので…その影響でPCもやりはじめ

ました…。

本当にこの当時にこの先生に出会えたことは幸運でした。

向上心の強さと、幅広い世界を持っているこの先生を今も

すごく尊敬しています。

啼鵬先生が編曲した楽譜とか、編曲を手がけたCDとか、自分の演奏している

CDとか…結構あるので、みなさんももしこれで興味を持たれたりしたら、

良かったら、啼鵬先生の楽譜やCDを聞いたり見たりしてみてくださいね。

音にもその広い世界がかんじられる、いい音楽ばかりですので。