服装について

 よく、化粧や特殊な服装をしているバンドを見ると、音を聴かないで非難する人間がいるが、それは間違いではなかろうか。確かに、見た目で引かせるような人もいるし、それでは問題だと私も思う。しかし、だからといって、その彼らのスタイルを非難するのならまだしも、たいして聴いたことのない音楽性まで非難してしまうのはどうだろうか。それと、化粧をしたら必ずヴィジュアル系バンドというのは間違いであり、なんでもヴィジュアル系だと思い込んで、そこだけで非難するのは間違いである。

 ノヴェラというバンドをご存知だろうか。日本のプログレッシブ・ハードロックの父と呼ばれているバンドで、彼らこそヴィジュアル・バンドの元祖的存在(さかのぼれば、ノヴェラが影響を受けたバンドとうのも存在しているが、メジャーデビューはしていない)であるといえる。しかし、そんな彼らのサウンドは、現在のヴィジュアル・バンドとは到底かけ離れたものであるといえよう。まず、プログレッシブロックという当時時代遅れとされていた音楽を追求し、さらに化粧をすることで、その両方の要因から、古いとかケバいとか言われて音そのものを聴いてもらえず音楽関係者からは非難されてしまった。しかし、ふたをあけてみれば、ファーストアルバムは売れたし、ファーストライブも満員状態で、絶大な人気を持つバンドと化していった。そして、ノヴェラこそが後に築きあげられた関西ハードロックシーンの火付け役になったバンドなのだ。

 80年代半ばに活躍したインディーズ・バンドに、アウターリミッツというバンドが存在している。彼らの写真を初めて見たとき、このドギツイメイクはどんなもんなのだろうかと正直あっけにとられたものだが、イタリアンロックから影響されたそのサウンドは、斬新であったと思うし、彼らの2ndアルバムは、日本のロック史上屈指の名盤だと私は思う。そして彼らは、現在イタリアなどのヨーロッパ諸国で再評価され、フランスのムゼアレーベルからCDが再販されている。

 よく、伝承歌劇団の対バンのバンドさんを目的で来ているお客さんの中に、伝承歌劇団が登場したとき、その服装を見て勘違いをし、語り部の存在感に圧倒されてその音楽を聴かずに、突然笑い出したり、見なかったことにしているお客さんがいるが、これではもったいない。それに、伝承歌劇団のライブが目的で見にきているお客だっているのだし、そこで騒ぎ出すのは失礼極まりないのだ。無論、その程度の魅力しか出し切れていない伝承歌劇団に問題があるといわれればそれまでなのだが、そのようなお客さんに限って、もともと態度が悪く、そして失礼ながら言わせていただくが、個を持ってないどうでもいい音楽を聴きにきているように思われる。その目当てのバンドのときも、音楽を聴いているような態度を見せていない人もいるのだから恐ろしい。無論、カッコイイ誰かを目当てにくることを悪いとは言わないが、それは純粋に音楽が好きな人ではないし、そのような人が他のバンドにまで悪影響を与えることは簡便願いたいものである。そのようなお客さんが、お目当てのバンドの人に傍目から見ても迷惑をかけている姿をよく目にするが、そういう行為を見かけると心底ゾッとするものである。

 むろんそういうお客さんだけではなく、「今のバンド見た?なんだかわかんないけど、すごかったよ」と言っているお客さんもたびたび見かけるのだ。私が言いたいことは、まずそのバンドを評価するときは、初見だけで判断せず、音楽や演奏を聴いてから判断してほしいということだ。これは、決して伝承歌劇団の格好が悪いと言っているのではない。むしろ、伝承歌劇団のライブ衣装は必要不可欠なものなのだ。これは、特別な衣装を身に着けて演奏していることへのリスクの問題について語っているだけなのだ。ただ、まず真剣にその音楽を聴いて、批判するならそれからにしていただきたいということを言いたかったのだ。

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