真っ青な空に引かれた一筋の線。
高く、広いそこをカンバスがわりにいたずらに書き殴る。


まぶしいくらいの日差しなんてもう忘れかけてしまっていた。


巨大に肥大していくバンド。
キャラクターが先行した挙げ句アイドル視された自分。
ふつうでいたいのにそれを世間は許さない。
いつしか帽子とサングラスなしでは町を容易に歩けなくなっていた。
もうそんな生活にはほとほと疲れた。


久しぶりに解放され、見上げた空はとても深い青色でまぶしかった。
異国の空はこんなにも青くて遠い。
カラッとした気候と人々の陽気さ、ラテンのリズム。
移民の歴史を持つこの国は自由だ。
東洋の小さな島国にはないこの性質が僕を高ぶらせ、踊らせる。


歌うことはすごく気持ちが良かった。
伝統に縛られない、自由さが嬉しかった。
初めのうちはそれが楽しくって仕方がなかった。
この国では誰もが僕を特別視なんかしないし、一般人でいられた。
気楽に音楽と向き合える環境が特別だった。


なのにどうだろう。こんなにも生まれた国が恋しくなる。
狭く、偏見に満ちたあの国に生まれ落ちたのだということを痛いくらい実感する。
僕は黄色人種であって絶対に白人や黒人にはなり得ないのだ。
どこまでも続く空、同じ空の下で今、君は何をしてる?何を考えてる?


帰国したら空を見上げよう。
偽るのにはもう疲れたからこの目で真実を見よう。
東京の空だって言うほど汚くない。きれいな青を携えているはずだ。


眠らぬ街の喧噪と夜空を。穏やかな真昼のあたたかさと優しい空の色を。


全てを剥ぎ取ってこの身一つだけで歩いてみよう。


いつまでもフィルター越しの世界にいてはつまらないだけだ。