オトマール・シェック《夏の夜》



  OTHMAR SCHECK : SOMMERNACHT OP.58 FUER STREICHORCHESTER
               Pastorales Intermezzo
  J.Goritzki / Deutsche Kammerakademie  Rec. Jun. &Nov. 1984
  Claves : CD50-8502


   DELIUSに負けず劣らずマイナーなスイスの作曲家、オトマール・シェック(1886-1957)。 歌曲がそこそこ知られているようですが、生憎私は聞いた事がありません。 プロイセン芸術音楽院でブゾーニに師事したときには、その傍らにクルト・ヴァイルがいたそうですが、シェック自身は(DELIUSより二周りほど若いのに)それほどアタラシイ音楽をやっていたわけではないようです。
  さて表題の《夏の夜》ですが、Pastorales Intermezzoと名付けられた弦楽合奏曲です。 表題はゴトフリート・ケラーの詩から採られており、シェック自身がこの詩にインスピレーションを得て作曲したそうです。 表題性は必ずしも強くはないと思いますが、例えばDELIUSなどよりずっと人間臭い夏の夜です。 DELIUSは同じくケラーから素材をとって《村のロメオとジュリエット》をオペラ化し、これを彼の代表作の一つとして仕上げたのですが、そういう点では兄弟作品というコトになるのでしょうか。
  曲その物は弦楽合奏とは思えないほど表情豊かな作品で、かなり知的な対位法の処理もなされているようですが、とにかく繊細に組み立てられています。 DELIUSやイギリス近代の作品とはまた性質の異なる叙情をもたらしたケラーの詩とスイスの夏の夜は、なかなか魅力的です。


Sommernacht 夏の夜

Es walt das Korn weit in die Runde
Und wie ein Meer dehnt es sich aus;
Doch liegt auf seinem stillen Grunde
Nicht Seegewuerm noch andrer Graus;
Da traeumen Blumen nur von Kraenzen
Und trinken der Gestirne Schein,
O goldnes Meer,dein friedlich Glaenzen
Saught meine Seele gierig ein!

In meiner Heimat gruenen Talen,
Da herrscht ein alter schoener Brauch:
Wann hell die Sommersterne strahlen,
Der Gluehwurn schimmer durch den Strauch,
Dann geht ein Fluestern und ein Winken,
Das sich dem Aehrenfelde naht,
Da geht ein naechtlich Silberblinken
Von Sicheln durch die goldne Saat.

Da sint die Bursche jung und wacker,
Die sammeln sich im Feld zuhauf
Und suchen den gereiften Acker
Der Witwe oder Waise auf,
Die keines Vaters,keiner Brueder
Und keines Knechtes Huelfe weiss -
Ihr schneiden sie den Segen nieder,
Die reinste Lust ziert ihren Fleiss.

Schon sind die Garben festgebunden
Und rasch in einen Ring gebracht;
Wie lieblich flohn die kurzen Stunden,
Es war ein Spiel in kuehler Nacht!
Nun wird geschwaermt und hell gesungen
Im Garbenkreis, bis Morgenluft
Die nimmeermueden braunen Jungen
Zur eignen schweren Arbeit ruft.

穀物は遠くまで一面に波立ち
そして海のように広がる
けれどもその静かな土地には
虫も他の恐れるべきなにものもいない
そこで花は花輪だけを夢見
星の光を吸収する
おお、金色の海よ、お前の平和な響きを
私の魂は貪欲に吸い込む!

私の故郷の緑の谷では
古き良きしきたりが盛んだ
夏の星が明るく輝き
蛍がやぶでちらちら光る時
穂の実った畑に近づいて来る
ささやきと合い図がある
刈り鎌が夜に銀色に光って
金色の畑を通る

それは若い感心な若者たちで
畑に共に集まって
未亡人か親をなくした女の
実った畑を探す
彼女には父親の、兄弟の
そして作男の手伝いもない
彼女のために彼らは穂を借り倒し
最も純粋な喜びが彼らの勤勉さを飾る

もう穀物の束が堅く縛られ
すぐ運ばれて円形に積まれる
短い何時間かは何と快く過ぎたのだろう
それは涼しい夜の活動だった!
今穀物の輪に群がって
明るく歌う、朝風が
疲れを知らない日焼けした若者たちを
自分の重い労働に呼びもどすまで

Gottfried Kellers

〔訳:西川留美子 KICC7028より〕


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