映像を伴う作品

ここではDELIUSに関連した映像作品を紹介します




K.Russell ≪SONG OF SUMMER≫

  E.Fenbyの"DELIUS AS I KNEW HIM"に基づいた、DELIUSの晩年を描いた英・BBCのためのドラマです。 DELIUSの美しく繊細な音楽に惹かれてアシスタントを志願したFenbyが、その音楽から受けた印象とは全く異なるテンペラメントの持ち主である老作曲家にとまどい、そして影響され、理解してゆく、その過程そのものがDELIANの典型と言えるのではないでしょうか? DELIUSの音楽がもっている親しみ易い旋律と和声の美しさ、その影にしっかりと根付いている彼の頑固なまでの個性、その性格に手っ取り早く近づくにはこの映像作品は外せません。 「奇才」と称されるK.Russellの作品の中では猟奇的な趣味が最も薄いものの一つでしょうが、K.Russellは存外、DELIUSの中に、自分と同じ臭いの諧謔性を嗅ぎ取っていたのではないでしょうか? 単なる伝記映画ではなく、Fenbyと、そしてK.RussellによるDELIUS理解が全編に貫かれているため、何度見ても見飽きるということがありません。 K.Russell自身もその出来を気に入っているという逸話が≪12インチのギャラリー≫で紹介されていたことがありますが、なるほどと思わせるものがあります。
  かつて日本でもNHKで放送されたことがあるそうですが、私の手元にあるのは80年代末(?)にVHSテープとしてポニーキャニオンから発売されたものです。 キャプチャーするのに迷うほど良いシーンが多く、無駄なコマなど全く見当たらず、あっという間の充実の72分です。 本当は全編をUPしたいくらいなのですが、これ以上重くなるのもなんでしょうから、この辺で。

英国音楽だって?英国音楽と言ったのか?  それに対応してFシャープとA、第1バイオリンだ 自然は素晴らしい エルガーはオラトリオで人生を無駄にした

「ソング・オブ・サマー」にしよう 君は私に寿命を与えてくれた



J.Cardiff ≪ディーリアス管弦楽名曲集 春初めてのカッコウを聞いて≫

  撮り下ろした映像に既存の音源をかぶせただけの代物ですが、これがなかなかはまっています。 イギリスの四季折々の映像とBarbirolli節あふれる演奏とが実によく合っています。 Cardiff氏のカメラワークとDELIUSの世界を結び付けるためには、Beechamではなく、Barbirolliの音楽が必要だったことが痛いほどよく解ります。 かつてDELIUSをイギリスの作曲家に「した」のはBeechamとBarbirolliだという意見をよんだことがありますが、まぁ、そうなんだろうなぁと、この映像付きでBarbirolliを聞くと思います。 Barbirolliの演奏は、DELIUSへのアプローチとしては一方の極とも言えるほど情緒あふれたものですが、イギリス(の特に田舎)大好き人間には結構堪らないのではないでしょうか(はたして DELIUSがそうだったかは、存じませんが)。 私も初めてこの映像に触れた時は、結構影響を受け、しばらくBeechamから遠ざかってBarbirolliばかり聴いていた時期がありました。
  私の手元にあるのは東芝EMIから発売されたVHS規格のビデオテープ(TOVW-3621)とDVD(HDVD-7008)。 初出時にはLDでも発売されたと記憶しています。 現行盤DVDは同監督による《四季》(もちろん赤毛の司祭さまの)とカップリングされてしまっているので、B面扱いでジャケットも《四季》のものが使われています。



P.Weigel : A Village Romeo and Juriet

   DELIUSの代表的オペラの映像化です。 もっとも舞台をそのまま持ってきたのではなく、マッケラスの既出音源(DECCA / argo)に、あとから映像を付け加えたものです。 が、事情を知らなければ気づかないくらい自然に出来上がっています。 残念ながら原作オペラの実演を見たことが無いので、比較することは出来ないのですが、この映像はどちらかというとケラーの原作をかなり意識しているようで(もっともいちゃいちゃするシーンが多いのはDELIUSにあわせているようですが)、映像としては、ケラーの原風景や、DELIUSの原風景がどこなのか、その辺はかなりぼかしてあり、ヨーロッパの一般的な農村社会としての普遍性のほうに力点が置かれているように思えました。 そして、そんな舞台では表現しきれない「風景」の中での「人物」を、耽美的に描き出しています。
  日本語字幕付きの国内盤がVHSとLDとで出ていましたが廃盤。 現在は輸入盤DVD(DECCA : 074 177-9 )が入手できます。 ちなみに左にあげてあるジャケットはLD版のジャケットに基づきながら、上記ののいずれのフォーマットでも無かったりします(笑)。



Sir John Barbirolli / Boston Symphony Orchestra
The Walk to the Paradise Garden

 ( Sanders Theatre, Harvard University, February 3, 1959 )

  1959年にバルビローリが始めてボストン響に客演した際の3日目映像です。 プログラム前半にDELIUSの《楽園への道》がバルビローリ編曲の《エリザベス朝組曲》とウォルトンの《パルティータ》に挟まれています。 オケはまだDELIUSに途惑っているのか、かなりナイーヴな演奏から始まりますが、キビキビしていた1曲目とは打って変わって実にメランコリックなバルビローリの棒に乗ってどんどんらしくなってゆきます。 終曲を迎え、バルビローリが指揮棒を譜面台に置くまでの静寂は、何物にも代えがたいものがあります。 放映時の各曲の簡単な解説も付されているほか、この手のDVDとしてはスリーヴ・ノーツがそれなりに読ませるのも○。

[ VAI : DVD4304 ]



Sir Thomas Beecham / Cicago Symphony Orchestra
On The River from "the Flolida Suite"
( March 20, 1960 )

  晩年のビーチャムがシカゴ響に客演した際の映像です。 「カラー」というより「天然色」といった趣ですが、なにはともあれ貴重。 最初に飛びついてしまったのはWARNERのVHSテープ(8573-84096-3 : 左)ですが、まぁイギリスから取り寄せただけあってPAL仕様・・・。 KULTURのNTSC仕様版(2239 : 右)は画質が余りにも不安定・・・。 とりあえずDVD化を心待ちにしています。



Sir Andrew Davis / BBC Symphony Orchestra
The Walk to the Paradise Girden
( September 2000 )

  2000年のPROMSのラースト・ナイトの映像DVDです。 年毎のプログラムと、例年通りの定番のラストを繋ぐ間奏曲に選ばれたのがDELIUSの《楽園への道》でした。 あの広大なロイヤル・アルバート・ホールを埋め尽くした観衆が静寂をもってDELIUSを受け入れている様、ちょっと感動です。 現在ではいささか様変わりしてしまったPROMSラースト・ナイトの、一時代の記録としても感慨抜きには見られません。

[ BBC / OPUS ARTE : OA0851D ]



Sir Simon Rattle / Berlin Philharmonic Orchestra
Brigg Fair - English Rhapsody
( 17 Jun. 2007 )

  2007年のベルリン・フィル恒例のワルトビューネ野外コンサートの映像です。 当日はシャブリエに始まりdeliusを挟んでラフマニノフやドヴォルザークなど、いかにもな「ラプソディ」を集めたプログラムでしたが、deliusの《ブリッグの定期市》は相当異色の「ラプソディ」です。 でもまぁ、夕日がさすワルトビューネの野外ホールを埋めた満座の聴衆の中に響くdelius、感慨なしには聴くことができません。 ちなみに米・ENCORE社製のこのDVD、裏が青かったり、テロップがなぜか日本語だったり、画面の右上にBS2と入ってたりするように見えるのは・・・日本向けの特別仕様なのかな?(笑) 


[ ENCORE : DVD3248 ]