[ top ]

中学二十二年生

今日も昨日と変わらぬ明日が来ると
諦めにも似て思い込んでた
三十までは生きてはいないだろう
などとノートの端に書いてた

二億の弟妹たちを押し退け受精し生まれてきた
そんな勝者たる私が淘汰されてくこの世界だ
ならば三千世界で架空のイヌ、ネコ、ヒトを屠り尽くし
溜めた血で絵を描き詞を詠み楽譜を書き呪詛を世に放つのだ

噤んだ言葉を蟲毒で煮詰めて
紡ぎ上げたそれは私だけの呪物
今日も明日もこの非現実の王国で
咲かない花に水を与える

三十までに死んでおけばよかった
と今は液晶画面に書いてる

みんな異世界転生し私だけが取り残された
世間的には逆みたいでどうやら私が異世界だ
永遠に埋まらない地図、進めない物語、欠片だけが積もり
終末の刻は迫り魔法は破れて呪詛は此の身に返る

やりたいことだけしてきたはずなのに
胸を抉るこのいたたまれなさは何だ
明日もたぶん慈雨は降らないだろう
渇いた咽で息をしている

wrote 2023.08.24

[ top ]