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出口の無い子宮

キミが来てくれるから  私は出て行くことは無い
自ら閉ざした部屋  それは出口の無い子宮で
共に戦おう、なんて。何と?何の為に?
引きずり込んだ
戦いの行き着く先に何があるかも知らずに

狂ってるのは君のせいで
大切な何か裏切ってしまった
簡単に「愛してる」なんて
私にはもう言えない

未だ生まれぬ人が  死のうと関係などなくて
自分の心だけを  守るのでせいいっぱいだった
行き場の無い魂の澱みが感染しても
君の声だけが
私を現実に繋ぐたった一つの手掛かり

狂ってるのはキミのほうで
私はもう少しだけだいじょうぶ
他に何もできないから
壊れるまで傍にいるよ

光射し込む部屋に静かに裁きは訪れ
私の病の
全て吸い取った君は遠くで煙になってく

きっと
狂ってたのさ二人とも
私はまだ生きているから
他に何もできないけど
壊れるまで覚えてるよ

Monologue by a smug girl

I wouldn't leave this room
because you always come here for me.
I shut the door of this room like the womb,
so it has no exit.
"We have to contend with it together," You said.
But what is "IT"? And why?
Maybe you didn't know what there is at the end of contending,
so you could say such a thing.

I was deprived of my sanity by you,
and have betrayed something important.
There is the word I can't say forever―
"I love you."

I had no relationship with a dear,
because he or she didn't know outside the womb at all.
The dear was killed before long,
but the thing I could was only protecting my mind.
I was sinking in a black pool,
when I heard your voice.
It was the only help leading me to the reality.

You were deprived of your sanity by yourself.
I can't do nothing for you,
but I'll be here with you until you can't do nothing.

A judge came silently in this room where light flooded.
You, who cured me of my illness,
were changed into a smoke and went far away.

Maybe...
we were deprived of our sanity by each other.
I can't do nothing for you,
but I'll remember you as long as possible,
because―
I still live.

英訳:花夜 2010.09.02

動画内テキスト

クラスの人間が皆バカに見えた。
でも自分もその一人にすぎないことも、嫌というほどわかっていた。
容姿・標準。頭・標準。家族は穏やかだった。
大抵のモノは手に入った。
だけど本当に望んだものは手に入らなかった。
憧れていた清楚な娘はAV出演が発覚しクラスからいなくなった。
自分に思いを寄せてくれた人は、自分は(その時は)好みではなかった。
だから、滅茶苦茶に破壊した。
どんな要求でも拒まなかった。
もう、試してみたいことも無くなった。
やがて、その人は本当に壊れてしまった。
それでも、罪悪感すら無かった。
ただただ、代替感と、空虚感しか無かった。
そんなことを繰り返した。
どこにでもある話。
その平凡を嫌悪し、ある日、家を出た。
やがて、家には帰れなくなった。
生活の糧は無く、自分を売ったり、他人を売ったりしていた。
自分が壊した人に加えたことが、どれだけ残虐であったか、身を以って、精神を以って、初めて思い知った。
金回りは良かった。
代償は、履歴書が汚れたことと、セックスに対する幻想が失われ、もう一生うんざりだと思ったこと。
少しでもまともな仕事をしようと、昼間のアルバイトを始めた。

そこに、彼女はやってきた。バイト募集で。
本人は高校生だと言い張った。
一目で嘘とわかった。
そのままお持ち帰りした。
そのまま、部屋に住み着いた。
自分は家に帰るように諭した。
だけど無駄だった。彼女は頑なだった。
自分は、かつてどうやって人を壊してきたか、身を以って教えてやると脅した。
しかし、彼女は怯まなかった。
「それは、壊れた人の思いが弱かっただけのことだから。」
ぶっ壊れていたのは自分だった。
自分に愛されるに値するだけの価値があるとは到底思えなかった。俺のどこが?
でも、そんなの理屈じゃない領域なんだよ。
自分は彼女に壊され、そして再構築されるんだ。
彼女は本当に痛がった。
なのに、何故、自分が涙を流しているんだろう?
何故、自分の快楽のために、最後まで続けることができなかったんだろう?
何故、終ったフリなどしたんだろう?
自分は、人間に戻れるかもしれない。
それからは、陳腐なラブコメも赤面するような日々だった。
給食の残りで養われたりした。
修学旅行先から、イニシャルを彫った楽器型のキーホルダーのお土産など買ってきてくれた。
日曜日、彼女の母校に忍び込んだ。
「ついこのあいだまで私、ここにいたんだね」
無人の教室の壁には拙いお習字が並んで貼られていた。
「この子の飼育係だったんだ」
その前で、押し倒したり、押し倒されたりした。
一週間に20回はした。
昔は、こういうことしたいと思っってたんだな、と、漠然と思いながら。
一度パンドラが開くと、あとは早かった。
際限無く貪欲になっていくだけだった。
自分はフラッシュバックのような、遅れてきた罪悪感めいたものを抱えていった。
殆ど毎日、夕方、彼女がやってくるのを待つ生活。
すっかり携帯嫌いになっていた自分は連絡手段を何一つ持たなかった。
「また来るね」
その言葉以外に、何の保障も無い、極めて細い糸のような毎日。
ずっとそんなものが続くわけもないのに。
出口の無い子宮なんてないのに。

そして、ある日を境に、前触れ無く彼女が消えた。

十日経った。
一月経った。
自分は、「ああ、やっぱりか。」と思った。
そんな頃、ある人と知り合った。
顔から体から、いつも痣のある人だった。
とても礼儀の正しい、しかし、にこりとも笑わない娘を連れた人。
やがて、その人が部屋の新たな住人となった。
枯れたような交わりだった。
ある日、些細なことで口論となった。
その時、初めて、娘が口を開いた。
壊れた表情で。パニックを起こしながら。
「おねがいします わたしがはだかになりますから どうかママをぶたないで!」
母は病院へ。
娘は施設へ。
何もかもどうでもよくなってきた。
自分は、「父親」を殺すことに決めた。

決行予定日。
"彼女"が部屋に駆け込んできた。
三ヶ月。
「来たよ!」
何が来たというのか。
飛び込んできた"彼女"を抱擁した時、全て、瞬時に理解した。
その肉の感触は、堕胎した女のそれだった。
自分が解ったことは、すぐに伝わった。
「どうしてわかっちゃったのおおおおおおおおおお?」
"彼女"は慟哭した。
そのまま、壊れてしまった。
自分は、人の「思いの丈」を甘く見ていた!
自分に告げたら、どんな、出来もしない結論を導き出すか、"彼女"は承知していた。
だから、自分で決めた。
自分だけが負おうとした。
三ヶ月。
その間、自分は何をしていた?

「ごめんね。ごめんね。」
刃物で腕から乳房から切りまくる"彼女"を、自分はただ力ずくで押し倒し、刃物を振るえなくするしか出来なかった。
それからは、もう、終りが見えた日々だった。
携帯を二つ買った。一つは、"彼女"に持たせた。
鳴ることなど無いと承知しつつ。
そして今度こそ本当に、"彼女"は消えた。

自分は今度は待たなかった。
初めて"彼女"の家を、躊躇無く訪れた。
荒れた庭。
動かない錆びた自動車。
鍵のかかっていない玄関。
饐えた匂い。
アルコールの空瓶が散乱したキッチン。
壁には穴。
叩き割られた家族写真。
それは数年前から、そんな状態であった。
二階の奥、"彼女"の部屋。
その中にいた、抜け殻のような何かは、ストレッチャーに乗せられ、サイレンの音とともに遠ざかっていった。
生きてはいた。
ただ、それだけ。

それは夢だったかもしれない。
ある夜、携帯が初めて鳴った。
幸せそうな声だった。
眠たげな声だった。
「今、○○にいるの」
穏やかな声だった。
何を飲んだかは知らない。ただ、致死量を遥かに超えていた。
次第に呂律が回らなくなる言葉を、最後まで繰り返していた。
やがて、電話からは何も聴こえなくなった。
300km彼方で。
それは俺の台詞じゃなかったのか?
ごめんね。
ありがとう。
ごめんね。
ありがとう。

ごめんね。

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