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[ 屋上の美咲 ]

七階を吹き渡る 春四月 風はまだ冷たい
走馬灯 回ってすぐ消えた

歓声は窓の外 文集に夢綴るヒトたち
あの場所に私はもういない

拳が肘まで入るようになったよと
ハルカは壊れた子宮を晒した
ナツミは白昼生きながら焼かれた
誰もがまたテレビのヤラセだと思った
トモダチ そう呼んだ気がした
みんな遠くへ疾走った

気がつけば足が竦んでいた
この部屋に自分を生き埋めて
諦めて また 諦められた
西陽射す夕刻の 笑い声どこかしら乾いて
もう幾人神隠しになった

アキコは七度苗字が変わった
その度赤子は刻んで流した
花屋を夢見たミユキの花は散り
真冬の公園で爛れた花を売る
私はみんな見ていた
そしてどこまでも澱んだ

いつか私も咲かすだろう
奈落の柘榴は赤い花
美しく咲きはしないだろう
潰れて開いた赤い花
いつか私も咲かすだろう
いつか私も赤い花

誰一人思い出せない
人知れず散った赤い花

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今では選挙の投票以外行くことのない母校。道を一本隔て集合住宅群がある。
最上階のある一室、そこは数ある溜り場の一つで、微笑ましい悪事は全てそこで覚えた。
一際群を抜いて可愛かった、良い匂いのしたその少女は、今は当時の二倍を越えた体重に錆びた自転車の車輪を軋ませながら、不潔な異臭を放つのも気にも留めずボーイズラブノベルを買い漁る日々を送る。
また別の少女はコアなレーベルでの脱糞、食糞映像が流通している。
子供達は去り、建物は老朽化し、高齢化著しい団地群はまだそこにある。
隣の校舎は改修を重ねて往時の面影はほぼ無い。
ただ西側の、改修を待つ閉鎖区画に行けば、まだ彼等の、彼女達の残像が西陽の中に、微かに顕れるのかもしれない。

それらはもう笑ってはいないのだろうけれど。

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