月

かつて人間らと共にあった安寧の時間
変わりなく沈んでいく太陽を見届け
明日の平穏を祷ったあの日が
また変わりなく幕を下ろし
そして訪れた億劫の長夜

無量無辺の砂地を駈ける
肩を並べて、身を寄せて生きる
どこを目指すでもなく
誰も彼も何も欲しない

もう一度あの道を今度こそ越えようと
歩みを止め君はひとり喝破した、気高く強く

常闇が齎す空を満たすことができた
君となら、君の傍でなら

無影無月の不吉なある晩
吹き荒れる雨、荒れ狂う嵐
砂は怒濤の大河となり
飲み込まれ散った最後の群れ

もう二度とあの道へは戻れないことを知って
歩みを止めおれはひとり鳴いた、か弱く細く

待てども待てどもあの日から明けない
諦めきれず君去りし後を追う
毛並みはいよいよ一点の曇りなく黒く
虹彩の飴色は一層深く深く

不安定な呼吸、確かでない感覚
もう歩けない―朧げに頭を擡げた途端
足場もろとも崩れ落ち
遠のく意識に一閃、あの日の咆哮

常闇に紛れた現し世
君なら辿り着ける、君だけが

この道を超えれば
光芒が底冷えの苦界を一変覆し
そして仰ぎ見る有明けの月

CDではまお君の熱い歌と語りが聴けます
絵は大学の先輩との合作です 油彩でナイスな狼を描いてくださいました 加工前

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