サヴァン症候群

天才的な能力を持つサヴァン

 サヴァンと呼ばれる人達をご存知でしょうか。サヴァン症候群とは特定の分野にのみ驚くべき才能を発揮する人達のことを言います。 例えばレスリー・レムケという人物は、14歳のときTVで初めて聞いたチャイコフスキーピアノ協奏曲第1番を、間違うことなく 完璧に弾いてしまいました。彼は、それまでピアノのレッスンを受けたことはありませんでした。彼は目が見えず、脳性マヒと発達障害をわずらってました。
 サヴァン症候群は先天的にしろ後天的にしろ、彼のように脳性マヒをわずらっていたり、目が見えなかったり、精神障害があったりする 人達の中の10人に1人ほどの割合で存在します。精神障害をもちながら特定の分野に才能を発揮する者を「天分のサヴァン」と言います。 レスリーは何千曲もの曲を弾きこなし、即興や作曲も得意です。彼はサヴァン症候群の中でも飛びぬけた才能を発揮しています。そのような者を「鬼才のサヴァン」と呼びます。

驚異的な記憶能力

 サヴァン症候群の人達にほぼ共通して現れる能力があります。それは特定分野での「すさまじいまでの記憶力」です。例えばレスリーは一度聞いた曲を完全に記憶し、完璧に弾きこなします。 さらに、一度覚えた曲は決して忘れないと聞きます。中には7000冊以上もの本を丸暗記していて、アメリカの都市を結ぶ幹線道路の名称や、都市ごとの市外局番、電話会社 等を完全に覚えている歩く百科事典のような人もいます。これは、サヴァン症候群の脳が極めて狭い範囲で強固なネットワークを形成しているためだと思われます。 一般の人間の記憶は広くて浅いがサヴァン症候群の記憶は狭いが異常に深いのです。

消えていく能力

 サヴァン症候群の能力は突然現れることもあるが、突然消えてしまうこともあります。エリーという少女は幼い頃から精神障害をわずらい言葉を話すことができませんでした。 しかし彼女には驚異的な絵の才能がありました。その類まれない才能から彼女は「猫のラファエロ」と呼ばれていました。その後彼女は施設に入り、言葉を覚えることができました。 しかし、言葉を手に入れるのと引き換えるように絵の才能は失われていきました。これを聞いた芸術家は「彼女にとってこんな不幸は無い、なぜ言葉を教えたのか」と嘆いたそうです。 確かにサヴァン症候群の人達の類まれない才能が失われるのは惜しいとは思うのですが、私は才能をもっていることが必ずしも彼らにとって幸せであるとはいえないと思うのです。 エリーにしても絵の才能と引き換えに言葉を手に入れたのです。それにより、多くの人とコミュニケーションが取れるようになったのです。私たちはサヴァン症候群の飛びぬけた能力にばかり とらわれてしまいがちですが、彼らも同じ人間です。それを考えると騒がれることが必ずしもその人にとって幸せとはいえないとは思いませんか?
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