ブラックホール

 ブラックホールはSF映画等で非常に有名な天体です。しかし、ブラックホールがどのようなものかを説明 出来る人はほとんどいないと思います。今回は、ブラックホールとは何か、ということを少しだけお話します。

ブラックホールは見えない

 ブラックホールは「ありとあらゆる物を吸い込み、光さえも脱出できない穴」として認識されていますが、 その正体はとてつもなく質量の大きい天体なのです。質量があまりにも大きいために自分の重力により極限まで 潰れてしまいます。その「極限まで潰れてしまった点」を「特異点」と呼びます。そして、重力があまりにも大きいため 光の速度をもってしてもその特異点からは脱出することはできないのです。
 光が脱出できるぎりぎりの地点を「事象の地平面」といいます。特異点から事象の地平面までを「ブラックホール」と呼び、その距離を「シュワルツシルト半径」と呼びます。 ブラックホールは光が脱出できないので光を反射することができません。光が反射できないということは目で見ることができないということです。 全く見えないため黒い穴があるように「見える」のです

ブラックホールはどのようにしてできるのか

 太陽をはじめとした恒星はその生涯を閉じるときに、爆発を起こします。その時の恒星の質量により爆発の規模は 変わります。「主系列星」というのをご存知でしょうか。主系列星とは星の誕生から終わりまでのシナリオを記したものです。 太陽は主系列星の最後には赤色巨星と呼ばれる大きな赤い星になります。太陽は地球を飲み込む程の大きさになります。 太陽程度の質量の恒星は生涯を閉じるときに周りのガスを撒き散らしながら地球ほどの大きさの「白色矮星」を残します。
 太陽の8倍から20倍程度の質量をもつ恒星はその生涯を閉じるときに重力崩壊を起こし、「新星爆発」と呼ばれる 大爆発を起こします。その時中心に直径10キロメートルほどに圧縮された非常に小さい「中性子星」という天体ができることがあります。 この天体は非常に高速で回転し、高い密度と大きな重力を持ちます。中には強力な電磁波を定期的に発するものもあり、 宇宙人からのメッセージと間違われたこともあります。
 そして、太陽の約30倍以上の天体がその生涯を閉じるときは、想像を絶する大爆発が起こります。それを「超新星爆発」 と呼びます。このときに起こる大規模な重力崩壊により恒星は特異点にまで圧縮してしまうことがあり、これによりブラックホールが 誕生するのです。

ブラックホールに落ちるとどうなるか

 ブラックホールは落ちたら光でも脱出することはできません。もし仮にブラックホールに落ちようとする宇宙船を見ているとすれば、 その時宇宙船はどのように見えるでしょうか。
 以前「光の不思議」では、光速に近づけば近づくほど時間の流れは遅くなると述べましたが、 実は重力が非常に大きくなっても時間の流れは遅くなるのです。仮に宇宙船から1秒ごとに信号が送られているとしたなら、事象の地平面 に近づくにつれその信号は、1分に1回、1時間に1回、1日に1回とどんどん遅くなります。そしてはたから見ている者からは事象の地平面 に近づくにつれ吸い込まれる速度はゆっくりになり、事象の地平面に達すると張り付いたように動きが止まります。吸い込まれる宇宙船での 1秒は外の世界では何年にも何十年にもなりうるのです。
 外の世界では途方もない時間をかけてゆっくりと吸い込まれるように見えるのですが、宇宙船に乗っている人からすればそれはまさに 一瞬の出来事です。宇宙船は何事もなかったかのように事象の地平面を通り抜けます。その時の宇宙船はすさまじい潮汐力により餅のように 伸びているといわれています。そして、重力に逆らうこともできずにまっさかさまに特異点へと落ちていきます。そして、特異点に達したとき 跡形もなく消滅します。
 ブラックホールは私たちの住む銀河系には10数個発見されています。ちなみに銀河系の中心は巨大なブラックホールだといわれています。 まだまだ謎の多い天体です。今回は少し説明が悪かったような気がします。すみません。またブラックホールに関しては取り上げるかもしれません。 その時はもう少し詳しく、そしてわかり易く書きたいと思います。
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