TOPFocus > #7 Ovation Adamas 1597CH

OVATION / ADAMAS SMT 1597CH-MG : Char Signature

1597ch外観

Introduction

最初にこのモデルを見た/聴いたのはBA VS HO 2000年1本勝負のときだったでしょうか。当初,BBSで僕が「音がTAKAMINEそのまんまだ…」と書いていたのを読んで,不快になられた方もいらっしゃるのではないかと思います。ごめんなさい。とはいえ,実際,初めてこのギターの(ラインの)音を聴いた時には,事実そのとおりのことを思いました。まあPAの人の音の作り方とか好みとかもあるから一概には言い切れない(つまり,PAの人が,たとえばTAKAMINEの音をエレアコの音の基準と考えてるとそれっぽい音作りになる)んだけど,アコギの音にはこだわりがあるので,どうもそれが納得できなかった。

そんなギターをなぜ買ったのか??…答えは簡単。安かったんです(爆)。そもそもTAKAMINEとおんなじような音なのに値段がかたや10万しないで手に入り,かたや31万。デザインのカッコよさはあるけど倍以上は…と思って買わなかった。

ところが,幸か不幸か(笑),CharさんがTACOMAのLJシリーズ(ECM38C)を手に入れて以来,これをもって回るようになってしまいます。このギターがまた100本限定だった(笑)。これはCharさんのほかにも吉川忠英氏らが使用したうえに生音がいい(爆)ため,すごいスピードで売れてしまいます。

これがきっかけでかどうかは分からないけれど,ぽつぽつとオヴェイションのほうが中古市場に出てくるようになりました。ある日,格安で出品されているのを発見し,TAKAMINEの中位機種くらいの値段で買いました。これなら納得(笑)。値段が同じならカッコいいほうを買う(爆)。

音がいいならなぜTACOMAを買わなかったのかって?高いから(爆)。冗談です。高くても納得いく音ならば考えてた。ところがこのギターはシダートップだった。シダーという材を表面板に使っている(ふつうのアコギは主にスプルースという材を使っている)のですが,僕は昔からこの材の音がいまいち好きじゃないんですね。

シダーはもともとクラシックギターなどによく使用される材で,どっちかというとフィンガーピッカー向きというか,単音はめちゃくちゃ立つんだけど,ストロークするとバランバランいう感じになっちゃう。今のTACOMAはそのバラバラ感はかなり押さえてあって(このへんはブレイシングという裏に貼る補強板の具合で鳴り方をいろいろ調整できる…逆にいえばこれでそれぞれのブランドの個性が出せる)バランスいいんだけど,やっぱりフィンガー系という感じがする。実際Charさんも主にフィンガー系のDADGADチューニングの曲で使用していますよね。材とか全然こだわっていなさそうで,耳が聞き分けていくって感じなんでしょうね。

こういう経緯で僕はTACOMAには手を出さず,オヴェイションに行くのですが…もうひとつ理由が…

もともとCRAFT-1768Xというモデル(BAHO初期のメインギター:これがまた200本限定)を持っていたのですが,これは大人用(笑)というか,アメリカ人用というか…ボディがでかいんですね。身長175CM以下だとつらいものがある(笑)。もちろん本人と同モデル,というプレミアはありますが,このサイズにもちゃんとした理由があったのです(後述)。とはいえ憧れて買ったには違いない(笑)。買ったものは使う人なので,ライヴでも現役バリバリで使ってはいたのですが,これが思い切り弾くと,次の日右肩痛に…寄る年波に勝てず,ちっちゃいボディを求めた,というわけです。実はここが一番切実だったかもしれない(自爆)。去年の暮れの話でした。

OVATION

さて,オヴェイションについて。このブランドの一番の特徴はボディが木ではないこと。創始者のカマーンという人はもともと航空関係の仕事をしていた人で,その技術を応用してギターを開発します。それがカーボングラスファイバーのボディ材と音響特性を調べて考案されたラウンドバックのボディ。この特徴を始めとして,ネックの作り方(いくつかの材をサンドイッチした構造で絶対ネックが反らないという謳い文句だった),奇抜なサウンドホールデザインなどかなり革新的な展開で市場に切り込みます。

リラコード

70年代,アコギをラインで鳴らすという技術はまだ非常に未熟で,多くのミュージシャンが試行錯誤していました。いわゆるエレアコ的な機能を持ったものは市場には50年代に登場します。代表的なものは,ジョンレノンが使っていたギブソンのJ160E(p-90)やカートコバーンが使っていたマーティンのD-18E(デュアルモンド)とかがありますが,この辺のものは生ギターにそのままエレキ用のピックアップを搭載したものでした。当然エレキっぽい音になるわけです。当時いちばんそれっぽい音ということではやったのはECが000-28につけていたバーカスベリーという貼り付けピエゾ(マイク)です。これは日本でも多くのミュージシャンたちが使用していました。ほかにはドイツのシャドウとかアメリカのフラップとかいうメーカーが有名でした。

1597ブリッジ 1597プリアンプ

オヴェイションはこの中でサドルとピエゾ素子を一体化させ,さらにプリアンプも内蔵してボリュームコントロールできるようにしたエレアコを発売します。シグニチャーモデルも出たグレンキャンベルやハートのナンシーウイルソンたちが使い始めて徐々に人気が出始めます。そして70年代半ば,22個のサウンドホールをもつ最上位機種,アダマスが発表されます。この22個というのが,最初は単なるデザインに見えて,あら?サウンドホールがないの?という感じだったんですが実はこれも音響特性を考えてデザインされたものだそうです。南こうせつ氏にはこのデザインが深海魚に見えたらしい…葉っぱ模様なんですけどね(笑)

アダマスの発表あたりからオヴェイションが徐々に浸透してきます,アルディメオラ,ドゥービーブラザーズ,ポールサイモン,ボンジョヴィ…バンド形体の中での使用を考えた人たちはこぞって採用していました。日本では南こうせつや松山千春などのフォーク系のミュージシャンが使い始めて一気に浸透しました。でも当時は高かった。78年ごろのアダマスの価格は日本円で88万円。売れている人じゃないと買えない。売れたあとしか買えない(笑)。ばんばひろふみ,イルカ,伊勢正三,山本コウタロー,チューリップ,甲斐バンド,オフコース…フォーク/ニューミュージック系ばっかり。生ギターだからあたりまえか(笑)。浜田省吾,尾崎豊,佐野元春も一時使ってましたね。Charさんも80年頃にすでにオヴェイションを手に入れています。でもね,日本ではオヴェイションの素のまんまの音で弾いている人が多かった。PAの人が意識してなかったのかもしれない。オヴェイションはオヴェイションの音として使うべき,というポリシーがあったかどうかは定かでないけれど,はっきりいってあんまりいい音じゃなかった(笑)。おんなじ機材を使ってもエレキ弾きの人たちはコーラスかけたりしていろいろ工夫してましたね。

80年代になると,コレクターズシリーズと銘打って82年ごろから毎年200本限定のイヤーモデルを発表し始めます。80年代というのは生ギターが最も売れなかった時代ですが,オヴェイションだけは別格だったのではないでしょうか。

ところが80年代後半からニールヤングらがマーティンを抱えて再び表舞台に立ち始めます。あとはTAKAMINE。もともと70年代中盤から輸出専門で浸透していたこともあり,アメリカのミュージシャンはTAKAMINEを高く評価している人が多く,ジャクソンブラウン,イーグルス,スティーブンスティルス,ニルスロフグレンらが早くからTAKAMINEを持ってステージに出ていました。マイケルヘッジスもTAKAMINEでしたね。安くてラインの音が生っぽくていい。TAKAMINEのピックアップのシステムは独特(ピエゾのかわりに水晶を使っていると言っていた)でそれが音の違いに出ているのですが,この頃からオヴェイションはTAKAMINEに業務提携を持ちかけていたようで日本製のモデル(ピナクル)が出たりしています。現在,オヴェイション(カマーングループ)がTAKAMINEの海外発売元になっていますから,この関係はそのまま維持されているようですね。

そして90年代のアンプラグドブーム。これで形勢は一気にマーティン/ギブソンよりに引き戻されます。同時に高性能のピックアップが開発され始め,オヴェイション独特の音色を嫌われるようになり…オヴェイション/エレアコ離れが一気に進みます。ただTAKAMINEはその生音っぽい感じと値段が功を奏したのか,引き続き強かった。その後TAKAMINEのノウハウを受け継いだシステムが開発されて以降,両者の音が近づいていきます。特にOPTIMAというシステムになってからはその感じが強いですね。

もちろん完全に同じというわけではなく,それぞれがピックアップのシステムを改良していく過程でノウハウを提供しているという程度なのでしょう。TAKAMINEは生ギターのエアー感を求めてDSP(主にリバーブ系エフェクト)路線を追求し,オヴェイションはそういうエフェクト系には行かず,TAKAMINEの持つ低高音のバランスを求めているよう(初期は中域の強い粘るような音だったのがだんだん低音と高音がしっかり出るようになっている)です。これは両者とも市場のニーズが生音志向ということを意識しているといえるでしょう。

1597CH

さて,ようやく本題に(笑)。そのまえにオヴェイションの機種/グレードについて書いておきましょう。韓国製(セレブリティ),日本製(ピナクル),アメリカ製(レジェンド,エリート,バラディーアなど),そして最上位機種としてアダマスという感じでグレードが分かれています。アダマスの中にもアダマス,アダマスII,アダマスIII,スーパーアダマス…と細かく機種が分かれています。今回の1597CHはこのアダマスの中のSMTシリーズの限定機種ということになります。

先に述べたカーボンファイバー製ボディのオヴェイションですが,アダマスという名前がついたモデルは表面板もカーボン製(実際には間に木をサンドイッチしてあるプライウッド)です。そのせいで一見ざらざら(実際もざらざら)なんですね。これは表面板を薄くすればするほど鳴りがよくなる,しかし木だけだと弦の張力に耐えられなくてトップが浮き上がってしまう,このジレンマを解決するため開発されたものです。

1597ボディ 1597ヘッド

SMTというのは,そのざらざらのを木みたいに滑らかにしてあるもので,一見木です(笑)。たぶんスムーズトップの略かな?ちょっと自信ないですけど…トップの厚みがぎりぎりまで薄く作られています。このシリーズはもともと先に1597(まっすぐなファイバートップ)とW597(網目模様のファイバートップ)というふたつのシリーズが発売されていて,実際Charさんも1597の黒を使用しています。この1597のアレンジヴァージョンが1597CHということになりますね。メインで使っているMG(マンダリングラファイト)カラーが150本,GB(グラファイトバースト)カラーが50本の200本限定(オヴェイションお得意)という企画で,予想通り(?)発売と同時にMGカラーはあっという間に市場から消えていきました。GBは2003年5月現在,今も在庫しているお店があるようですね。

生音はTAKAMINEと同じく硬めです。低高域の出音と関係があるのかどうか,昔のオヴェイションとは一線を画す感じです。昔のオヴェイションはギブソン系の中域に特徴ある生音でした。特にストロークするとそんな感じが強かった。もちろんオヴェイションの音,ではあるんですけどね。

この出音にはネックの指板材もおそらく一役かっているのでしょう。昔はウォルナットとかが多かったのに,このモデルはエボニーを採用しています。エボニーは非常に固い木で,つまりは音の立ち上がりがいいわけですね。アコギだとマーティン,レスポールならカスタム,Charさん関係だとCMDシリーズとかヤマハのSFとかがそうでした。僕はマーティンを主に弾いているので,最終的に決め手になったのはここでした。ギブソン系好きな人は逆に違和感あるかもしれませんね(ギブソンは基本的にローズウッド)。

1597ヘッド裏 signature of Char

ネックは一時のオヴェイションに多かった三角ではなく,丸です。マホガニー製の5プライ。絶対反らない!と言っていた初期の頃は反らないけどねじれる(笑)といった使えないものもありました。現在のものは非常に強く作ってあるようです。あとはネックの仕込み角が違うんでしょう,弦高が低く,より演奏性が向上しています。前使っていた1768Xはわざわざ改造してエレキっぽく低くしていたのに…このおかげでか,テンションも低く感じます。

唯一外観的に本人のと違うのがぺグ。シャーラー製には違いないんですけど,ご本人のはふつうのゴールドメッキで,市販のものはパールつまみなんですねえ。割れそう(笑)。ま,割れたら替えりゃいいんですけど(笑)。

現在のオヴェイションには3つのボディサイズがあって,ディープ,ミッドデプス,スーパーシャロウという風になっています。で,上記の1768Xはディープボディだった。これがね,きつかったんですね。体のちっちゃい人には本当はスーパーシャロウがちょうどいいんだけど,生音の感じがね…結局厚みが厚くなるほど低音がふくよかになるんですよね。そこがこだわり(笑)。で,この1597CHはミッドデプスボディ。右肩の痛みはとりあえずなくなりました(爆)。

このモデルのピックアップ/プリアンプシステムのOPTIMAは割といい音です。硬めだけど生っぽい感じにできる。チューナーも内蔵されていて,飛び込みの会場なんかでは圧倒的に便利。弾きやすいし使い勝手もいい。買いか?と聞かれたら…安ければ!と言うでしょうね(笑)。もうちょっと安ければなあ…これが最近のエリートテクスチャードへと発展してるんでしょうけど。冗談はともかく,マーティン好きな人にも使えると思います。

Charさん自身が使っているのはレジェンドに始まり,クラフト1768X,エリート1868(ぶっこわれ−し?−た),エリート12弦,ガット,レジェンド12弦,アダマスII,スーパーアダマス,アダマスSMT,シグニチャー,エリートT…これくらいでしょうか。個人的な感想で言えばこの中で一番音がいいなあと思ったのはスーパーアダマスです。もちろん最高級機種,というのもあるんですが,これは生音もすごい。生音なのにコーラスかけたような倍音が出ます。欲しい!…でもディープボウルなんですよね…

余談ですが,この記事書くにあたってOVATIONのサイト覗いたら,1597(1597CHではありません…あたりまえですけど)のGBカラーをスティーブルカサーが使用しているという記述が…なんという偶然…!?