ヴィラ=ロボスの出版譜と手稿譜に関して − その1 (2006/02/09)


1. 12の練習曲

ヴィラ=ロボス(Heitor Villa-Lobos、1881-1959)の12の練習曲は、セゴビアが校訂した出版譜と、手稿譜には多くの相違があることが知られています。
最近では、いくつかの曲を、オリジナルの手稿譜に基づいて演奏されるケースもあるようです。
12の練習曲の手稿譜は、リオデジャネイロのヴィラ=ロボス記念館にあり、研究者に対しては、コピーが許されています。

出版譜と、手稿譜の詳細な比較分析は、Stanley Yates氏が、「Journal of the Guitar Foundation of America」氏に掲載した論文にあります。
参照URL: http://www.stanleyyates.com/articles/hvl/hvl.html

詳細は、上記Yetes氏の論文を参照していただきたいのですが、例えば、
・手稿譜には、一部運指がつけてある(出版譜にはない)
・手稿譜には、出版譜にはない(または異なる)発想記号がある
・手稿譜では、旋律と伴奏の音符の大きさが変えてあったりする
・1番、2番・・・手稿譜には、出版譜のような繰り返しがない
・8番 ・・・ 冒頭のフレーズのリズムが異なる
・10番 ・・・ 出版譜では、多くの小節が省略されている
・11番 ・・・ 出版譜と大きく異なるフレーズがある

などなど、です。

出版譜と、手稿譜の違いに関しては、多くの謎かあります。 たとえば、
 −なぜ、このような大幅な変更がなされたのか?
 −ヴィラ=ロボスはこれらの変更を許可したのか?
 −作曲されたのが1928年(出版社であるMax Eschig社に渡っている)にもかかわらず、実際の出版は、1953年と、15年もの間出版されなかったのはなぜか?

これらの謎について、続編として紹介する予定です。
(資料が英文なので、現在翻訳中。 乞うご期待)

2. 5つの前奏曲、ブラジル民謡組曲、ショーロスNO.1

フロリダ州立大学 Eduardo Meirinhos 氏の論文に、出版譜と手稿譜の詳細な比較論文があります。
ヴィラ=ロボスの伝記も記載されています。

参照URL: http://etd.lib.fsu.edu/theses/available/etd-06262003-170157/


(あとがき)
ヴィラ=ロボスは全曲弾けるようになりたいですが、先は長そうです。
最近はヴィラ=ロボスはあまり弾かない(弾けないとも言う)のですが、そのうち何曲かは録音してみたいと思います。
録音では、福田進一さんと、イエペスの演奏が好きです。