Psalms for you ― 聖歌 ―

アントレ古楽コレクションズ ムジカ・グロリフィカ

(Entree EBM-202513)

 

岡田龍之介さんの二枚目のCDが発売された。前回のリサイタルのCDとは趣を異にし、バロック・ヴァイオリンのジーン・キムさんがソリストで、初期イタリア・バロックのアンサンブルを中心としたCDである。CDをかけると活き活きとした音楽が飛び出してくる。擦弦(ヴァイオリン、チェロ)と撥弦(リュート、ギター、チェンバロ)という弦だけのアンサンブルゆえか、非常に良く溶け合った響きであり、聖歌のタイトルどおり、何か心が休まった。

ジーン・キムさんは、岡田さんが2002年のリサイタルでパートナーとして選んだヴァイオリニストで、シュタイナーのオリジナルの銘器と、飾らない音楽作りが魅力的である。良き独奏者を得たことと、好きな初期バロック物であることが相まって、岡田さんがセッションでもニコニコして演奏いる顔がCDの向こうに浮かぶような演奏であり、リサイタルCDの気迫とは違った、リラックスした音空間を楽しむことができる。共演のバロック・チェロの山廣美芽さん、リュートのレジーナ・アルバネスさんともに、共通の様式感と躍動感を併せ持った演奏者で、特に山廣さんが、コンティヌオだけでなく、ガブリエリでの見事なソロを聞かせるなど、主張のある演奏で印象に残った。

曲目は、チーマ、フレスコバルディ、カステッロなど、カメラータ・ムジカーレの創設メンバーにとっては、若き日のクイケン兄弟を中心としたアラリウス・アンサンブル、グラット夫妻のレコードや、ブリュッヘンの来日生演奏での強烈なインパクトなど、岡田さんとも一緒のバロックの原体験に関連した曲が含まれている。〇十年後、自然体でこれらの曲を楽々と聴かせるCDがあり、その演奏を岡田さんが支えていることに、感慨を覚えざるを得ない。

当楽団古参達の感傷は別としても、一聴に値するCDと感じ、お奨めしたい。

(H.S.)