慶應バロックアンサンブル

第38回定期演奏会

(2004年12月27日、東部フレンドホール)

 

2年ぶりに現役生たちの定演を聴きました。この十数年の間にたしか3回聴きましたが、いずれの時も部員は40〜50名で、しかも大部分が弦楽器。今回も弦が38名に対して、管と鍵盤と歌の合計が9名。きっとワグネル(オケ)は弦奏者が足りなくて困っていることでしょう。私が現役の頃(1970年代半ば)は常に相対的に弦が少なく、プログラミングにも苦労したものです。だいいち部員の総数も少なく、10名(弦は3名)で定演をやったこともありました。その頃に比べると、最近は弦楽合奏団が3つか4つできるのですから、羨ましいかぎりです。

プログラムは以下のとおり。

1. アルビノーニ     シンフォニア ハ短調 作品2−4
2. ヘンデル   カンタータ「忘却の甘さの中で」 HWV134
3. ドゥランテ   弦楽のための協奏的四重奏曲 第2番 ト短調
4. ロカテッリ   合奏協奏曲変ロ長調 作品1−3
5. テレマン   トリオ ト短調 TWV42: g9
6. クヴァンツ   トリオ ハ短調 QV2: 5
7. コレッリ   合奏協奏曲ト短調「クリスマス協奏曲」 作品6−8

編成も曲種もバラエティに富み、定番のバッハやヴィヴァルディが1曲もないのに、まったく飽きませんでした。有名曲を並べるよりも、自分たちがやりたいと思う曲に挑戦している姿勢が伺えます。ヘンデルやドゥランテも味のある作品。解説は分担して書かれていますが、これも内容が的確な上に、書き方のスタイルが統一されていて、好印象。

さて、肝腎の演奏です。これはもう何も文句のつけようがありません。こういう比較はあまりよいことではありませんが、私たちの頃と比べると格段にレベルが高いと思います。一人ひとりの技術の差はあまり気にならず、それよりも全体的に音程の確かさとアンサンブルの良さに驚きました。

もうひとつ、強く感じたのは、これまでに聴いた定演の中では最も演奏スタイルが揃っていて、しかもそれがいわゆる古楽奏法に近いということ。「だから、良い」というのではありません。モダン楽器に古楽奏法を取り入れるかどうか、どのような形でどの程度取り入れるか、アンサンブルのメンバー間でこの点に関して共通認識ができていることが大切だと思います。いや、実際にどの程度、意識的にそうされているのかは存じませんが、どなたもヴィブラートを抑えぎみで、伸びやかに音を解き放っているという印象でした。

ともかく、指揮者なしのアマチュアの団体でここまで聴き手を引きつける演奏ができるというのは、本当にたいしたものです。自分たちがOBの団体を名乗っているのが恥ずかしくなるくらい。いや、後輩たちを誇らしく思うべきなのかもしれません。

しいていえば、挨拶のときにもう少し晴れやかな表情ができると、なお良いと思いました。

次回もぜひ拝聴したいと思います。

(ガンバW、 2004年12月)