ヴォルフ&コープマン編
『バッハ=カンタータの世界 II 世俗カンタータ

(東京書籍、2002年3月刊) bk1

 

バッハ学者ヴォルフとバロック音楽演奏の第一人者コープマンの編集になる、「バッハ=カンタータの世界」シリーズの第2巻。コープマンによるカンタータ全集(Erato)の録音と同時に生まれたコラボレーション的なシリーズ。

最近でこそコープマン、鈴木雅明、ガーディナーなどのCDが数多く出されるようになり身近になったカンタータだが、あまりまとまった解説書がなかったため、カメラータ・ムジカーレのメンバーのように、古くからのバッハ・カンタータ・ファンには待望のシリーズである。特に世俗カンタータは、有名な「コーヒー・カンタータ」、「結婚カンタータ」の他に、表敬用として多数のカンタータが作曲されており、それらを、当時の習慣、詩、神話、カンタータ作曲事情、歌や楽器の演奏上の諸課題など幅広いアプローチで解きほぐしてくれる。楽譜の引用はあまりないが、バッハのカンタータの世界のまわりの空間を埋めてくれる発見に出会える本であり、スコアを見たり、CDを聴いたりするときに、ひと味もふた味も味わいが増すこと請け合い。

実は2000年発行時に洋書で第1巻「ワイマール時代までの教会カンタータ」篇を購入したのだが、教会暦や神話など英語が難しく、読みこなせなかったシリーズであり、礒山氏(監訳)をはじめ丁寧な訳文の翻訳版はありがたい。続いて第3巻「ライプチッヒ時代の教会カンタータ」の翻訳も予定されており、発行が待ち遠しい。

(SH、2002年6月)