バロックの午後

カメラータ・ムジカーレ第33回演奏会 プログラム・ノート

(1993.9.23品川プリンツヒェンガルテン)

 

今日演奏する作曲家達は、国はさまざまですがほとんど同時期に活躍しています。バロック音楽の最後を飾り、モーツァルトの出現を目前にした頃の音楽です。

ボワモルティエ
リコーダー、フルート、オーボエ、チェロと通奏低音のための協奏曲 ホ短調 Op37

ラモーとほぼ同じ時期にフランスで活躍したボワモルティエは、オペラ、宗教音楽、器楽曲など500曲にものぼる作品を残している。特に器楽の分野では、当時のフランスにはまだ耳新しかったイタリア風協奏曲の様式を取り入れ、新鮮な作風を示した。

今日演奏する曲もそうした作風の典型的な作品で、協奏曲といっても独奏楽器と伴奏の弦楽合奏という形ではなく、各楽器が一緒に奏する部分と、ソロを受け持っ部分が交替する、いわゆる室内協奏曲の形式を取り入れている。

ラモー
クラブサン・コンセール 第5番 ニ短調

当時としては長生きであったラモーはルイ15世の統治下、80歳まで音楽家として活躍した。その前半生はオルガン奏者、クラブサン(チェンバロ)奏者として、後半生はオペラ作家、音楽理論家として有名である。今日演奏する「合奏用クラブサン曲集」はラモー唯一の室内楽作品で、1741年パリで出版された。

これらの曲集は、つい20年程前までは、クラブサンの伴奏を伴うフルートの小品として演奏されることが多かったが、その後のオリジナル楽器演奏の発展に伴い、この曲集本来の姿である、クラブサンを中心にヴァイオリンまたはフルート、ガンバが加わるといった演奏スタイルが蘇っている。

第5番につけられた表題「フォルクレ」、「キュピ」、「マレ」は当時の音楽家たちの名前で、特に「フォルクレ」「マレ」はガンバの名手として知られている。

テレマン
リコーダー、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲 イ短調

テレマンは、当時ヨーロッパ中にその名が知られるほどの人気作曲家で、大バッハでさえもテレマンの名声の前ではかすんだ存在だった。当時ドイツでも屈指の進歩的な自治都市ハンブルクの音楽監督として半世紀近く過ごし、4000曲以上の作品を残したといわれる多作家である。

テレマンの功績は、その素晴らしい作品はもちろんであるが、市民のための公開演奏会や出版活動に勢力的に取り組むことによって、当時、宮廷や教会、一部の貴族のためだけのものであった音楽の在り方を根本的に変えたことを忘れてはならない。

今日演奏する協奏曲は、1曲目のボワモルティエの協奏曲と同様、イタリア風、特にヴィヴァルディの影響を受けたと見られる室内協奏曲の形式で書かれており、特に第4楽章では各楽器のソロが際立つように書かれている。

バッハ
フルート、チェンバロとヴィオラ・ダ・ガンバのためのパルティータ ハ短調

この曲は、リュートの独奏曲として今日まで伝えられている曲をフルートとチュンバロのために編曲したものである。

リュートは西洋梨を縦に割ったような胴体に棹をつけた楽器で、1000年以上も前、ペルシャからアラビアを経由してヨーロッパに伝わったといわれている。ちなみに西に伝わったものがリュートで、東に伝わったものが琵琶になった。バッハは、当時音楽の表舞台から消えようとしていたリュートのために、数曲の作品を残している。

今日演奏するパルティータは、ハ短調という調性もあり、バッハの器楽曲の申でも特に緊張感に満ちた作品である。バッハの曲を良くご存知の方は、第3楽章のサラバンドから、あの「マタイ受難曲」の最後の合唱を連想されるかもしれない。この曲のドラマティックな性格から、他のメロディー楽器のために書かれた曲をリュート用に編曲したものとする説もあって、早くからフルートとチェンバロの曲として復元が行われており、今ではフルート奏者の重要なレパートリーになっている。

ヴィヴァルディ
リコーダー、オーボエ、ヴァイオリン、チェロと通奏低音のための協奏曲 ヘ長調 「海の嵐」 F.VI-12

ヴェネチアで生まれヴェネチアで活躍したヴィヴァルティは、この地でピエタ女子慈善院の孤児達の音楽教師を長く務めた。彼女達の演奏は国外にまでその名声が届くほど素晴らしいものであったとの記録が残されている。今もたくさん残されている彼の協奏曲の多くは、ここで演奏されたものである。

今日演奏する「海の嵐」はリコーダーを中心に、ヴァイオリンやオーポエなどをまじえた多彩な編成で書かれている。嵐の時のつぎからつぎへと荒れ狂う波を、上昇、あるいは下降する音階が表している。

なお、ヴィヴァルディはこの曲を含む5曲を、弦楽合奏を伴奏とするフルート協奏曲に改め、音楽史上初のフルート協奏曲として1729年ごろにアムステルダムの出版社から出版した。これが「海の嵐」「夜」「ごしきひわ」などを合む作品10のフルート協奏曲集である。