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■ 詩的ぶるぅす ■
2010年7月
〜末日 〜20日 〜10日



菜の花の咲く道 何も言わないサヨナラは かなしくないと思ってた きみの好きな菜の花は いつかの空を捜してる 太陽が影を伸ばしても きみにすぐ手が届いてた 新しい朝がくることを 心のどこかで拒む日々 菜の花が咲くこの道で きみにサヨナラ言えないよ 笑って見つめて手を振って それで終わりにしたかった 何も言わないサヨナラは かなしくないと思ってた きみの好きな菜の花は いつかの空を捜してる 2010.7.31
ライトアップ ナントカタワー? ナントカジョー? ココは工事現場だ 工事現場のライトアップ 照らされるのはオレたち オレたち生身の人間よ ポーズをつくる暇はない ライトアップは夜だけだ 腕を動かせ 汗にかまうな 夜の蝶が通っても 赤いポールが阻んでる 寝苦しそうな月だけが ぼんやり見物してやがる 工事現場のライトアップ オレたち生身の人間よ 2010.7.30
片目の鹿 片目が見えないのは わたしの厭なところを 半分見ないようにするため 片目が見えないのは あなたの厭なところを 半分見ないようにするため そう思うことでしか どうして慰められようか 池に映したこの片目 空の重さがのしかかる それでもひとつ想うのは あなたの厭なところが すべて見えてしまったなら すべて見えるわたしの目を わたしを責めていただろう わたしはやはり片目がいい あなたの前では片目がいい 2010.7.29
石庭 水のない所に 水をつくる 飛沫(しぶき)のない所に 飛沫をつくる せせらぎのない所に せせらぎをつくる 魚影のない所に 魚影をつくる 命のない所に 命をつくる 夢のない所に 夢をつくる 2010.7.28
高野山 深い山の中に 原宿が現れた 若い男女が 列をつくった 竹下通りには 女は入れない 女人堂を出て 山道を十五分 女たちはこぞって 首をのばした 竹下通りが 遠くに見えた 男たちは自由に 行き来はするが 念仏の真似事を 繰り返すばかり それでも原宿は 大いに賑った 人の興味は 尽きることがない 原宿であろうと 高野山であろうと 2010.7.27
夜霧 人生は無数のスタートに満ちている 終わっても終わっても終わっても そのたびに何かがスタートしている 最後のサンショウウオが死んだ 黒く湿った土の上で 黒いぬらぬらしたものが 夜霧にしっとり包まれて 人生が無数のスタートに満ちていて 終わるたびに何かがスタートするなら 夜霧で何がスタートするというのだろう 2010.7.26
宇宙に行く方法 地球を回せ びゅんびゅん回せ 回して回して 回して回せば 遠心力で 宇宙に飛べる 回せ回せ まだまだ足りない ここはみんなで 地球のみんなで いがみ合うのも いったんやめて そうしてそうして そうら飛んだ 飛んだ飛んだ みんな宇宙に 飛んでしまって 地球にだれも いなくなった 2010.7.25
真夏のブリザード 夏も盛りだというのに 息も白くなりそうな 強烈ブリザード 全身を覆うはずの 防寒具は押入れの中 太陽は暴れ回るから すっかり身を晒して シャワーを浴びるつもりが 突然の暗雲が濛濛(もうもう) 身を切る吹雪が轟轟(ごうごう) 睫毛を凍らせながら ひげを白くしながら 眠るんじゃない 眠るんじゃない 耐えろ耐えろ耐えろ ブリザードはやがて 過ぎ去るだろうから 2010.7.24
コントラバス この舞台から降りると わたしはまた担ぐのだ 練習場所に行くため 次の演奏に行くため 真夏の暑い日には 汗を搾り出しながら 厳冬の凍える日には 指先を軋(きし)ませながら わたしはまた担いでゆく そして時々考える 身長ほどもあるものを どうして連れて回るのだ 出会わなければ良かったと これでお終いにしましょうと 呟いた秋の夕焼け空 わたしはなんなのだろう 隣に横たわるコントラバス いいえそれはわたしだった わたし自身に他ならなかった わたしはわたしを担ぎ わたしはわたしを連れて また舞台の上へゆくのだ わたしは一音一音になって 旅立ちまた帰ってくるのだ 2010.7.23
赤い眼 追い立てられて 追い立てられて 蠅はようやく 俺の鞄の上で 我が宿のように 安息している 俺は俺で 追っ払えばいいものを ちょっと気味悪くも そのままにしている お前もずいぶん 飛び回ったことだろう 町内のその辺か 北国か南の国か 海を渡り回ったか そんなことはわからない そんなことはわからない 俺が次へ行くまで 居たいなら居ろ 追い立てられるのは 慣れてはいるが 追い立てるのは 好きにはなれない 俺は疲れた 少し眠るとする 2010.7.22
黒き地平線から 燃やさなければならない すべてはイメージの中で 燃やし尽くされるのだ 欅や桜の並木も 華やかなる色の街も 古寺の残る風景も 誰かが落とした絵手紙も どす黒い炎にまかれ 荒廃した地平線 すべてはイメージの中で 燃やし尽くされたのだ 見よ 黒く燻(くすぶ)る地中から 鮮やかに生まれ来る子ら 裸で走り回る子らを 燃やし尽くしたとて 完全なる絶望など どこにあるというのか 2010.7.21

膝 膝がわらう 膝にわらわれる おまえを支え 受け止め 前へ進ませ 伸び上がらせ 跳躍せしめたのは この俺なのだ 膝がわらう 膝にわらわれる おまえはついぞ 俺については 気づかなんだ だからわらってやるのだ 気の済むまで わらってやるのだ 2010.7.20
けけらけら 干涸びた蛙が かさりかさり歩き 窪んだ目を開け けけらけらと鳴き 干涸びた蛙と 交尾をしてまた かさりかさり歩き 水辺なんてもう どこにもありはしない 赤茶けた地面は 空を映すこともない 干涸びた蛙が たったひとつだけ 目を潤ませるのは 生まれたての青だ 樹の幹や枝や 名も告げぬ草の 春に芽吹くあの 強烈に照り返す 生まれたての青だ 2010.7.19
バケツにて起居す バケツの中は静かだ 潮の流れはないし おしゃべりなイルカもいない 青く平らな海底と 丸く切り取られた空 これからどうなるのだろう 息苦しさは募るばかり 小さな小さな水の中で 静かに静かに考える 丸い空見て考える 手もないし足もない ぷくりとひとつ息をする 貝のわたしに出来るのは 時が変わりゆくまでを 静かに待つことだけなのか 2010.7.18
アルコールランプ 前例なんてものは 燃料のようなもので いまを照らす炎は 芯の先から出ている 燃料なんてものは 所詮は燃料なもので メチルアルコール エチルアルコール それだけあっても どれだけあっても 望むような光を 得ることはできない いまを照らす炎は 燃料を吸い上げて 最もふさわしい形で 芯の先から出ている 2010.7.17
このゆびとまれ マタギは山を追われ 船乗りは船を手離し 牛は悲しい目で旅立ち 田畑から人がいなくなり 犬は硬い地面を掘ろうとし 鳥はマッチ箱の森に棲み 人間の体が札束に替わり 地球上はすべて0か1になり このゆびとまれ このゆびとまれ かくれんぼでも おにごっこでも なんでもいいからやろう なんでもいいからやろう このゆびとまれ 2010.7.16
発電 ぎゃんぎゃんぎゃん 発電開始 発電は歴史だ 人類の歴史だ ぎゃんぎゃんぎゃん 進めど進めど 進まない 歴史は微々だ ぎゃんぎゃんぎゃん 熱だ熱だ 休んではならぬ 熱の歴史だ ぎゃんぎゃんぎゃん 死にそうだ 一旦停止 歴史は思力(しりょく)だ 2010.7.15
夜が明けるまで あっちへいけ あっちへいけ 校庭の隅っこに 夕暮れの影ひとつ ブランコは口笛をやめ 影は地中へ隠れる 少年よ少女よ きっと耐えるのだ きみの人生は もっと先にある そのために今は きっと耐えるのだ 夜が明けるまで 夜が明けるまで 2010.7.14
祈りなき参拝 ニゴイは多摩川を抜け出し 濡れた体をひきずりさまよう 古い神社の鳥居をくぐると 社殿へ続く長い石段があった 苔むした段をひとつまたひとつ 登るとはなしに登っていった 何を祈るというわけではない 何を信じるというわけではない ただ出来るはずもないことをする 意地にも似たような思いであった 川の中では毎日気が狂うほどの 河川外(かせんがい)生物と物体との格闘 無駄に無駄に無駄に無駄に 疲れ傷つき途方に暮れる 何を祈るというわけではない 何を信じるというわけではない ただ出来るはずもないことをして ニゴイは多摩川へ帰っていった 2010.7.13
たった一本の剣(つるぎ) 世の男性諸君 何かひとつでもいいのだ 自信をもちたまえ 自信をもちたまえ 馬鹿な奴はそのままえでいい 馬鹿になれない奴は聞け この世は辛く苦しく なんて悲しいことばかり 女性が社会を席巻し 益々追い立てられてゆく 一旦萎(しぼ)んでしまったら 負の連鎖は止まらない そこに一本の剣を 自信という剣を 突き立てるのだ まずは一本の剣でいい どんな剣だって構わない 漢字馬鹿覚え 筋肉馬鹿鍛え 野鳥馬鹿数え 惑星馬鹿調べ 負の連鎖なんてものは この剣により止まるだろう 世の男性諸君 自信をもちたまえ 2010.7.12
浴槽のフタ たくさんたくさん愛されて たくさんたくさん大事にされて それなのに人は僕は 時に隠れてしまいたくなる 押入れの中へ 天井裏の奥の奥へ フタを閉めた浴槽へ きっと見つけてほしいのだ 大事なひとよ出ておいで そうしていってほしいのだ 愛しているよ出ておいで せまいせまい空間で 自分のことを量っている 2010.7.11

雪の上のコオロギ 微かにふるえている 雪の上を歩いている おまえのその一歩と おれの一歩とはどうだ 地球と月ほど違う どうしてやめないのだ 目指す先はどこだ あてはあるのか 寒くはないのか 淋しくはないか おまえはどんどん 先へ進んでゆく 微かにふるえながら おれを置き去りにする 2010.7.10
海岸沿いの大衆食堂 外は大荒れ雨模様 青空を待ってどれほどか 食堂の中は相変わらず 誰も水も出しに来ない 人づてに聞いた話では 待っていてもだめだという 自分で人を呼びにいけ そりゃね自分の家ならね やってやろうと思うけど そのうえ自分で動くのは 不得手の部類に入ります わかっているよわかってる 動かにゃ腹も動きませぬ それでは勇気を出しまして この食堂から出てゆこう 2010.7.9
うがい薬 がらがらがら がらがらがら がらがらがら ひとりでするうがいは げげえ きたなくはいてもひとり ごくん のみこんでもまたひとり 2010.7.8
短冊 ひとつだけ風に揺れる きれいな短冊のままで 願い事を書きなさい 何でもいいから書きなさい 星になりたい? そんなのはだめだ 先生になりたいとか お医者さんとかあるでしょう さあ早く書きなさい 時間までに書けないひとは そのまま吊るしますからね ひとつだけ風に揺れる きれいな短冊のままで 2010.7.7
暗がりの柵 群れからはぐれた君を 僕はそっと追いかけた 少なくとも僕にとって 君は光そのものだった ほたるよ 明滅はときに僕を あざやかにくらませる うろたえ見廻してやっと 少し先に光を見る ほたるよ 君は裂くの向こうへと 再び戻っていった 僕とは別の世界の 明滅の群れの中へと 2010.7.6
白いカラス ぼくは白いカラスになって 世の中を睨みつける 色が白いというだけで 誰も彼も油断する まあきれいな鳥ね なんて言ってる間に ぼくはするりと降り立って 阿呆阿呆と叫んでやる たとえ尻をつついても へらへら笑っているばかり そんなに気づかないのかね たかが色が違うだけで 白いカラスになろう諸君 自由でも何でも叫んでやれ 2010.7.5
ドライフラワー あなたとの思い出は ドライフラワーのように 花びらひとつひとつが 水気を失ってしまった 朽ちてしまったものなら いっそ捨ててしまえるのに どうしてこれほどまでに きれいな姿でいるのか この花はもう二度と 甦ることはないのに 思い出のドライフラワーは 悲しく咲き続けている いつになればこの花を 捨てることができるだろう 2010.7.4
シャーベット・フルーツ そんなに冷たいのかい そんなに凍(し)みるのかい ごめんようっかりしていた まだ融けてないみたいだ 凍らせておけばほら ダメにならないと言うだろう? 零下何度の世界の中 ずっと閉ざされていたんだ もう少し時間をくれ 融けてしまうまでもう少し 待ちきれないというのなら きみの温度で融かしてくれ そうさシャーベット・フルーツは あたたかいほどに融けてゆく 2010.7.3
ショート・ケーキ 箱の中にひとつだけ イチゴのショート・ケーキ もしも倒れてしまったら 生クリームはべったべた なにより恐れていることは 転がるイチゴの虚しさよ どうか倒れませんように どうか倒れませんように あれやこれやと手を尽くし あれやこれやと気を配る ショート・ケーキは箱の中 知ってか知らずか箱の中 たまにゃこんなこともある 身を任せてみることもある ショート・ケーキは箱の中 知ってか知らずか箱の中 2010.7.2
火の海 四方八方から 火が迫りくる 轟音は悲鳴をも 掻き消す海となる あなたを守るのは 自分しかいない 火の海でしか 気づけないなんて どうかどうか 許して下さい そして火の海よ 尊い熱さよ 決して決して 忘れはしまい 2010.7.1

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