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大阪城ホール@GT2005さん 「最も大きな影響を受けたアーティストは誰ですか?」 …という質問に、みなさんは一体誰を思い浮かべるだろうか? Beatles?Nirvana?それともRunD.M.C? 俺にとってThe Beastie boysはそんな特別な存在だ。 今でこそダンボールバンド自分BOXでGT=rap担当として定着しているが、 彼らの曲を聴くまでは、実は俺はアンチ・HipHop人間だったのだ。 それまでの俺の中でのHiphopといえば、黒人または黒人をマネた日本人が、 ダボついた服を着て派手な車に乗り、女をはべらかしながらYo,Yo言ってるイメージしかなかった。 俺の中のHipHopは、MCハマーで時が止まっていた。 そんなある日、ふと読んだHMVのフリーペーパーで、CaptainFunkという日本人アーティストが 自分の音楽のルーツについて語っている記事を見つけた。 そこで彼は、いかに自分にとってBeastie boysが大きな存在であったかを、熱く熱く語っていた。 そこまで言うんなら、一度聞いてみようじゃないか。 俺はそう思って、帰り道にTsutayaに立ち寄り、普段は素通りするHiphopコーナーから Beastieboysの「Paul’s Boutique」というCDを借りた。 家に帰り、CDを再生した瞬間、俺のHiphop観は180度転換した。 甲高い声!絶妙の掛け合い!軽快なBeat! こんなRapがあったのか!!今までの黒いHiphopとは全く異なる音楽に、俺はグイグイ引きこまれていった。 そして何度も繰り返し彼らの曲を聴いた。 このように、モーゼが海をズバーンと割って民衆を導いたのと同様、 Beastieboysは俺をHiphopへと導いてくれた伝道者であり、 もしも彼らに出会っていなければ自分Rapも生まれていなかったことは間違いない。 そんなわけで、GTにとってBeastieboysは特別な存在となったのである。 時は流れ2004年12月… 寒さが増すころ、自分BOX恒例の年末レコーディングが近づいていた。 今回はどんな曲を作ろうか…俺は自分Rapの構想を練っていた。 そんな折、ニューアルバムを発表したBeastieboysが、1月に単独JapanTourを敢行するという情報が入った。 これは行くしかない!夏にもSummerSonic出演のため来日していた彼らだが、 そのとき俺は都合が合わず見に行くことができなかった。 しかし、もう機会を逃すことはできない。単独ライブ、場所は大阪城ホールだ。 さっそくネットでTicketをGetすると、席はアリーナAブロック。おお最前列やん。 そんな時、俺はふと思いついた。 そうだ、Beastieboysの日本語Rapを作ったら面白いんじゃないか? 英語のリリックを全部、空耳アワーみたいに日本語に変換して。 そうすれば原曲の雰囲気をそのまま伝えられるだろうし、やってる俺らも楽しい。 さらに出来上がった曲をCD-Rに焼いて、Beastieライブの会場に来ている観客に配布すれば、 みんなBeastieのファンなわけだからきっと喜んでくれるに違いない。 とくに女性。今回は女性にターゲットを絞ろう。 メンバーのEJ,takuに相談したところ、女性ファン獲得のためなら手段を選ばず、という意見で合意に至った。 「すいませーん、僕たちBeastieのカバーやってるんでー、よかったらこれ聴いてくださーい」 「うんいいよー」 「ついでに携帯番号も教えてくださーい」 「うんいいよー」 …そんな展開を俺はひそかに期待していた。携帯聞いてもEJ,takuには内緒にしとこう…。 こうして新曲「和尚さんと一休さん」が完成した。 元ネタはニューアルバムの「Triple Trouble」という曲だ。 そしてライブ当日、CD-Rをカバンに詰め込み、俺は意気揚々と会場へと向かった。 待ってろよHey,ladies!そしてBeastieboys! 会場についたのはゲートが開く40分くらい前だった。 出遅れたかな…?そんな心配をしつつアリーナAの列を探すと、意外にも人数が少ない。 うーむ、Beastieの集客力は日本ではこんなもんなのか?なんか拍子抜けするなあ。 先頭集団には全身蛍光グリーンのadidasジャージに身を包んだ女子高生など(※後日、管理人さんと判明!) 気合の入った方々もいたが、その他はいたって普通であった。 B系の兄ちゃんとかは少ない。会社帰りのサラリーマンみたいなおっちゃんもいる。…ファン層が読めない。 そんな俺はネイビーのルンメニゲ・ジャージを着ていた。 日も暮れて気温が徐々に下がってきた。 外で待っているのはツライ。ジャージは風を通すのだ。 俺は寒さを紛らわすためにブルブルと貧乏揺すりをしていた。 …と、突然そこにカメラを肩にかついだ外国人と、通訳らしき人が現れた。 こっちを見て何やら「こいつにしよう、こいつ」と言っているらしい。 そして通訳の女性が話しかけてきた。「少々インタビューしてもいいですかー?」 ははぁ、この光景は見たことあるぞ、PVとかで観客のコメントが流れるやつだな。 「Beastie最高ー!イエーイ!」みたいな感じで。これはチャンスだ。 …しかし。俺はアドリブがきかないことで有名である。 ラッパーなのにアドリブが苦手とは致命的であるが、BOXラジオなどでもその苦手っぷりをいかんなく発揮している。 今回のインタビューはどうだっただろうか? 「このライブは何で知ったんですか?」 「え…インターネットですけど…」 「何かBeastieに伝えたいメッセージはありますか?」 「えーと、えーと、、、がんばってください」 ちくしょう!何てクソ平凡なコメントなんだ!しゃべりながら俺は思っていた。 しかもここは大阪、面白くない奴に人権はねえ! 周囲の人々の視線が痛いが、このまま終わるわけにはいかない。 そんな時、俺はカバンに入っているCD−Rに気がついた。 そしてとっさにCDを取り出し、カメラマンに差し出してこう言った。 「そうだ!俺たちBeastieのカバー曲を作ってきたんだよ。だからBeastieに渡してくれ!」 すると、カメラマンはニヤリと笑い「カメラに向かって頼んだら渡してやるよ。」と言った。 俺はカメラに向かって低い声でつぶやいた。 「…ぜひ…聴いてください。」 あぁ、これじゃあNHK歌謡番組の司会者じゃねーか…。 最後まで俺のアドリブはきかなかった。 しかしとにかく、女性をGetするための下心から出発したこの企画が、 もしかするとBeastie本人が俺たちの曲を聴いてくれるかもしれないという、夢のある企画へと変化したのは事実だ。 スタッフにCDを渡してくれるように頼むってのは、この業界ではよくある話だろう。 それでも少しでも俺たちのCDがBeastieの手に渡る可能性があるとすれば、面白いではないか。 ファンタジスティックではないか。 このことをEJ,takuにメールすると、「すげー」「全米進出?」との返事が。気が早い。 そして、ついにゲートが開いた。 観客が我先にと会場へなだれ込む。警備スタッフが拡声器で叫ぶ。 いよいよ開演も近い!! 会場の中では1時間以上立ちっぱなしで待たされることになった。 ステージに置かれた機材やベールに隠された舞台装置を見て、あそこから人が出てくるんだよとか、 あそこにきっとDJブースがあるに違いないとか、想像する。これもライブ前の楽しみ方の一つだ。 そしてみんなが疲れて床に座り込みだしたころ、照明が落ち、前座が始まった。 前座はサイケデリックなテクノポップバンド・Le Tigreだった。 ピコピコという電子音に重ねて、ベッキーに似た女性ボーカルが絶叫する。 これはこれで良い音楽なのかもしれない。…しかし会場の反応はいまひとつだった(ファンの方ゴメンなさい)。 演奏が終わると、彼女らはサラリとステージを後にした。 さあ!!次はいよいよお待ちかね、Beastieboysの出番だ。 しかし、さすがは大御所、前座が終わったにもかかわらずなかなか姿を現さない。 さっきのテクノがせっかく頑張って盛り上げようとしてくれたのに、会場にまた悪い雰囲気が漂い始める。 一体どれだけ待たせるんだよ……座り始める客たち。現代っ子は足腰が弱いのだ。 と、次の瞬間、また照明が消えた。 大きな荷物を台車に乗せて運ぶスタッフの姿が、スクリーンに映し出される。 その荷物の中身は…みんなもう気づいていたのだろう。あちこちから一気に歓声が上がる。 フタが開き、中からゆっくりとMixMasterMike登場!イェーイ! そしてしばらく彼の演奏が続いた後、 Ad-Rock登場!続いてMCA、マイクD登場! こうしてBeastieboysの爆発的なライブが始まった。 グレーにゴールドのネームが入ったおそろいのジャージを着て、3人がステージ上で暴れまわる。 その圧倒的なパフォーマンスに、俺はただひたすらヤラれっぱなしだった。 あの激しい掛け合いを、リアルタイムでやっていくのだ。 当たり前のことかもしれないが、Rapをやったことのある人ならいかにそれが難しいことかわかるだろう。 うまい。やはりこいつらメッチャうまい。そしていつもの甲高い声。どれを取っても最高だ。 俺たちがカバーした「TripleTrouble」もかかった。 俺はBeastieと一緒に歌った。もちろん、日本語で。 Beastieが一休!と叫び、俺が一休!と返す。いやーたまらん。 俺の頭の中では勝手にコラボレートが成立していた。 ライブも佳境に入り、会場はますます熱くなっていた。 と、突然Beastiesが引っ込み、ステージ上の大スクリーンに昼間の大阪城ホールが映し出されたではないか。 カメラはどんどんクローズアップしていき、列をなして並んでいたファンたちの様子をとらえた。 そして、さっき撮影されたばかりのインタビューが、一人ずつ流され始めたのだ。 まず若い女の子2人組が映った。 「Hi,Beasties!!We love yoooou!!」…すげぇ、ちゃんと英語でメッセージ残してるよ。 そして次は普通の青年。「サボタージュ!歌わせてー!イェー!!」笑う観客たち。 そう、そのノリだよ。やっぱ大阪はノリがいい。 他にも、カメラに向かってRapをしてみる外人さんや、仲の良さそうなカップルなど、 10人くらいのインタビューが流されていった。 俺の映像は流れない。そりゃそうだ、俺と違ってみんなはテンション高いもん…。 スマンEJ,taku…俺やっぱアドリブきかんかったわ…せっかくのチャンスだったのに…… その時。大阪城ホールの大画面に、見慣れたヒゲ面の男がのっそりと映った。 ていうか、俺登場やん!!やめてくれーー! そして画面の男はカメラに向かって低い声でボソリとつぶやいた。 「…ぜひ…聴いてください。」 恥ずかしい…。俺は思わず下を向いた。 しかし次の瞬間。 なぜか画面は、どこかの建物の中を歩いていく映像に切り替わった。 予想外の展開に、映像を見守る観客&俺。 カメラマンはずんずん歩いていく。そしてドアの前にくると、扉をあけた。 そこには………なんと!!本番前にリラックスしているマイクDの姿が!! そう、カメラマンはBeastieboysの楽屋に向かっていたのだった! おもむろに何かを差し出すカメラマン。そしてマイクDが手にしたものは…まさしく俺がさっき渡したCDやん! ノートパソコンを取り出し、何がなんだかわからないというような表情でCDをセットするマイクD。 「track1??」とカメラマンに尋ねる。まさか、まさか… そのまさかが起こった。 Beastiesのパソコンから流れ出す「一休」! 「What??!!」驚き、苦笑するマイクD!! そこで映像は終わった。 なんということだ。俺の一休を??Beastieboysが聴いた??マジで?? 俺はガッツポーズをしていた。誰がこんな結末を予想したであろうか。 俺にとって最も偉大なアーティストである彼らが、俺の作った曲を聴いて、笑ってくれるなんて。 これが、ダンボールバンド自分BOXとBeastieboysが直線で結びついた瞬間である。 Rapをやってて本当によかった。このような素晴らしい演出をしてくれたカメラマンとBeastiesの優しさ、 懐の深さに感謝したい。 これからも俺たちは精進していきます!Beastieboysよ、ありがとう!!そして永遠に!! ――おわり―― ↓↓おまけ↓↓ GT2005さんのバンド「自分BOX」のHPはコチラ。 「和尚さんと一休さん」聴けますよ!一休!! |