2004.09.19(sun)
今日のお買いもの「メール」 おか
ヘイ。エブリバデー。俺の名前はDJオカダ。今日は日頃の感謝の気持ちとして、リスナーの皆さんから届いた熱〜いメールをばんばん紹介しちゃうぜ。このメール、Bahaha用と家用に届いたもの。それでは早速最初の方、紹介しちゃおう。眼がチカチカするとか言ってんじゃねぇぞ。オレだってチカチカしてるんだ。
題名「掲示板見ました!あいです。」

27歳主婦のあいです。いきなりですみません。
最近の生活に嫌気がさし、楽しい事がしたいと思っての連絡です。
子供もいないので休みの時はドライブとか一人で映画とか・・
ちょっと寂しい生活しています(>_<)
もし時間とか合いましたら一緒に楽しく遊びたいと思います。
あなたの事、掲示板以外にもう少し教えてくださいね?
私のアド教えますので待ってまーす。candy_*****_ai@*****.**.jp

FROM ai


 
aiさん、気が合いますね、ちょうど僕も日々の生活に退屈していたところなんですよ。27歳?いやいやお若いですよ。世に言うところの若妻じゃぁないですか。ドライブ?映画?全〜然問題ないですよ。もうまんたい。ただね、旦那さんのコト、もう一度冷静に考えてみて下さい。愛情はカタチとして見えるものだけではないですよ。それでもど〜してもっていうなら…
……おい。
俺んちはいつから有閑マダム相談室になったんだ。
 ここをご覧になっている紳士淑女なら既にご存知であろうが、ウチのBBSはとかくレスポンスが悪い。正直、今さら平謝りしても許されないだろう。この状況の下で「もう少し教えてくださいね?」などと興味がわくとは・・・aiさん、なかなかいい回路をお持ちだ。そんなaiさんにはバンドやってROCKする事を、是非おすすめしたい。


 オーケイ。続いてのお便り。
題名「掲示板みましたぁ〜♪ *奈緒美です。」
Reply-To: naomi_********@yahoo.co.jp

よかったらメールからはじめませんかぁ?遊びでもいいんで気があったらお話したいなぁ〜プロフは交換しょうね!私は153の低い方かなぁ〜あっ!そうそう年齢は24だよ!社会人ですo(^-^)o

 奈緒美さん遊びなんて必要ないぜ。しょっぱなからマジで行こう。マジで。気が合うかどうかはその後だ。年齢の差?そんなもん気にしちゃ…
…って、待てコラ。
 正直これには少し目を疑った。なんと***印の部分を含めると、友人の名前になるからである。まぁ後で見直してみれば、題名には漢字で名前が書いてあって、全然字が違っていたので、偶然としておくのが正しいのだろうか。しかし「153の低い方」って何のことだろう?年収か?血圧?体重?あぁ、身長ね。153メートルは決して低い方とは言えないぞ。


 続いてのお便りを紹介しよう。
題名「昨日のはなしのコトなんだけどぉ♪」
どうする〜?アッコとカナは行くみたいなんだけどぉ・・・由美は彼氏とデートなんだって!(>_<)
4人だけで行っちゃう??っていうか彼氏ほしいー(>_<)
ひろみはあの人とどうなったぁ?またコンパ企画してよぉ〜(@⌒O⌒@)

 
おぉ!アッコかぁ!そっかーアイツも来るのかぁ。今何やっているんだい?そうそう確かオレの誕生日に絵をくれたっけ…。オレ嬉しかったからディナーに誘おうかなーと企んでたんだ。そしたらアイツ、いつの間にかバイト辞めちゃっててさー。それでさー
………って、おい。
10年も前の話じゃねぇか。

他人のコトはどうでもいいから、
オマエ誰だよ。
 さて、事実と照らし合わせてみよう。このメール到着の前日は65歳男性と話しただけ。で、題名が「昨日の話…」。ということは、このメールはその65歳男性が出したことになる。いやだ。勘弁してくれ。●●さん。


 で、最後。
題名「よかったね♪」
おめでとぅ♪頑張ってたもんね〜\(^o^)/
今度みんなでお祝いしないといけないねっ!?
なに食べたぃ??なんでもOKだよ♪なんでも好きなものいってねっ☆

 じゃあ黒木瞳の手料理。
 コメントのしようがない。人の食欲につけこんで誘うなんざぁ言語道断。市中引き回しのうえ、打ち首じゃ。

おわり。じゃ、ここらでCM。
変なニオイの誘惑 priceless(税込)



2004.08.01(sun)
今日のお買いもの「ハイウェイカード」 おか

 2004年7月25日。僕のスケジュール帳には大きく「春山ぜろつー」書いてあったが、その下に、少し小さい文字で「Tour de France Goal」とも書いてあった。そう、この日、パリ・シャンゼリゼのメインストリートは全面通行止め。なぜなら20日間かけて自転車でフランスを1周してきた、約200名の男達がゴールを迎えるのである。そしてアメリカのランス・アームストロングが前人未到、ラヴパワーで6連覇を成し遂げようとしていた日でもあった。(余談だが、去年彼は前妻と離婚した。その直後からシェリル・クロウとラヴラヴだ。)このレースはフランスの、いや世界の伝統行事。今年で101年目、90回目の開催となる。今年は地元フランス人のリシャール・ヴィランクも、これまた前人未到の7度目の山岳賞をもってゴ………ハッ!このことになるとついつい話が長くなってしまうよ。オレときたら…まったく、恥ずかしいってもんだ。
 まぁとにかく、おめでとうランス!ということで、ランスにではなく
自分にご褒美をあげることにした。

 夢のようだったイベントから数日後、ビデオを観終えてから即コンビニへ…ふっふっふ……ついにこいつを手に入れたぜ。これで高速出口での、あの現金ショックは半減される。いや、全てから開放されたと言ってもいいだろう。出口手前のサービスエリアで、予め千円札をポケットに用意しておくことや、料金所で後続が渋滞するその先頭で、グローブをはずしてガサゴソとポケットをまさぐること等…そう、これ1枚渡してハイ・オッケー!数字の許す限りどこまでも行けるんですぜ!
 むむっ、現金がカードになってしまったこの開放感!まさにこれは「疑似的カードローン地獄ゴッコ」だ!
(何を言っているのかわからない)

 さて、今まで現金をポケットに用意するなら、紙幣でなくてはならなかった。ジャリ銭など言語道断である。なぜならグローブをしていると、何を握っているのか全くわからないのだ。もしもそんなんで、料金所で小銭をばら撒いたりして…ヘルメットの表面に汗を浮かべながら四つん這いで拾い集めてたりして…そんな自分を想像すると……バイク置いて逃げたい。
 いま心の中で「ETCが…」とかつぶやいちゃった人、退場。

日本道路公団発行 ハイウェイカード・3,000 ¥3,000-




2004.06.24(thu)
先日のお買いもの「ベルト」  おか
 関東に梅雨入り宣言が出されてから少し後、東京には雨が降っていた。部屋の外では霧雨とも言えない微かな雨が、道路脇の木々をその幹までゆっくりと濡らしていた。窓を開ければ・・・淡谷のり子・・・ではなくて。窓を開ければ、港が見え・・・淡谷のり子・・・
で・は・な・く・て。
窓を開ければ・・・濡れた木と草花と土のにおいが、ふと霧の中の高原を思い起こさせた。ちょっと暖かすぎるけど。そんななか、いつもの様に僕は満たされない時間を過ごしていた。「まただ…」もうウンザリだった。テレビを点けたところで、野茂もイチローも松井もいなかった。まさにお手上げ状態。時間も金もないが、欠けているのはそういったモノじゃない。何かが足りない。もっとグッとくるモノが欲しいんだ・・・

と、いうわけで(どういうわけ)ベルト。買っちゃいました。前から買おう買おうと思ってたんだけど、なかなか手が出なかった。ピンと来るモノも無かったし。条件は革製でシンプル、そして…こう…腰にグッとくるモノ。骨盤にズシッと乗っかるあの感じ。
 家に帰って早速袋から取り出し、腰に巻いてみる。新しい革はまだ固かった。これを軟らかくするには月日がかかる。そこに革製品の楽しみがある。前出の姿見(2004.02.08参照)に自分を映し「カッコイイ……ぜ……???」頭蓋骨と脳の間を「?」の形をした銃弾が跳弾していた。シンプルな疑問が前頭葉を直撃。
ベルトって右から巻くの?左から巻くの?

おいおい、暫くベルトを使っていなかったとはいえ、兄さんそんなコトも忘れちまったのかい!呼吸とは無関係に上がる心拍数、変な汗が出てきた。とりあえず体に聞いてみることにした。深呼吸をして眼をつむり、ベルトを手に取って、腰に回してみる。きっとどちらかに違和感を憶えるに違いない。そして僕の体内に眠る太古の記憶がはじき出した答えは…

『ドチラモ、正シイデス。』

ガビーン。開いた口が塞げない。自分で白眼を剥いているのが分かった。
 あぁ…買う時にレジで夢見た「冒険少年シンドバッド」&「マジックベルト」な日々は何処へ……。今はすれ違う人のベルトばかり気になる怪しいシンドバッド。
メーカー不明 ベルト ¥3,045-(税込)



2004.04.29(thu)
今日のお買いもの「CD」  おか
 夜中に放映されていた、LIVE映像を流す番組。
観ていて久々に脳内にカミナリが落ちた。
一夜の間違いだろうと思い、とりあえず寝てみた。
結局、朝目覚めても状態が変わらず、そのままCD屋へ直行。
 
"くりかえされる諸行無常… よみがえる性的衝動…"

 アルバムの終盤頃には涙腺が緩んだね。正直。
 んー・・・これが滲みてくる今の自分って・・・?
ZAZEN BOYS ¥2,500-



2004.04.15(thu)
今日のお買いもの「減点」  おか
 皆さん、『三人の黒服男がやってくる。』お楽しみいただけましたか?フムフム……そうですか。それはよかった。
 不景気と叫ばれる今日、手持ちのお金を世にまわして経済の活性化を図り、明るい明日を夢見ようというこのコーナー。久々に帰って来ました。
 さて、自動車の免許を持っている人は憶えていますね。踏切の前では一時停止。窓を開けて右から確認し、左を確認する。同時に音を聞き…ニオイを嗅ぐ。そうです、これが踏切を横断するときのルール。
 つい先日、終電もとっくに無くなった深夜。某所の住宅街の中にある某線の踏切。友に別れを告げ、颯爽と目の前の踏切をバイクで横断した直後、外灯の影の暗闇からチカチカと赤く光る棒を持った人がスッと出てきた。僕は眼の端でその人影をとらえ、瞬時に理解した。
あ、警備員さんだ。」

…?????…頭の中で間違い探しが始まっていた。
警備員さんの割にはやたらに黒いなぁ。
警備員さんの割にはK察コスプレっぽくないなぁーーーーーー「!!!」

 お・ま・わ・り・さ・ん・だ。

 気付くと同時に急ブレーキ。「いま踏切手前で停まらなかったでしょ。はいキミこっちに来てー」と、踏切が見えなくなる所まで連れて行かれた。少しバイクを切り返したときに、自転車に乗っている友の後姿が見えた。まさか別れて20秒と経たない間にお巡りさんと仲良くしているとは思ってもいないだろう。そしてこの角の先には、マラソンのゴールの様な"春の交通安全運動!"と書いた横断幕があるに違いない。行ってみてビックリした。そこには深夜にかかわらず、乗用車や原付がゴロゴロ…ホントにゴロゴロ。人数の割にとてもシーンとしていたのが、何か妙だった。
 すべての質問に的確かつ簡潔に回答し、最後に署名をし、朱肉を左手人差し指につけて印を押す。「ここに指を…。軽〜くでいいですからね、軽〜く。」と説明されたが、すっごくベッチョリついちゃった。あれで判るのかなぁ?
 帰り道、運転しながらブツブツと考え事をしていた。(それもまたアブナイ。)はじめは文句じみたものだったが、少し冷静になってきて、ふと思った。
「踏切って停まる必要があるのか?」
 遮断機を無視したり、踏切の中で車が止まって事故になるケースは聞いたことがあるが、踏切が鳴らずに電車が通過するという事故は聞いたことがない。もしそんなことがあったら大不祥事だろうが。地方じゃあるまいし………と、結局は文句になってしまいながら帰路に就いていると、バックミラーにチラとヘッドライトが映った。なぜか音が聞こえない。もう一度ミラーで確認しようとしたら、今度はいない!?
 …?????…あれ、気のせいかな?と思い、走行位置を変えてもう一度ミラーを見た。バッと目に入ったヘッドライトの明かり。真後ろに「ピッタリ」とバイクがいた。バ●ヤロー!抜かすならとっとと抜かせー!白バイの訓練じゃないんだぞーぉーぉーぉーーー。

 違う違う…。白・バ・イ・だ。

 もうそこからは時間の経つのが遅いこと遅いこと…。ワカリマシタヨ。そうですよ。小学校3年生の時に野村さんちの庭の柿を取ったのは僕ですよ。
踏切一時不停止 ¥7,000-( plus 減点2点)

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2004.04.09(fri)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

エピローグ

 三人の黒服男の話を僕はなんとか伝え終わり、2004年にタイムマシンに乗って帰って来て、のび太ん家でコーヒーとどらやきを御馳走になってから世間話をしてかえって来た。なんか最近あいつら仲悪いらしいぜ。(のび太とドラえもん)ママが愚痴ってた。夢こわれるんで、大きな声じゃ言えないんですけど・・って。  まあいいかその話は。

 Nとはあれ以来会っていない。僕もNも連絡をとってはいない。なぜかというと、それはまあ、なんでだろう?お互いそういうタイプだからなんだろうなあ、きっと。

 「Nが死んだ。死因は風邪」
という訃報をいつか受けるんじゃないかってことを僕は心のなかで用意していたかもしれない。実は。この15年間。それは全然不思議じゃない、ありそうな結末だから。Nの魅力をもってしても、もしかしたら・・あるいは・・と。だけど、ところがどっこいNは生きている。しぶとく、したたかに。そのニュースを聞いたのは、ものすごく突然のことで、僕はそのニュースを聞いた日にとんでもない目にあうことになるんだけど・・今回は、その話をこの物語のエピローグってことにしようかな。

 「Nがバーを経営している」
という話を聞いたのは、バッハッハオーケストラが下北沢でライブを行う日のどんより曇った休日の午後だった。同級生のシンちゃん。偶然僕のことを探してこのHPを見つけてきてくれて、下北まで足を運んでくれたのだった。ハードロックギター全盛の高校生当時、誰よりもはやくギターのパッセージを操れた伝説のシンちゃん。僕のギターを3階から誤って落としてしまい、僕に死にそうな顔であやまったあとで、しらふじゃいられなくなり学校で酒を呑んで泥酔したという伝説も持つ(笑)シンちゃん。髪を切ってスーツを着ていたけれど、シンちゃんはやっぱシンちゃんだった。

 「Nって不思議だよね。やれば何だってできるんだ。ただ何をやったらいいか分からないところが、すごくNっぽいんだけど。とりあえず今は、バーってことらしい」と彼は言ってた。僕はそのバーがあるおおよその場所を聞いて、お礼を言った。さんきゅーありがとね。俺も今日時間空いたら合流するわ。今日のライブ、楽しんでってくれよ!・・・

 アンコールが終わってスーツを着替え、僕はひとりでNのバーに向かった。はじめて降りる駅のとある場所にあるダーツバー。『フランスへ単身渡り住み、そこで「なんかおもしろそうだったから、なんとなく」料理を勉強し、帰国後港区の結構すごいところ(ネクタイがないと入れないような店)でシェフとしていい位置まで登り詰めたけれど「飽きたから」やめて、そのころ「なぜか」魅せられたダーツにはまったから、「ダーツバー」なんだって。』という・・?あやふやな経路と噂を兼ね備えもつNの店へ。

 トビラを開けるとその店はずいぶんと繁盛していて、ダーツをやりながら歓喜しているお客さんの声がところ狭しと響きわたっていた。そのなかでもひときわ盛り上がってるグループがあり、彼等のダーツのレーンでは得点表示計にものすごいスコアがたたき出されていて、黒山の人だかりのギャラリーがまわりに集まってきていた。その群集のまん中にたって、今まさにダーツを投げようとしている人物が、・・・Nが、そこにはいた。最後のスローを投げ終え「おーっ!」という歓喜の渦がわいたあと、彼等はまた自分のプレーに散りじりにもどっていった。

「よおハル!」
とNは言った。あの日のことがまるで3日前の出来事だったかのように思えるトーンで。
「あいかわらずだな。ダーツを投げながら、ふとオマエの気配が匂った。わかりやすいんだよ。どうだ?こっちの方は?」
とNはギターを弾くマネをした。あいかわらずさ、ここでもオマエは人気者だな、と僕は答えた。
「いやあ、そうでもねえよ。ダーツってのは奥が深いんだ。あ、そうだ、ちょっと待ってろよ。」
そう言ってNは店の奥に消えていった。
「乾杯だ!お互いなんとか生き残ってたお祝いさ」
(ちなみに僕はアルコールが一滴も飲めない。これ、何だ?と聞いたらいいから飲めだって)その飲み物は炎の味がした!
「ははは!テキーラだ!あいかわらず一滴もだめなんだろ?だけど、今日はお祝いさ。このテキーラのアルコール度数はすごいぜえ、火つけりゃ燃えるし、その気になりゃあ車だって走る。ははは久しぶりだな!元気してたか!はははははははは・・・・」

 ははははは・・・時間が経つにつれて僕は元気がなくなっていった。テキーラの猛攻ははげしく、僕は気絶寸前にまで追い詰められていた。Nやシンちゃんやまわりのお客さんたちの声が、耳もとですごく大きくなったり小さくなったりしていた。天井が回りはじめ、まわりの人たちが伸びたり縮んだりしたりして見えた。一瞬、三人の黒服男が店のドアごしに立っているのが見えて、そして消えた。ああ・・あいつらが、おれにも見えた、ぜ。もうろうとする意識のなかで、僕はNにあの質問をしてみた。あれから風邪はひいたのか?と。
 『いいや』と笑ってNは首をふるだけだった。
                 ↓
                 ↓
 それからあとのことはよくは憶えていない。後日携帯の留守電にシンちゃんから「なんか、黒服男がどうとか言ってたけど・・大丈夫?」って入っていた。
                 ↓
・・この物語はこれで終わりだ。長い話を聞いてくれてありがとう。この話のラストはNがお店のお客に叫んでたセリフで締めくくることにしよう。それはちょっとイキな、こんなセリフだ。

『さあ!みんな!!今日という今日はジャンジャン騒いで好きにやってくれ!!!そんで、俺に取り憑いた死に神を、今日こそ追っ払ってやってくれ!!!!!!!』
                     
         ・・・ちょっとカッコ良すぎだろ?

          三人の黒服男がやってくる  完




2004.04.09(fri)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第十二章 卒業式

 次の日もその次の日もそのまた次の日も・・Nはアホみたいに学校に現れ続けた。学校にいない日はパチンコかゲーセンかたまり場のファーストフードに行けば、Nは必ずと言っていいほどそこにいた。

 やがてNは自身の望み通り、みんなの人気者になっていく。すごい早さで。サッカー部は新守護神キーパーNの加入によって、無名の公立高にしてはかなりのレベルにまで大会に駒を進めるようになったし、かといって部活一辺倒ってわけでもなく、僕らのような進学組からあぶれたやつらが引き起こす山火事トークにも、上質の酸素を供給し続けるナイスな奴であり続けた。ちょっと気のいい冴えた女の子の間からは「N君かっこいい」なんて声もあがっていたが、そっちの方はどうだったんだろう?なんだか成りゆきにまかせていたみたいだったな。

 僕はといえば、エレキギターを手にいれて、まるで世界が揺れてるんじゃないかってぐらいの爆音で、ロックンロールバンドでギターをかきむしっているというハイスクールライフを送っていたんだぜ、べいべ。センキュウ。ミュージック・イズ・マイ・ワイフ!オイェ−!演奏自体は・・なっちゃいなかったが。ハートだけはいっちょまえだったな。そういえばNをボーカルにむかえて、ザ・ブルーハ−ツのコピーバンドで学園祭に出演したことがあったな。あいつは本物のヒロトみたいにぴょんぴょん飛び跳ねて、動物的なカンでオーディエンスを湧かしていたっけ。歌のほうは・・これまた、なっちゃいなかったが。

 しっぽがたまに生えてこようが、黒服男が憑いていようが、NはNであり、もともとかっこいいのだ。(歌はへただけど。元・広島カープの正田に似てるけど)サイコーに。「つぎ風邪をひいたら死ぬかもしれない」という、おっそろしい爆弾を抱えながらも、ひょうひょうと今を輝かせ、決して他人にそのことで弱音を吐いたりしないやり方は、16才ルールのそれからしても、えらくクールな野郎だぜ!あいつこそはリアルマンだ!ってことになる、のだ。

 僕らの煙り立つたまり場のファーストフードでは、ポーカー賭博がはやり、ロックギターがはやり、カンニングペーパー作りがはやったりしていたけれど、時がたつにつれて、驚くべきことにというか、恐ろしいことにちゃんと受験勉強がはやったりするようにもなっていった。Nが歴史を勉強しはじめたころ、僕は美術室で絵を描きはじめ、以前より僕らは頻繁に授業をさぼることもなくなっていった。やがてたまり場に立つタバコの煙突の数も、一本消え、二本消え、三本消え、そして誰もいなくなった。

 僕は受験シーズンでクラスの人影もまばらなある日、久し振りに授業を抜け出して、ひとりで誰もいない「橋の下スポット」へ行った。高速を行き交う車をぼんやり眺めながらタバコをゆっくり吸ったあとで、僕はさようならと言った。そのあと美術室で日が暮れるまで絵を描き、そのあとまたひとりで誰もいないたまり場へ行き、くそまずいハンバーガーをコーラで流し込みタバコを吸った。灰皿ごと全てをくずかごに放り込み、誰もいない殺風景な店内を見わたして、僕はまたさようならと言った。それは・・僕にとっての卒業式だった。自前の。

 その冬初めて降った雪の日に行われた、学校の本物の卒業式は悲しくもなんともなかった。これまた16才の鉄壁のルールに従い、みんな必要以上にそっけなく別れた。なぜなら悲しいそぶりを見せた奴は、やっぱりチキン野郎だから。Nは校門で「ハル、んじゃまた遊ぶべーぜ。」と言って僕を追い抜いて行ってしまった。雪のなかを傘もささずに。まるで物語の主人公みたいにNは消えていって、のこされた画面には、まるで超大作映画のエンドロールみたいな雪が終わることなく続いた。残された名脇役の最後の台詞は・・
「傘ぐらいさせよ。風邪ひくぜ」
ってことにしておこうかな。それとも、もっとハードボイルドな俳優ならば・・・

「さらば友よ」
とタバコをクールにキメられるんだろうか?




2004.04.03(sat)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第十一章 東名高速道路の落日。

「あれ以来、おれは風邪をひいてない。いや、少しはそりゃあひいたことはあったよ。だけど、いくら熱がでても、咳がひどくても、時にはふらふらの状態でもぜったいに!寝込む
ことはなかった。学校も休んでない。だから中学じゃ皆勤賞で表彰もんさ。はは、すげえだろ?あいつらに感謝しなくっちゃな」

 まるで悪魔みたいな奴らだな、と僕は言った。
「いや、あいつらは悪魔なんかじゃないよ」とNは言った。

 Nはそのまましばらくずっと黙っていた。雨はもうとっくにあがっていて夕日があたりを照らし、さっきまでとは別世界のシーンを作り上げていた。東名高速の橋の下を通るたびに、白のセダンや、銀色のワゴンや、運送用の大きなダンプカーが、オレンジ色の光を反射させてキラキラ光ってここを通り過ぎていった。僕は今、ふとここにある太陽とこの世界のことを思った。綺麗な眺めだなーと思いながら。今からこのタバコを一本すう間にあの街灯の影がどこまでこっちに延びてくるだろうかなんて考えながら。一日のいろんな苦しみや悲しみは、この時間帯に太陽がぜんぶ光で塗りつぶして、きれいなものに変えていくんだ。だから、それでも癒えない悲しみや痛みや恐れなど、本当はありはしないし心に抱く必要なんてないのさと、落日はそう言っているように思えた。

「あれは死に神なんだよ」
Nが言った。

「今話してて、分かってきたんだ。あいつらは悪魔なんかじゃない。ありゃあ死に神だよ。おれはあいつらの一人をぶっ叩いて、仕留めた気になってたけど、あいつらきっとまた三人でやって来るぜ、仲良くさ。だって死に神が死ぬなんてありえないわけだから。死に神を葬るのは、ちょっと無理があったかなあ。くそう!おれはあいつらには勝てなかった。まあいいとこ引き分けさ。だからたぶんもし今度、万が一にでもあいつらに出くわしちゃったら・・おれはアウトだな。あいつらの言う通り、おれはあいつらにもってかれちゃうんだろう。もしくは、パターでボコボコにされるかだろうな。ま、どっちにしても死に神のやりそうなことだぜ。たぶんこっちの世界じゃあ、それは、死ぬってことなんだろうなあ。あーあ。リーチかかってやんの、おれ。しかも死に神リーチ!ついてねえなあ」

「はは、死に神リーチかあ」と僕は笑った。
「そう。死に神リーチ」(N)
「しかも同時に三人から。おまえ人気あんなあ」と僕。
「人気者だろ?うるせえよ。おまえだって数学リーチかかってんだろ!ああ・・・でもよりによって変なのに気に入られちまったなあ。女にはたいして人気ねえのによお。でも・・おれは・・やっぱこっちの世界の方がいいなあ。離れたくない。まだなんにも、何もしちゃいないのに。・・おれは、できることなら、こっちの世界で人気者になりてえよ。おれだって、何かでちゃんと人に認められたい。」

 なれるさ、と僕は思った。運命なんていくらでも自分で変えられるんだぜと、本気で。それが、たとえ死に神に取り憑かれた運命だったとしても、それは自分の手で変えていくことができる。いつかきっと。なぜなら今日一日の苦しみは、すべて落日の時によってオレンジ色に塗り替えられ、明日はまた新しい太陽が昇るのだから。もしそれがただの気やすめで、きれいごとだと言えてしまうのだとしたら、人はなぜこんなにもオレンジ色の落日に心を動かされるんだろう?なぜ夕日はこんなにも人の心を溶かしてゆくんだろう?

 どちらからともなく僕らは、行こうかと言って立ち上がった。スタンド・バイ・ミ−の映画みたいに何も語らず無言のまま、学校へも立ち寄らずに駅へと向かった。(あの映画のなかで、少年達は死体を発見した後の家路までの草原の道のりを、何も語らずに歩いていく。僕はあのシーンが好きだ。ちょっとかっこ良すぎるかもしんないけど、あのシーンにひけをとらないくらいあの時の俺達はかっこ良かったんだぜえ。ふっ)

 例えば、今日一人じゃ不安だろうから家泊まり来いよだとか、何かあったらすぐ電話しろだとか、そういったことは言わない。そう言えばNのピンチは回避できるだろうことは分かっていても、言ってはならない。それは16才の男子ルールだ。たとえ身の危険が迫っていても、それを回避する方法が分かっていたとしても、16才の男子はカッコつけるやり方をえらぶ。意外にハードボイルドなのだ。(最近の16才はどうだか知らないけど、当時は)とにかく、今僕は、彼に手を差しのべてはならない。Nもここで泣きを入れるわけにはいかない。チキン野郎になりたくはない。たとえ死んでもカッコいい名誉を選ぶという、16才の男子なら誰でも知ってる鉄のルール。(たいていの大人はそれを見て「青いねえ〜」と馬鹿にする。でもいくつになっても青い部分をとっておけない大人なんて、たいした奴じゃないんだ。)

「じゃあな。明日こんじょーキメて学校こいよ」
「ばーか。誰が休むかよ」
 そう言って僕らは別れた。




2004.04.03(sat)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第十章 壮絶なバトルの断片

 『三人か。』Nは目をぎゅっと閉じた。さっきから二人の黒服男がNの顔を覗き込んでる。(もう一人はいつものようにドアの前で見張りだ)心を読まれないように、表情を悟られないように、布団のなかのゴルフクラブが見つからないように、Nはかたく目を閉じて考えた。
 三人か。一対三。圧倒的に不利だな。しかも相手は大人だ。それもただの大人じゃあない・・あいつらの力の強さはいやというほど思い知らされてる。こいつらをまともに相手にしてもかないっこないのは分かり切ってる。
 どうする・・どうする・・

そのうち、Nの顔を覗き込んでた二人の黒服男は何やら相談をしはじめた。今焼いているステーキの焼き具合を相談しているシェフのように、りんごの腐っていく過程をつぶさに観察していく絵書きのように、モルモットの研究の過程を議論する白衣の研究員のように。ごにょごにょ・・・

 そうだ!あいつをぶっ叩こう!Nはそう思った。いつもドアの前で見張りをしているあいつ。あいつはいつもおれに対してはあまり手を出してこない。三人の中じゃあいつの力が一番弱そうだし、まさかおれが攻撃に転じようとするなんて思ってないだろう。そういう意味で、あいつには・・隙があるんだ。他の二人は今おれから注意をそらしてる。チャンスだ。
あいつをぶっ叩こう。他の二人に殴られても蹴られても、あいつが動けなくなるまでこのゴルフクラブでぶっ叩こう。一対一ならあるいは・・勝てるかもしれない。そう、標的はあいつだ。
 「よし!」Nはゴルフクラブを振り上げ立ち上がった。

次の瞬間Nは道のまん中にパジャマ着のまま立ってた。ゴルフクラブ、パターを頭の上に振り上げたまま。普段見なれた日常の通学路だ。遠くにいつものスーパーマーケットが見える。遠くに母親らしき人影も見える。誰かと笑って世間話をしているみたいだ。ちがう、ここじゃないんだ。
 でも、わかってる。・・・そうだよ。 ここでいいんだ!Nは道のまん中でからっぽの空からパターを思いっきり振りおろした。
 「ビュウッ!」

・・まるで粘土を思いきり殴ったような感触がした。

 次の場面でNは自分の部屋に立ちつくしていた。傍らで見張りの黒服が血を流して倒れている。返り血を浴びたNのパジャマは真っ赤に染まってドロドロになってた。パターは見張り役の頭にヒットしたらしく、顔からすごい量の血を流している。ぶるぶると震えながら僕の顔を見上げる見張りの黒服の顔が、お父さんの顔になったりお母さんの顔になったりお姉ちゃんの顔になったりするのをくり返した。怖くなってNはまたぎゅっと目を閉じた。背後で他の二人の黒服がNにとびかかろうとする気配を感じる。
 「うわああああ!」
 かたく目をとじた暗闇のなかで、Nは何度も何度もパターを振りおろした。振るたびにパターは「ヒュッ」という音をたてて鳴き、何度もくり返してくうちにそれは何かの旋律のように聞こえた。その旋律がワンフレーズ奏でられるたびに、パターが粘土にめり込んでく感触をNは感じていた。
『ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!
     ヒュッ!ヒュッ! ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!』

 いつしか旋律が止んだ。手にパターがない。こいつを手放したら勝ち目はないからと、あんなに強く握っていたのに!

 Nは閉じていた目を見開いた。また次の場面でのそこには、今度は何にもない暗闇が広がっていた。目を閉じても開いても、黒。くらやみ。黒闇。くろやみ。風がふいてる。強い風が一定方向から激しく吹く暗闇。
 声がする。いや、声はしない。声ではないなにか。それがNの意識のなかに入ってくる。
 『次だ。』
 『次だ。
   次は
                       

                      おまえをもらう。』

 目が覚めたときNは布団のなかにいた。パジャマには返り血のあとはなかった。あんなにおびただしい量の血が床に流れたのに、それもない。父親の部屋。いつもの黒服来訪時に比べたら、今日はまるで何ごともなかったかのようだ。ただ違うのは、朝は閉まっていたはずの部屋のドアが大きく開け放たれていたのと、閉まっていたはずの窓が開いていて、強い風がビュービュー部屋に吹きこんでいたってことだけ。それと、布団の中に隠し持っていたパターが部屋の隅にころがっていて、少し曲がってる気がするって、たったそれだけ。

 しばらくして、母親が買い物袋をさげて帰ってきた。

 Nはその日以来、ずっと風邪をひいていない。




2004.04.03(sat)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第九章 Nのお父さんの血統

 「これは推測なんだけど、キーはきっと親父なんだろうな。ごく一般の、ふつーの親父なんだけどね。」
とNは言って笑った。Nがいつだったか風邪をひいた時に、たまたまお父さんが家にいたことがあったらしい。家に誰かがいる時は、三人の黒服男がやって来ないと知っていたNは安心して自室で眠っていた。だけどやつらはやってきた。それも、普段より勢いを増して。

 その日はひどかった。三人の男たちは、Nに対してひどい暴行を加え、Nを気絶寸前まで追い詰めた。いつもよりも力が強く、なんだか彼等は楽しそうにさえ思えた。そしてNが当時一番大切にしていた、買ってもらったばかりのラジカセをとりあげ、(これがおまえの
一番大切なものか?と言ってたみたいだった)そしてテープを再生し、早回したり、逆再生させたりして、当時ファンだったナガブチのテープをねじ切って壊した!(その後もそのラジカセは回転数がおかしい。くそー!ナガブチ好きだったのによー!といってNは照れて笑った)
 たまりかねてNはお父さんに助けを求めた。命からがら自室を抜け出して、一階のお父さんがいる居間へ。Nは走って走って階段を駆け降りた。あいつら絶対追いかけてくる!

 居間のドアの隙間からほんの一瞬父親が見えた時、Nは心のそこからほっとしたという。よかった、お父さん、出かけてなかった。お父さんならあいつらをなんとかしてくれるかも知れない・・ドアのむこうにお父さんがいてゴルフクラブを磨いていた。
 はやく行かなくちゃ!
(・・お父さんが黒い服を着ている。あれ?ゴルフクラブを磨いてる手も背中越しに見える首すじも耳も、みんなまっくろじゃないか!)

 うわー!まずい!まずいまずい!Nは居間をスルーしてトイレに駆け込んだ。
 まずい!まずいまずいまずい、まずい!・・・便器にしゃがみこんだところでNの記憶は飛んだ。

 次の瞬間、Nはパジャマ姿のままで近所のスーパーマーケットにいて、母親のスカートをぎゅっと握りしめていたという。

「だからさ、親父なんだよ。たぶんだけど親父の血統のなかの誰かが、おれにこんなことをするんだって、何か感じたんだ。母ちゃんは関係ない。母ちゃんがいる時は、100%おれは安全だ。刺客を送っているのは、親父の方の血統の誰かだろう。なんでだろう、無念でもあったのかな・・だけど、おれは負けない。負けたくなかったんだ。だからあの日、あいつらと闘おうってきめてわざと風邪をひいたあの日、おれは親父の部屋でねた。母ちゃんにこっちの部屋のほうが日当たりがよくて気持ちいいとかなんとか言って布団敷いてもらってさ。
あいつらと闘って、あいつらに勝つことで、おれは自分も助かりたかったし、親父も助けたかった。あんな親父二度と見たくなかったからさ。
 そうしてその日の朝・・おれは待った。布団のなかでゴルフクラブを握りしめて、親たちが出かけるのを、三人の黒服男がやってくるのを・・おれは待ってたんだ。」


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2004.03.22(mon)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第八章 黒服男は幻想か否か。

 最初この話を聞いて僕は、その三人の黒服男とはNがつくり出した幻想なんじゃないかって思っていた。それはNの話を疑うという気持ちよりはむしろ、幻想であって欲しいと願う心理が働いていたからだと思う。だってそうだろ、現に今、友達はこうして苦しんでるんだから。もし仮に奴らの存在は、NがN自身で作り上げた空想の産物なのだとしたら、その苦しみはNに十分な精神的ケアをしてやることで回避、あるいは消滅させることができるはずだ。(そのケアは例えばカウンセリングのようなものなのだろうか?それともストレス解消?)とにかくそこには原因も解決策もある。Nに心の欠落があったとして、その欠落が黒服男を生み出すのだとすれば、その心の欠落を見つけて、埋めてやればいいんだ。だけど、もしそうでないとしたなら・・これはすごく厄介なことになる。
 ここで考えられるのは、この男達は、この世から来た人たちではなく、(だってそうだろ。この世の人たちだったら警察沙汰だよ。2メートル近い男達はそれだけで目立ち過ぎだブ−)どこか時空を超えた場所からNに放たれた刺客のような存在ってことになる。手の施しようも太刀打ちの仕方も分からない、原因も解決策もない、非常に厄介なしろものってことに。
 分かる人には分かる、見える人には見える、というたぐいのものではあるにせよ、それはれっきとして「実在」するものだ。実在し、風邪をひくとやってくるという、れっきとした形をとって表れる刺客だ。少なくともNの場合は、そっちのケースにあてはまるんだと思う。N自身もそう思っていた。
 「これは・幻想なんかでは・ないんだ」と。
 だからこそ、なんとかしなくちゃいけない。しかもすぐに。だけど・・幻想でないだけに、彼等はなぜやって来て、どうすれば現れなくなるのかが・・・分からない。原因と解決策が。見つからない。

 リアリストならば、それらもすべて幻想だと言い切るだろう。だけど被害は実在する。殴られたあざは一週間たっても消えない。これをどう説明する?自分では角度的に不可能な背中のひっかき傷は?爪ものびてないのに?小学生ひとりではとうてい移動することすらできない本棚が見事にひっくり返された。これをどう解釈する?買ったばかりのラジカセがすごいスピードで再生されたり、逆回転で再生されたりして、テープがねじ切れた。これについては?新品の目覚ましが同様にして壊れて止まった。原因不明によって壊された部屋のものの数々。

 これは?・・これは?これは?これは?

 ひょっとして、これらはNが家族の関心をひきたいがためにやった自作自演行為?それともNはどうしようもないほら吹き?もしくはNはアル中?夢見心地のヤク中?幻覚から目覚めて、男達が去ったあとで、部屋のすべてが元通りっていうなら話はわかる。だけどそうじゃない。それをどう説明する?

 黒服男は幻想か否か?答えよう。「僕には分からない。」それが、「スーパーコンピューター!」と当時うたわれた(うそだよ)僕の脳細胞がはじきだしたたったひとつの答え。




2004.03.20(sat)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第七章 N、さらに語る。

 それでもさあ、まだおれが小さかったころは、うまくやってたんだ。
 その、三人の黒服男たちとは。風邪で寝てるじゃん、んで親が出かけるじゃん?やっぱ一人でいると退屈なんだよ。そうするとさ、あいつらが来て一緒に遊んでくれたりとかしてさ。だから、ワクワクしてた。
 風邪をひくと、おれはあいつらのことを、待ってた。
 だけど・・いつぐらいからかなあ。あいつら、おれにいたずらするようになってきたんだよね。

 はじめは、つないだ手をはなす時におれの手をつねったり、頭を撫でてきたついでに髪の毛をひっぱってきたり。それで、俺が嫌がるとさ、あいつらおもしろがってどんどんどんどんエスカレートしてくるんだ。頭を小突いてきたり、後ろから蹴飛ばしてきたり、首を締めてきたり。
 最初はわけが分からなかった。だけど、やっぱむかつくじゃん?そんなのさ。それで「やめろ」みたいなことを言うんだけどさ、声が・・出ない。そしたらあいつら、ますますおもしろがって、挙げ句の果てには部屋中のものいっさいがっさいひっくり返しちゃってさ、もうめちゃくちゃ。帰って来た母ちゃんにすげー怒られたよ。もちろん誰かが帰ってくる少し前にさ、やつらは気配を感じてどっか消えちゃうんだけど。

 おれは親には言わなかった。なんか言っても信じてもらえそうにないし、それに何て説明すればいいのかわかんないしさ。それに、これはさ、これは、人には言っちゃいけないことなんだって、無意識に感じてたからなのかもしんない。だから、このことを人に話すのは、これがはじめてだよ。

 そんで・・おれが小学校5,6年の時かなあ。おれ、決めたんだ。あいつらと闘おうって。今度あいつらがやって来た時に、おれがあいつらを追っ払ってやるってね。もう風邪をひくたびにこんな目にあうのはうんざりだったし、もうたくさんだ!って思ってね。それに、おれが成長するごとにやつらの力がはんぱじゃなく強くなっていって、もう手に負えなくなってた。しゃれになんねえよ、だったらおれがあいつら始末してやる!って・・そう思ったんだ。そんでおれは・・ある時、わざと風邪をひくように仕向けて・・(結構大変だったんだぜ!それはそれでさ)・・・学校を休んだんだ。休んだ。ちょうどこの時期だよ。夏休み前。一学期が終わるくらいの・・

 雨はいくらか小降りになってきていた。
 学校のベルが遠くから聞こえた。このチャイムは古文が終わり、たいくつな数学の授業がちょうど今始まったことを意味していた。たいくつな、うなぎ犬の数学。因数分解ですら、もうすでにギブアップなのによ・・
 だけどそれらの日常は、今の僕らにとっては、すでに遠い世界の遠い次元のことのように思えてならなかった。僕らの教室はどんどんどんどん小さくなっていって、今では手をのばしても届かない、戻れないところにある。それは、暗い夜道にポツンと一軒だけ光る、誰かの家の灯りみたいに、なんだかやたらとやさしくて、あったかい灯りのように見えた。




2004.03.09(tue)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第六章 N語る。

 「 おれさあ、ちっちゃい頃体弱くて。しょっちゅう風邪ひいてたんだ。そんで学校休んで部屋で寝てると、いつも三人の大人の男の人が部屋にやってくるんだ。黒い服を着た、三人の黒服男。うちさあ、親共働きだからあ、学校休むと俺いつも独りだったんだ。で、親が出かけるのを見計らって、あいつらいつも入ってくんだよね。部屋に。

 ものごころついた時からずっとそうだったからさ、別に不思議だとも変だともたいして思わなかった。ああ、なんだまたかよ、って、そんなかんじ。あいつらスーツみたいの着てんのかなあ、とにかく黒の上下で。シャツも靴下も、みーんな黒。んで顔がさあ・・これがわっかんないんだよ。影みたいになってんのかなあ。ただ・・目のとこがさ・・落ち窪んでて、顔んとこよりさらに黒いんだ。なんか・・なんかずっと見てるとさ、穴にすいこまれてくような気がすんだよね。やっぱさ、それはやっぱ・・さすがに怖い。

 あいつら、三人でいつもやって来て・・すげーでけーんだよ。三人とも。でかいっつうか、縦に引き延ばされたかんじに・・長いんだ。ふつうの大人をそのまま縦に万力かなんかで引っ張ったみたいに、やたら細長くて。だから背丈は天井すれすれまであるかなあ。んで、ひとりが部屋の入り口ドアに立って、あとの二人がベッドの両端に立ってさ、その細長い体をひゅっと折り曲げて・・おれの顔をさ、覗くんだよ。ものすごく顔を近付けて、ベッドに寝てるおれの顔を・・見てるんだ。ふかーい穴の底みたいな目でさ。まるで何かを品定めするみたいに、かなり慎重に、まずおれの顔を見るんだ。隅から隅まで、何かを鑑定するみたいに、じっくりとね。

 んで、それが終わるとさ・・・・」  

 僕は続きを待った。
 「・・・・・・・笑うんだよ。『ケケエッ!』って。」

 そう言ってNは『ケケエッ』と笑った。




2004.03.01(mon)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第五章 雨降り、N震える。

 ザ−・・・ザーーーー・・・
 雨は突然ふりはじめた。ひと粒ひと粒の雨粒は驚くほど大きくて、雨が当たるたびに僕らは「いてっ!」と言ってしまうほどだった。僕はNに誘われて午後の授業を抜け出し、新しい秘密の隠れ場、タバコスポットにやって来ていた。
 そこは東名高速道路が下に通る陸橋の、ちょうど橋のたもとにある場所のことで、
ちょうど橋の付け根にもぐりこむと格好の身の隠し場所になる。
 名付けて「橋の下スポット。」
学校から走って5分。フェンスを乗り越え10秒。ここなら誰にも見つからない。僕等の隠れ家は誰にも想像もつくまい。学校の他の生徒にも。先生にも。
 それはいつにも増して洗練された、スマートで完璧な脱獄だった。

 その日の犯行は二人だけで行われた。マコトとオザは学校には今日は朝から来てない。きっと駅前のいつものバーガーショップで、油を売ってんだろう。バイトの大学生がかわいいとかなんとか言ってたな。出席日数平気なのか?あいつら。
 バリは今日は脱獄には誘わなかった。あいつは太ってるから、フェンスを乗り越えるのに時間がかかりそうで命とりになる。びびりだし、万引きだってへただ。ウエちゃんは最近勉強したい!とか訳わかんないこといいだすし。やっぱ好きな女ができると違うのかな。まあ、すぐどうせ飽きるんだろうけど。塩くん達は・・・ほんとは授業さぼったりするようなタイプじゃないしなあ。

・・それにしても、まっずいなあ。制服びしょ濡れじゃねえか。こりゃあ、古文に続いて次の数学もパスだな。授業さぼって外にいってたのも、こんなびしょ濡れじゃあばればれだもんな。でも数学はうなぎ犬かあ。(小泉先生のこと)あいつは担任だからなあ。最近あいつ勘付いてるっぽいんだよなあ。俺らに最近やたら口うるさいし。でもあいつ無表情だから読めねえんだよなあ。まっずいなあ・・・
・・・・・ザ−ーーーーーーーーーー・・・

『・・まずいな。』

 Nがおもむろに口を開いた。あれ、そういえばこいつ、さっきから全然しゃべってないや。それにおまえ、唇真っ青じゃねえか!

『まずいな。まずいよ。このままじゃ、俺、風邪ひいちまう。もし・・もしも今度風邪ひいたら・・俺、殺される。絶対!今度こそただじゃあすまない。あいつら、あいつらまたやってきて、今度こそ俺を殺しにくるよ!なあ、どうしよう。俺、まずいんだ、いま風邪ひいたら・・・サベエよ。・・・おれ明日死ぬかもしんない。』

 Nの尻からしっぽが生えはじめた!(ような気がした)N特有の第六感が、切れかけた蛍光灯にまた明かりを灯させようとするみたいに、目覚めようとしてるのが分かった。Nの異常なまでのまばたきの回数は事態の不吉さをよりいっそう色濃いものにしていた。

 パチ、パチパチパチパチパチパチ・・  パチン!

 Nのまばたきが止まった。

 これはたいへんなことになったぞと、僕は思った。




2004.02.20(sat)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第四章 ハイスクール

 高校一年の一学期が終わろうとしていた。初夏。空が青いってことだけで、「きっとこれから何かがはじまろうとしているんだ!」って100%信じきれるくらい、16って歳は純粋で、単純で、そしてバカだ。ピュアバカ。どいつもこいつも、そのハートにエネルギーを持て余して破裂寸前!自分にはきっとすごい何かができる!ってみんな思い込んでいやがる。本当は顔ににきびを作ることぐらいしかできやしないのに。16男子。つくづくバカだな。はは。でも大好きな歳だ。みんな何かが起きやしないかって、うずうずしてるんだ!

 そんな僕らの間ではやっていた遊びがあった。それは「授業をさぼってタバコをすうこと」・・くだらねー!でも、16男子のすることなんて、そのほとんどがくだらない。
 はやらせたのはN。主犯N。Nはいつも何かをはやらせる。スリル満点でとびっきり上モノな遊びだ。持て余したエネルギーを発散させる、うずうずを満たす何かは、たいていNと一緒にいることで手に入った。授業を先生にばれずにうまくさぼりタバコをすうという、停学と背中あわせのスリルと引き換えに得た開放感は、クラスの好きな女の子の話や、誰が誰とつきあってんだってよとか、下ネタとか、将来の夢とか、それからやっぱりまた・・片思いのクラスの好きな女の子の話を・・ものすごい勢いで加速させた。それはもう、誰にも止められない山火事が、世界を覆うみたいに。

 コーラを飲みながら、タバコをすいながら、「食後の一服がやっぱ最高だよな」っていいながら、(そういえばあの台詞は、いつから言わなくなっちゃったんだろ?まあいいや)真昼の脱獄囚たちは、放火魔と化して、くだらなーい話の炎を燃やすことで、世界を征服した気になってたんだよ。バカなことに。本気で。

 「よー。ハル(これ、僕の高校時代のあだ名ね。)今日の午後ってさあ、あれだべ?古文のやまじいだべ?(山崎先生)ぬけるべ。(さぼる)さっきさあ、東名高速の橋の下にいいタバコスポット見つけたんだ。行こうぜ!あすこなら見回りのみやじい(宮路先生)にも、おまわりにも見つかんねえよ!」

 その時はまだ、空はスカイブルーだった。はずだ。もしその日、これからものすごい豪雨が降ることを知っていたら、僕らは授業を抜け出さなかっただろうし、そしたら、この三人の黒服男がやってくる話を僕は聞くことはなかっただろう。
 だけど・・・・・
         ・・雨は降った。
                ・・それも、ものすごいのが。


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2004.02.16(mon)

本日のお買い物「ガソリン」

・・・・・
 購入して20ヶ月、やっとオレの愛車(二号サン)は走行距離1万キロを突破。それを記念して、一体今まで、そしてこれからどれくらいのガソリンを使っていくのだろうかと思い付いた。ただそれだけ。
 でも思い付いたのが1万キロの時点なので、これまでのガソリン総使用量はわからない。そこで「何とな〜く」出してみた。今まで給油の度に燃費計算はしていたので(ケチな趣味だな…)、そこで憶えている数値の平均値で走行距離を割れば、大まかな使用量が出るかな〜と。
 街中ばかり走っていると、すぐに信号にとっ捕まる。Stop & Goの繰り返しだ。実はこの作業が一番燃料を喰う。電力も気力も体力も、何でもそう。ゼロから数値を増やす作業が一番エネルギーを使うのだ。だから前の給油から次の給油まで、街中しか走っていないとすると、燃費は悪くなる。大体21〜25Km/Lぐらい。で、これが高速道路となるとノンストップに近いから途端に数値が良くなる。これが大体28〜30Km/Lぐらい。ちなみに林道に行ったら燃費は考えてはいけません。でも全く考えないでゴリゴリやってると帰りは山道を押して下るハメに…。さて話は戻って、今までの走行距離を10とすると、高速走行は4くらい。残り6が街乗りだとすると、4,000Kmを29Km/Lで、6,000Kmを23Km/Lで割れば良いのではないか?という理屈で出してみた。計算好きな方、ご意見お待ちしてます。
 給油はセルフスタンドが結構多い。始めの頃は給油口ギリギリまでえっげつなく満タンにしていた(ケチな趣味だな…)。しかし終盤に「溢れちゃうよー!」なんてチョロチョロ入れていると、何故か増えていく気がしない。実は蒸発しているのではと気付くまで30年掛かりました。ご静聴ありがとう。

昭和シェル石油 レギュラーガソリン 8.07L ¥762-(税込)

走行距離 今までに使ったガソリンの量 補 足
10,131.4Km 406.87 リットル 東京ドーム3,047,656.5分の1杯分



2004.02.15(sun)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第三章 タイムマシーンに乗る前に・・ 

 ここまで友人Nについて書いた文を読み返して思うことは、なぜ僕はこのことを今になって書こうと思ったかってことなんだけれど。もしかしてこれはNにたいしての私信みたいなもので、他人が聞いたら結構退屈なものなのかもしれない。「あの時こんなことがあったよなあ」というたぐいの昔話。だけど、こうも思う。あの時僕らは16才で、あの日僕がNから聞いたことで体験したキョーフの三人の黒服男を、今だったら退治できるんじゃないかってね。(くそー!今ならもう怖くねえぞ!?たぶん。)
 あの時、「誰にも言うなよ」って言われたから、僕はこの話に関しては沈黙を守ってきたけれど、もう時効だろう?こうやってここに掲載することで、誰かの目にとまり、外の空気にさらされることで、そうだなあ、例えば・・かさぶたみたいに、固まって、いずれぽろっと剥がれて、どこかへ消えて無くなっちゃうみたいに、奴らの存在を葬り去ることはできないものかと、そう思って。それが、きっと今もこの世のどこかで息を潜めてこっちを見ているあいつらを退治するための、僕が考えた策案。
 だから、この話には素敵なオチのようなものは存在しないし、求めないでもらいたいとも思う。長いし退屈だったら読まないでかまわない。
乱暴な言い方を許してもらえればってことだけれど。ね。
ただ僕はこの話を文にすることで、「かさぶた」を作りたいだけなのかもしんない。だって退屈な文だろ。かさぶたにするための、ただの昔話、おばけ退治話?だぜ。まあいいさ。話を先に進めよう。
 僕は、書きたいから、書くよ。

 時をさかのぼろう。僕は今、のび太ん家の机の前にいる。やっぱ手は震えてる。指先も冷たい。それに引き出しはちょっと僕には狭そうだ。だけど、それでも行ってみる価値はあるかな。
よーし!タイマーセット!時はさかのぼること・・えーっと、そう!
あれは15年前だ!




2004.02.10(tue)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第二章 Nのしっぽ

 こういうことを書くとNはただの霊感の強い奴と思われちゃうかもしれないけど、それだけってわけでもない。大地震の直前、Nは授業でプールに入っていたらしいんだけど、やっぱり記憶が飛んで、ふと気づくと水着ぱんつ一丁でグラウンドに突っ立っていたらしい。
 グラウンドからいろんなものが倒れてく風景をぼーっと眺めてたなんて話を聞くと、予知能力があるという風にも思える。サッカーなんかやったこともないのに、はじめてすぐにレギュラーのキーパーになって、アクロバット級のセービングで周囲のサッカー部員をおどろかせた光景を目の当たりにすると、ずぬけた運動神経の余波からくる察知能力のなせる技なのかとも思う。普段は赤点すれすれの成績なのに、徹夜で勉強した科目に関してはほぼ満点を記録したりしたことを考えると、頭の良すぎる奴にありがちな特異体質?でもそれだけじゃかたずけられない。
 いっとくけどNは嘘つきじゃない。誓っていいと思う。むしろ正直者なほうで、かくしごとはしないタイプだ。そんな彼曰く、
「いや、霊感は少ししかないよ」・・・だって。
おめー涼しい顔して言うなよ。そっちの方が怖えよ。って思ったのをよく憶えている。

 あいつは動物的カンが鋭すぎる。僕のなかではそんな解釈が一応しっくりくる。
 ふつうの人なら退化しちゃってる、しっぽみたいな何かがまだある奴。
 ふつうの人ならOFFになってるスイッチがまだちょっとつながっちゃってる奴。僕のなかではそんなふうにNの不思議な能力を位置付けるのが一番正しいと思っている。
 すくなくとも僕のなかでは。

 さて、三人の黒服男がやってくる話。これはNから聞いた彼の体験談で、おそらく僕が聞いたNにまつわる話のなかで一番不思議な話。
 うまく伝えられればいいんだけど。




2004.02.08(sun)
今日のお買いもの「姿見」  おか
 そりゃウチにだって鏡のひとつやふたつはありますよ。で、この際に家中の鏡の数を数えてみた。そしたら全部で15枚。結構スゲェ。何がスゲェって数え上げた自分が。ただね、よーく見てみると全身を映すものがひとつもないんですよ。あっ、ちなみに人んち行って背丈(168cm)以上の鏡があったら、その家は金持ち。これ俺ルール。ということはダンススクールは大金持ち。鏡張りの部屋なんて言ったら、石油王級大金持ち。これ俺ルール。というわけで姿見を買っちゃいました。【大きく・歪みなく・安い】を条件に渋谷を散々ぱら探し回りました。その結果、鏡面積と価格との比率でいうとこれが一番安かったわけ。なんと、1平方センチあたり1.25円!!…と、そんな頭の良さそうな選び方をするわけがなく、これはブツが届いてから計算しました。しかし、これでもう安心。今日は楽しいデート、髪をバッチリセットして出かけたけど服がパジャマだった!とか、大事な面接の日、ビシッとスーツでキメたが便所サンダル履いて来ちゃった!なんていう、
ケアレス・ミスともサヨナラだ。おまけに帰宅して思いもよらぬ時に自分が映ってビビるひとりきもだめしや、猫のひとり喧嘩を楽しむことも出来る。こりゃぁいいモン手に入れたじゃねぇかよ。えぇっ?兄さんよぉ。
無印良品 メープル材ミラー・大 ¥7,350-(送料+税)



2004.02.05(thu)
連載 三人の黒服男がやってくる。 はる

第一章

僕の高校時代からの友人でNという友達がいる。
彼は子供の頃のある時期からずーっと風邪をひいていない。

Nは僕が高校に入学して初めてできた友達で、なんていうか
ものすごく特殊なカンを持ち合わせた奴だった。すごく説明するのが
難しいんだけれど、平たく言ったら動物的カンが異常にするどい奴
って言っていいかもしれない。Nの記憶が飛ぶ時、(それは文字どおり
「飛ぶ」という表現がぴったりなんだけれど)彼は他人には見えないものを見、
聞こえない音を聞き、他人には分からないにおいを嗅いだ。
どういうことかというと、二人で電車の踏み切りを歩いてる時に
この世の人ではない人に声をかけられたり、(すれちがいざま
『・・よくわかったわね』といわれたらしい)通学中のとある公園を通ると
ブランコの音がなり止まなかったり、(その公園にブランコはない。
昔、4人乗りブランコによる子供の圧死事故があって撤去された)
夜中にどぶの強烈なにおいで目覚めたりといった具合に。
(まだNが生まれるまえの話。その土地は水はけの悪い土地
だったらしく、雨上がりの日にはどぶの悪臭がひどかったらしい。
当然、Nの高校生当時はどぶはないし悪臭もしない。はず)


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2004.02.04(wed)
随筆 サクライサン・ハルヤマサン伝説 おか
 そう、僕は忘れていた。いや、僕の自己防衛本能が忘れようとしていたのかも知れない。櫻井さん伝説によって覚醒してしまった記憶。そうか!あの時から既に伝説が始まっていたのか!…何年前かはもう忘れてしまった。ただこのバンドを組んで1年も経ってない頃…そんな感じで憶えている。相も変わらず梅津は敬語で日常会話をしていた。(あ、そうか。うめちゃんだけは一年後輩だったっけ………んっ!?)僕はふと、あることに気が付いた。
おか(以下 お)「うめちゃん、うめちゃん。」
うめ(以下 う)「なに?」
こういう風に返事をする瞬間、梅津は必ず笑顔だ。
「この人だぁ〜れ?」僕はジャイアン春山を指さした。
「春山さん。」
「この人だぁ〜れ?」僕はチェリー櫻井を指さした。
「櫻井さん。」
「じゃぁ俺は?」
オカッチ。
「・・・・・・。」
この瞬間の、なんというか、その、背中の血が逆流したのがわかった。
「も…もう1回行くぞ?こいつの名前は?」僕はゴリライモ春山を指さした。
「春山さん。」
「こいつは?」僕はフェルゼン櫻井を指さした。
「櫻井さん。」
「じゃー俺は?」
オカッチ。
そう答える梅津の笑顔には罪の意識が微塵もない。無罪。最高だよ。

今でこそ敬語で会話するなんて事はないものの、当時のことを本人にインタビューすると、
え?だってオカッチだもん。
乾杯。最高だよ。あんた。
今年もよろしく。佐々木が横浜に帰ってきて良かったな。
甘酸っぱい記憶 priceless(税込)



2004.01.21(wed)
今日のお買いもの「ペダル」  おか
 僕がドラムを始めて最初に買ったのはスティック。なぜかというと安かったから。一番単純明快なモノだったし。そして次に買ったのがペダル。学生時代、サークル内のドラマーの人はみんな持っていた。必ずと言っていいほど持っていた。だから僕も買った。多分定価で買ったと思う。後に友人のサ●ダー君がその半値以下で同型を手に入れていた時には
★▼△≧●◇※〒§★してやろと思った。そんなペダルを使い続けて10年あまり。気分一新という意味も兼ねて、新しく買っちゃいました。このペダル、知る人ぞ知る名機とほぼ同型。新品なんだけれども、定価\21,000(税抜)のところが、なんと\6,980(税抜)!どういうこと!?ようわからんのだけれども、これももはや生産終了モデル&最終入荷でうんたらかんたら……と店の人は言っていた。つまりよくわからないけど、安いですよってことらしい。
 使い心地は…「ん〜マンダム。」
PREMiER 254 Beltdrive pedal ¥7,329-(税込)



2004.01.20(tue)
さくらいさん伝説  はる
 今日は櫻井大介の誕生日だ。おめでとう。30台へようこそ。大介は櫻井サンとみんなから呼ばれることに少し抵抗があるみたいだ。他人行儀で。でも!俺から言わせてもらえばそれは違う。櫻井サンのその名称はやがて記号化し、そしてモテモテ男としての階段を一人歩きしてゆくことになるんだろう。いいなあ。例えばピアノの弾ける男の人は、櫻井サン系ピアニストと呼ばれるだろうし、(海の上の櫻井サン)どんな人が好みですかと問われれば、櫻井サン系かなあと答えるレディーもすくなくないだろう。(しょうゆ顔、そーす顔、櫻井サン)そうなるだろう。右肩上がりの景気は櫻井サン的伸び率と呼ばれ、野球のヒーローインタビューでは、゛今日の櫻井サンです!゛とじき呼ばれることになるだろう。そうだろう。そうなったらすごい!そうなれ!
 そしてモテたくもないのにモテてしまう、まるで課長・島耕作のように、オフィスの給湯室で
今日は誰が櫻井サンにお茶をいれるか?でじゃんけんをしている女子社員の姿が目に浮かぶぜ。俺には見えるぜ。櫻井サン、お誕生日おめでとう!いつまでもかっこいいピアノを弾いていてくれ。



2004.01.14(wed)
今日のお買いもの「今川焼き」  おか
 今日の夕方のこと。タバコが無くなってしまったので、家への帰りがけ、近所の文具屋にバイクを止めた。そこにある自販機でタバコを買おうとすると、文具屋の敷地の一角を借りた今川焼の屋台が。僕は知っていた。毎週水曜日には必ずそこにあることを。タバコを買いながら、もう決めていた。(小倉とクリーム2コずつだな…これで決まり。)メニューは色々あれど、やはり何事もシンプルに行きたいものだ。まっすぐ屋台の正面に向かい、「小倉とクリームを…」と言っている時に、とんでもないモノが目に入ってきた。【チーズ \100】しまった!チーズがあったか!と思うと同時にもう口走っていた。「…あ、あとチ、チーズ。」しかし今川焼屋には更に奥の手があった。【栗入り小倉 \150】……。しかも【期間限定!】…………ッ!!!!「ああっ。あとこの、栗入り小倉を。」もう完全におかしくなってしまった。頭の中は好きなコを目の前にした、あの状態に限りなく近い。「おいくつずつにしますか?」僕の気持ちを何も知らずに質問するオネェサン。メニューにズタズタにされた頭には、もはや機械的なことしか出来なかった。微かに記憶に残っていた言葉…「2コずつで…。」
 というわけで合計8コ。あぁそうですよ。全部食べましたよ。最高だよ。猫にやってみたけれど、ニオイだけ嗅いでどっか行っちゃいましたよ。

小倉・栗入り小倉・チーズ・クリーム ¥900-(税込)


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