「ろびのスパイス」 by ろび

第7回「『よりアイ』という風景」(2002.5.27)

まるで蜃気楼のようにあの風景が映し出される
あの日 円山公園は 自分の住む世界から逸脱した不思議な空間だった
雨あがりの北風は 湿った草木の香りを漂わせながら 彼らの歌声を運んでいた

翌日、現実の世界に帰り ふと 自分は一体どこにいたのか 分からなくなった

同じ空間を共有した人は 次いつ会えるか分からない「誰か」だという明らかな事実が
例えようのない虚脱感を生む
一方で 彼らのこと何も知らないのに 確実に通じ合っている
会ったことのない人々と奏で合い 至福の時を得る

フレンチトーストの甘さがやけに切なくて こぼれそうになる涙
だけど 彼らの歌声で その滴は行き場を失い 
かわりに 笑顔がこぼれている

あの刹那的な空間は何だったのか
そよ風は冷たくて でも 優しく私達を包んでいた
そして 歌えた喜びも幸せも 永遠に消えない蜃気楼となる