「きいの音楽室」 by きい

第4回 〜発声についての私見…その2〜 (2001.10.8)

発声というと、声を出すことだけに、
どうしても口の開け方や響きの位置にばかりとらわれてしまいがちですが、
一番大事なのは「呼吸法」だとおもいます。
歌うときに大切な「腹式呼吸」…みんなあたりまえに使っている言葉だけど、
そのイメージって十人十色なのではないでしょうか?
あと「胸式呼吸」なんて言葉もあって、
それは歌うときにはよくないっていわれてるけど、
僕の場合、実際にアカペラなど、マイクを使うときには、
腹式だけではなく、時々胸式も混ぜて使っているような気もするし・・・。
とにかく、今回もあくまでも私の私見として述べさせていただきます。

ポイントその2【腹式呼吸=胸の高さが下がらない呼吸

腹式呼吸って、声を出さないでただ息を出すだけだと、割とすぐにできるんだけど、
歌っている時にできるようになるためには、かなりのトレーニングが必要です。
そのポイントを簡単に説明します。

まず、姿勢。腹式呼吸というだけあって、腹筋を使います。
それも、前だけでなく、横も後ろも(あっ。後ろは背筋でした)
なので、筋肉を使う部分=腹巻きをする部分(普通の人はしたことないよね!)は緩めず、
軽く伸ばしていないといけません。
腹筋って、全くダラーンとしている状態よりも、軽く伸びている状態のほうが、
動かす(コントロールする)のに適しているのです。
おなかの周り(前後左右)をまっすぐ伸ばすと、はじめのうちはちょっと窮屈ですが、
背筋も伸びていい姿勢が作れます。

次に、両手で下腹部を触ってみてください。
場所は、親指がちょうどおへそのところに来るくらい。
その状態で、口を軽く閉じて息を「ふーーーー」とゆっくりとはいてみて…。
その時、おなかがゆっくりと引っ込んでいってる?
…引っ込んだ人は腹式呼吸ができてるってこと。
でも、もちろん実際に歌うときには、
いちいちギューッとおなかを引っ込めないといけないってわけではないんだよ。
要は、息をはくときに下腹部でコントロールできているか、
下腹部が使えているかどうかっていうこと。
トレーニングのときに、それが意識してできるかって言うこと。

さて、もっとわかりやすい「腹式呼吸」診断法があります。
もし、あなたが下腹部で呼吸をコントロールできているなら、
息をはきはき始めてからはき終わるまで、「胸の高さが下がる=胸が引っ込む」ことはないはず。

多くの人は、声を出し始めるとどんどん胸が引っ込んでいきます。
これって俗に言う「胸式呼吸」ってやつ。必ず胸に力が入ってます。
いろいろ言われているけれども、胸式呼吸は、遠くまで響く声、なめらかな歌い方には適しません。
だいいち、息が長続きしないんだよ。

息をはき始めたときに胸が引っ込まず、
逆にみぞおちの部分が前に出るくらいだと、完璧です。
この、胸が引っ込まない(=下腹でコントロールする)呼吸ができるかどうかで、
あなたの腹式呼吸レベルが診断できます。

さて、冒頭でも述べたとおり、実際に歌を歌うときには、
腹式呼吸にもレベルっていうか「さじ加減」みたいなものがあるような気がする。
僕も、トレーニングでは腹式呼吸に主眼をおいているし、
オペラのアリアなんかを歌うときには腹式呼吸オンリーで歌うんだけど、
マイクを持って歌うときには部分的に(無意識のうちに)胸式呼吸を使ったりしているような気がする。
そこらへんは、演奏を生で聴いてみて参考にしてみて下さいな。