Alfのバンド指導術あれこれ

2005.2.23更新

 ここでは管理人が独自に取り組んだバンド指導術に関してタラタラと述べてみたいと思います。「講座」としなかったのは、まあそんな大それた事を言えるほどではないのと、あくまで独学であり、正しい理論に基づいたものでない可能性があるからです。実際これらが完璧であったわけではないし、逆に完璧ならばスーパーバンドになっているわけですから。これらを理解した上でお読み戴ければ幸いです。
 これらは管理人の指揮者としての経験に基づいて書かれますから、全てのバンドに通用するわけでも通用しないわけでもありません。いろんな幅を持たせて書こうと思いますので、使える所だけ掻い摘んで下さっても結構です。ちなみに主として学生指揮者を対象にしていると思ってくださって結構です。あとは物事共通する事が多いのでかなり内容がかぶってくると思いますが、止むを得ない事ですのでご了承下さい。

 なお、読んでいて疑問のあった箇所、そして日常の疑問などを質問という事で受け付けます。受け付けた質問と回答はこのページ内に掲載致します。ちなみに質問者は匿名にします。メール掲示板にて受け付けますので、どうぞお気軽に。


イ.バンド指導で最も大切な事
 最初に大前提を述べてしまいます。それは「コンセンサス(直訳すると「同意」)」をしっかり持つ事です。勘違いして欲しくないのは、バンド全員が同じ事を考えるという事ではないという事。それではファシスト集団になってしまいますからね。要はいろんな方向性の人がいる中で、バンドとしての方向性を共有して個々を活かしながら成長するという事です。
 よくあるのが「上手くならない」という悩み。そういったバンド(個人もそうだが)は大抵漠然と「上手くなりたい」としか考えていません。どうしたい・こうしたいというのが無いのが最もまずい点です。そこでその案を提示するのが指導者です。その前提としてはその団員がある程度どんな方向性で持って行きたいかっていうのを持っていればなお良しです。でも指導者側からの提示に賛同するのも手だし、その方向に持っていくのも指導者の仕事です。
 僕が行なったのは、元来重厚なサウンド(≒重い、暗い)であり、大抵選曲ではロシアや東欧の物しか挙げられない状態を打破し、幅広い表現・選曲を出来るようブライトな響きを作り出す事でした。残念ながら、西欧までは行かなくてもそれによってイギリスという選択肢を作り出すのに成功しました。
 その際に実施したのが、基本的なサウンドの共有です。なんだかわからずみな吹いていた状態を改め、「いい状態」「悪い状態」を日々判別できるよう都度それをメンバーに伝えました。それによっていい状態の響きを常に再現しようという方向に進む事が出来たわけです。
 これはマクロな話なので代表例を挙げましたが、ミクロな点はこれから述べていくとします。全てはコンセンサスに回帰します。


ロ.指導のマナー
 指導者って言うからには偉いから何でもOKに感じる人は少なからず居るようです。でも信頼されなくてはこちらの言った事を聞いてもらえるわけがありません。いかに正しい事を言おうが聞いてもらえ無くては意味がありません。そういった環境を作るのも重要です。特に学生指揮なら尚更です。
 指導者は前に立つ訳ですから、出来る限りいろんなことを把握しておくべきです。まずは楽器の事。ある程度は各楽器の特徴などを掴み、吹けていない時などなぜなのか、という事を自ら考えられなくてはなりません。そして適切なアドヴァイスをすると言う事が出来ねばなりません。逆に知ったかぶりもよくなく、わからない事はわからないとキッパリ答え、専門家に質問する事を勧め、自分は次回答えられるように勉強しておくべきです。あとはプレイヤー個々の事情もある程度は把握し、何かの時は察してあげるのも大切です。


ハ.鳴らすという事
 大抵のバンドは鳴りません。あまりブレスをとらずに弱い息で吹いているからです。鳴らしている気になっているバンドも多いです。これは浅い息で力んで吹くことによって大音量を出した気になっている状態ですが、その場合聴いていて大変音が刺さって痛いです。
 共通しているのはブレスをきちんと取っていない、という事です。それがまず一歩目です。最も大事な事はたっぷり吸わせて、その息の流れを止めずにリラックスした状態で音を出させる事です。
 具体的には、2拍を8拍伸ばすつもりで息を吸わせて音価分で使い切らせる。8拍なら16拍分吸うとか。要は8拍伸ばす時に8拍伸ばす分しか吸わないからだんだん後半がよれよれになって響きを作る事が出来ないのです。でも16拍分吸っていれば、単純に半分で音を切るわけだから、安定したまま音を切れるし、響きを作る余裕も出来るわけです。逆にその息を16拍を響きを作る事まで考えて使っても8拍分吸った息よりは沢山あるわけですからたっぷり吹き込む事が出来るのです。
 その際、理屈も大事ですが実際それを体で表現しなくては恐らく伝わらないでしょう。思いっきり下から腕を広げ、「たっぷり吸う!」って言う意識を表現すれば自然とたっぷり吸う様になるでしょう。
 あとリラックス。大体普段と違う事を言うと体がこわばりますから、軽いストレッチをして物理的にも精神的にも緊張を解かせましょう。これを繰り返すうちに、本当に集中すべきところだけに気が行くようになり、良い緊張が生まれます。
 そして吸った息は止めない。止める事によって無駄な圧力の変化を生じさせ、吐く時に乱れた息になってしまう為音が乱れます。拍に合わせて吸う〜拍を一連の動作として認識し、無駄の無い息で楽に吹くようにさせましょう。
 ここまでがブレスコントロール(後で別に述べます)。そして出た音がきちんと周りと合っていれば倍音が発生し、良く響く(鳴る)という結果になります。
 ちょっと遠回りしましたが、鳴るというのはこういう事です。音量が出る=鳴る、では無い事がわかりましたでしょうか。


ニ.ブレスコントロール
 かなりの勢いでここに根本的問題があります。息の使い方一つで音色も変わりますし、表現も変わります。記譜上の記号もこれで吹き分けるわけですから。これのトレーニング法は「ハ」の後半で述べた通りです。基本は「温かい息」です。冷たい息というのは極端な表現でしか使いません。あと重要なのは息のスピードは変わらないということ。スピードを変えずに息の量でコントロールするのです。
 ちなみに温かい息は、寒い時に手を温めるときに使う「はぁー」っていう息です。これを整えて使うんですね。…つづく。


ホ.褒める事と叱る事
 学生指揮者という立場だと一番苦しむ事でしょう。あくまで自分は学生であり、演奏者と同じ立場。たまたま様々な要因で選任されたというだけですから、叱るってのが難しいんです。
 注記しなくてはならないのが、「叱る」と「怒る」は違うという事です。よく学生指揮者が感情のままに「怒る」姿を見ました。結構多くて、ただ出来てないから「怒って」居るだけです。それでは誰もついてきませんよね。ただ「怒る」だけではメンバーはどうすればよいのかわからず途方に暮れてしまいます。当然ダメならダメで「叱る」事は必要です。でも大体「吹けるようにしておいて」とか「ダメ」とかで終わっちゃう。だから学生指揮だと伸びないのです。でもだからと言ってそこで終わっても困るもので。きちんと「こうあるべき」「こうすべき」といったものがないと「叱る」ことができずにただ漠然と「怒る」ことになってしまうのです。指導者は楽器の根本的問題を必ず把握し、各々がなぜ出来ていないかを時には教えてあげなくてはいけないのです。
 まあ「怒られた」にせよ「叱られた」にせよ、奏者としてはへこみます。僕の場合、そういった場合にはなるべく練習後にアドバイスを兼ねて声を掛けるようにしていました。いつまでも萎縮されても困るし、そういったコミュニケーションも必要だからです。たまに泣き出してしまったり、俯きから戻れない子もいました。そう言った時には特に必要な行動だと思います。
 逆に褒めることもとても大切です。完璧と言う事はまずありえないのですが、必ず良い所と言うのは沢山あるはずです。そういったところをがんがん褒めると人っていうのはやる気を出します。そうやってひたすら長所を伸ばせば短所をもフォローするでしょうし、短所を補正する時間も創出されます。さらに褒めるというのは「これがいい状態」ってのをメンバーが知る良い機会です。良い状態を知ればどんどんその状態を維持しようとし、更にそれを越そうと言う意欲が出るのだと思います。
 褒めると叱る、この絶妙なバランスが大切なのです。


ヘ.リラックス
 「ハ.鳴らすという事」にも登場しましたが、これは非常に難しい問題です。まず指導者が前に立つと殆どは萎縮するんじゃないでしょうか。特に「先生」が前に立つとなると思います。ちなみに僕が前に立っていた時も結構怖くて萎縮していたそうです。
 そんな中で、みんなが学年関係なくリラックスして練習するために色んな工夫をしてみました。
 一つ目は笑い。60分練習時間があって、いくら演奏に集中していても限度があります。そこで僕はお笑いを見てくだらない事をたまに言ってみたりしました。最初は「べしゃりが長い」と某K幹事長にお叱りを受けましたが、その後はバランスも取れて、更によく掲示板にも登場するわるはしとかがそれにリアクションを返してくれたので、それなりの形が出来ました。緊張は時間的にも限度がありますから。
 二つ目は時間。前段落ラストにもあるように、緊張は時間的な限度があり、それは大体50分と言われています。それを目安に適度に休憩を入れる必要があります。練習中の中断休憩ってリラックスにも効果的ですが、その間のおしゃべりも大事です。「あそこつらいね」とか「ここどうなってる?」と言う会話ならなおさら効果的ですね。どうしても練習後にこの会話しても次回の練習までに忘れてしまいますから。特に練習回数の少ないバンドはこれ重要だと思います。
 三つ目は体操。これは練習開始前に各自でやったほうがいいです。肉体的に硬直している状態では息もきちんと入りません。しっかり柔軟等を行って、体をほぐしてリラックスさせる事が必要です。僕もよく「みんな疲れてるな」とか「眠そうだな」なんて時に、楽器を置かせてストレッチをやりました。これの応用と言うかバカと言うか、大声で叫ばせたりとかもしましたが。
 こんなところでしょうか。前に立つものとして萎縮させるだけの存在感は必要ですが、相手はアマチュア。時にそれが逆効果になることを良く知っておく必要がありますね。
 あと本番は、指揮台に上がったあと必ず全員に微笑みかけるようにしていました。文だけ読むと気持ち悪いけど、こうする事によって各自が大事なメンバーであり、みんなでやるんだっていう確認ができると言う事と、向こうとしても安心感が得られるのではないかと言う事です。実際こっちが微笑みかけるとみんなも少し表情が和らいでいました。無言のコミュニケーションです。


 まだまだ続きます。次回更新までお待ち下さい。あと順序がぐちゃぐちゃなので、その内整理しようとは思います。思ってはいます。実現するかどうかはタイムマシンかなんかで調べてみて下さい。

戻る TOPに戻る