Did you know this ?

Top Page  Profile ワンオフ My Custom KSR しのちゃ個展室

第九回: ボルトの腎性と強度区分
今回、KSRのセル化に伴う事故報告でワンウェイクラッチを3本で止めてるボルト (六角穴ボタン頭M6x20 緩み止め付 強度区分12.9 (材質クロモリ鋼、HRC42 )が破断する報告があり検証しました結果、以後の参考になればと思いお知らせします。
破断箇所が首下では無くねじ部で破断しており明らかなせん断破壊が起きております。これはケッチン喰らった際に逆方向へせん断加重がかかりボルトが折れた典型的なケースで自分的に問題点はタイカワサキよりこのボルトの図面を入手し強度区分12.9が判明。確かにボルト強度の中で最高強度となりますが当然硬度も高くHRC42.当然マイナス面で腎性が失われます。これがどういう事かというと今回の仕様のようなせん断加重がかかる箇所には腎性の無い超硬度ボルトは不適切という事です。硬度が高いと確かに引っ張り方向には強くなりますが同時にもろくなります。ガラスの硬度なんてのはメチャメチャ高く落としたら割れるのはその為です。
よってこの様な
あらゆる場合で激振動が発生する箇所の締結は強度区分8.8程度(HRC32)のボルトがBestでは無いかと推奨します。

この写真は破断面ですが青の箇所がケッチン喰らった際にせん断された箇所で黄色がその後の振動等にてちぎれた破断面です。これが何と3本全く同じ状態で確認されました。

第九回: 溶接についての基本知識

いゃ〜!すっかりこのページの更新、何か本職サイドの対策要求書書いてるみたいで忘れてました。
さて今回は金属の溶接基礎知識です。最も素人で溶接までやろうって人は稀でしょうがバイク屋でも
金属知識無いところは平気で異金属の溶接、やっちゃって「ほらついた。はいOK」なんて話も聞きます。
異金属の溶接なんてのはもっての外!実は鉄同士でも↓で勉強した鉄の種類が大きく影響するんですよ。
一般的に鉄と言ってもその含有炭素量にてS10Cから色々あります。SはSteel、10Cが0.1%の炭素含有量を
表します。溶接して良い組み合わせは炭素量が0.25%以下同士の組み合わせなら問題無いでしょう。
つまりS10C 〜S25C相当まで。一般的に板物のプレス品はSPCCと言われS10Cの低炭素鋼相当です。
ハイカーボンの鉄を溶接するとどうなるか?それはハイカーボンの鉄材と言うのは元々熱処理を施し高強度
を得る為の材料でそれを溶接すると溶接時の熱によって中途半端な熱処理が入った状態でようは熱処理不良
状態で非常に脆くクラック等により破損が起きます。又、よくプレートにボルトを溶接する時に有り合わせの
ボルトを溶接するバイク屋を見た事ありますが、ボルトが生の4T〜6Tぐらいなら問題有りませんがもしも
ボルトが8T 以上の六角ボルトだったり12.9のキャップスクリューだと大問題です。つまり既に熱処理入っている
ボルトにもう一回熱処理をしかも中途半端にやるようなもので溶接部でポッキリいく可能性が大です。
よって今回の教訓は
「溶接する前に材質を確認!出来なきゃ溶接せずに他の締結方法を」です。

第八回:基本的な表面処理の耐蝕性は?

皆さんもよくねじで黄色や黒くなっているのを良く見かけますよね。ここでは基本的な金属の
表面処理であるいくつかを説明しましょう。
クロメート皮膜: 生地(鉄)に亜鉛皮膜をつけその上にクロメート皮膜をかける。基本色として
          無色(青っぽい銀色。これが亜鉛の色)、黄色、黒、緑(オリーブとも言う)が
          一般的でその耐蝕性は塩水噴霧試験(以下SST)にて評価される。この試験
          はその名の通り、塩水を定期的に試験機にて吹き付ける試験でまずは白さび
          発生まで何時間、次の赤さびまで何時間は持ちこたえるといった試験です。
          白さびとはクロメート皮膜が破壊され亜鉛がさびて発生します。次の赤さびは
          亜鉛皮膜が破壊されその下の生地(鉄)のさびです。
          その耐蝕性は一般的ねじで白さび発生までが 無色=48時間、
          黄色=72時間  黒&緑=106時間となっています。

その他の皮膜 :全てを表記する訳には行きませんが車両用としては

          *ダクロ皮膜=灰色のダクロ溶液(六価クロムとアルミ微粉末のカタマリ)の
          中にぶち込みまるで塗装の様に皮膜処理する。これは耐蝕性が何千時間
          と高く更に以前に記述した酸洗いによる遅れ破壊を起こさない
          (酸洗い工程自体が無い)

          *ニッケル&クローム=ニッケル皮膜は銅皮膜の上にニッケル皮膜をつける
           物と生地にそのままニッケル皮膜をつける方法があり前者の方が耐蝕性に           優れている。ニッケルをつける事により素晴らしい輝きの光沢銀色となる。
           更にその上にクロム皮膜をつけたものがハーレー乗りなら誰もが知っている
           クロームメッキである。このクロム皮膜は硬度が高く磨耗しにくい特性が
           ある。一般的には見栄えする所に使用される。しかしニッケル自体はそれほ
           ど耐蝕性に優れているとは言えずSSTにて24時間程度にてさびが発生
           する。よって
           見えない所には耐食性重視のねじを使いましょう!
       
 しかし前述したようにキャップスクリューなんかをクロームメッキしないでね!
          

第七回:ねじってなんで締まって緩むの?
この一見単純な疑問に対して正確に答えられる人間が何人いるだろうか?この間、ある客先での事。プロの自分でさえ少し疑問に思えてしまった。
答えはズバリ軸力(垂直方向の力)!ならタッピンねじはどうだろう?タッピンねじはボルトナットと違い自身で雌ねじ塑性加工を施してします。摩擦?いいえやはり軸力なのです。
タッピンねじも各ねじ山にかかる軸力で締結を保持しているんです。
皆さん、知ってました?

第六回:マーキュリースイッチについて
久々の再会で
Vibesのジェームス関島氏にお会いしていて彼からの日本国内における盗難情報やライダー達の基礎知識を聞いて、もしかしたら役に立つのではと思い報告します。もし周知の事でしたら忘れて下さい。
時分の愛車には日本に帰国する前、日本は盗難多しと情報あり盗難防止用アラームシステムを導入してます。もし既に御使いの方々はほとんどのモデルが「振動センサー制御」で過敏に反応する迷惑を避けて反応を鈍くしてませんか?又はテストで蹴っ飛ばしても作動しなかったりするので「この機種ダメだ」とさじを投げていませんか?実は自分も前述の体験をしておりこれじゃあ、そ〜っと持ち出せば作動しないんじゃないか?と疑問でした。そこで自分が導入したのはArmy時代に使用していた「マーキュリースイッチ」。日本語役すれば水銀スイッチで簡単に説明すると2本の端子が密閉カプセル内に水銀といっしょに入っており、動くと水銀が両端子に接触したさい電気を通し作動させると言うもの。軍隊では時限爆弾等に使用していましたが、一般にはエアコンの調節ダイヤルにも使用されてます。こいつをアラームのスイッチとしてシート下にねじ止めし車体を傾けた位置でスイッチが切れている状態にSet. Up。これで直近くをダンプやH-Dが通っても絶対に反応せず、人が車体を動かした時のみ反応する完璧な物が出来ました。詳細を知りたい方はメールで入手ルートや自分の取りつけ方法等、回答します。

第五回:ねじについて(その1)
今回き〜ちゃんよりVibesバックナンバーの「ねじの知識」についてFAXを頂き、さすがVibes!良く取材してあると感心していたところ。今回は単車いじりとは直接関係ないが、皆さんの知識として2,3の情報。 先ずVibesもそうであるがねじはネジや螺子と記すのではなくてひらがなで「ねじ」と記すのがJIS規格により制定されていると知ってましたか?つまり専門分野に携わる文献では全て「ねじ」と成ってます。ちなみにこのHP上でも全て「ねじ」と成っているのは自分のコダワリです。よって

1)専門的には「ねじ」とひらがなで書きましょう。

次に皆さんはBoltとScrewの違い、御存知ですか?自分が言っているのは書き方とかじゃなくボルトという言葉の製品とスクリューといわれる言葉の製品の違いです。恐らく誰も考えた事すらないでしょうが,正式には明らかな違いがあるんです。その国によってまた、税関等のセクションによって多少違いはありますが、一般的には

2)ねじの頭をドライバ−等で回して締めるのがスクリューでナットを回して締めるのがボルトです。
それでアレンレンチで締める六角穴のソケットキャップはどんなにでかくてもスクリューと呼ぶんだな。これが。
ついでにもう1つ!ねじの頭を良く見てみると丸いポッチが付いていて「これ、何だろな〜」って思った事がある人はいないかな?(いねえだろうな〜)これは「ISO規格」のねじである証拠の[ISOマーク]なのです。


四回:ステンレスの見分け方

過去ステンレス(以下SUS)の電位差による電触の話をしましたが、皆さんは例えばねじでSUSと鉄なのかの見分け方、御存知でしたか?鉄製のねじでもNiメッキやユニクロなんかは時として間違えやすいものです。恐らくバイク屋さんでも気にも留めてないはずです。この見分け方は以外に簡単!それは

磁石に付けて見て引っ付けば鉄、つかなければSUS製と判断します。

ただしナイフに使用されるSUS440などの4番台では引っ付きます。まあ、ねじに使用されるのはほとんどがSUS303やSUS304の3番台なので、前述の見分け方で間違い無いでしょう。

第三回:水素脆性について

だんだん難しい言葉が出てきましたが、根気良く付き合って下さいね!前回でねじのメッキについて触れたんで今回はそのメッキ処理についてライダー諸君へ知っておいて損は無い話です。
とにかく一番怖いのは走っている最中、突然ボルトが折れたらどうします?場所によっては命に関るはず。諸君が愛車をカスタムしていく中で各ボルトやねじをクロ-ムに変えたいのは山々。そりゃあ小さいBOLTでも全部セットで変えた日にゃ愛車は見違えるような輝きを取り戻すはず。そこで知ってて損の無いのはメッキの工程と伴うねじにおこる水素脆性による危険性である。先ず一般的なメッキの工程で

1)酸にて洗浄。 2)亜鉛によるイオン電着。 3)クロメートと言われる表面処理。

ここで問題なのは(1)の酸洗い!鉄を酸で洗うと言うことは必ず「水素」が発生する。この水素が金属内に入り込んで金属が折れる現象を水素脆性と呼ぶんだ。ただし一般の小ねじなんかでは材料が「SWCH10R」と呼ばれる材料でこの数字は炭素含有量でこの10=0.1%が最も低い。この炭素含有量が低いねじは水素が入り込みにくく問題はほとんど無いが,諸君がメッキを変えたいと思うのはつまり「目立つところ」=「大きなボルト」じゃなかろうか?
大きなボルトとなればそれなりの強度が要求される為、炭素含有量の多いS35CやS45Cといった熱処理による「調質材」を使用している。

よってメッキの付替えや粗悪なBOLTを買った日にゃ目もあてられん。又,この水素脆性という奴は厄介な事に締めている最中に折れるならまだしも締めた時は問題無く時間がたってから突然「ポロ〜ン」とおれる特性があるんだ。ほいじゃあどうすりゃええんじゃ?と言ってる御仁!へ対策を伝授しよう。

)ねじの強度区分を知り(頭に数字有り)9.8以上ならメッキ屋さんに必ず「水素脆性防止のベーキング処理」依頼を付け加える事!

2)ねじ強度区分10T以上のものは極力メッキしない方が無難!あえて何か防錆処置を施すならば、メッキ屋さんにて聞いてみよう。例えば車両用にて一般的なのは「ダクロ」と言われる処理がある.これは見た目には銀の塗装の様で時間が経つに連れ黒ずんではくる。

これは約190℃〜250℃ぐらいでオーブンで焼く工程。メッキ屋さんなら当然知っているんだが、中には忙しさにかまけて素人相手となめられ、いわなきゃやらない所も有るはず。この工程によって金属内に入った水素は無くなりはしないが、拡散させられ拡散してしまえば水素脆性は先ず起きないという事だ。

 

第二回: 異金属の電触について

今回は違う金属どうしをくっつけたらどうなるか知ってます?くっつけ方は溶接とか色々有りますが、最も身近なねじ締めによるくっつけです。ライダーで良く有りがちなのは、マフラー止め様のねじに錆びないようにとステンレスのねじを使う人が多々見かけます。無論見かけも良くしたいが為の事でしょうが,通常ステンレスのねじには表面処理は施されてなく生地のまま。対するシリンダーヘッドはアルミニュウム製。先ず知っておきたいのは

1)全ての金属は電気を帯びており電位がある。

2)電位が違う金属どうしが触合うと弱い金属から腐蝕していきます。

これを電気腐蝕略して電触とよんでます。

上記の場合、ステンレスとアルミは最も電位差が激しく確実にアルミ側が腐触を始めます。つまり修理にお金がよけいに掛かる方です。マフラー意外でも2輪であれば軽量化等の目的でアルミ部品を多く使用してます。そのくっつけ(締結)には注意しましょう。ちなみに「じゃあどうすりゃええんじゃい!」と言われる方へ。要は違う金属どうしが接触しなければいいんです。つまりどちらかにメッキ等による表面皮膜をつけてやる。どう考えてもねじをメッキ付きにするのがBestでしょう。

 

第一回: 金属の「錆」について

以外に知らない人が多いんですが、「ステンレスやアルミは錆びない」と思っていませんか?この地球上のあらゆる金属は確実に錆びます。そうですチタン合金もです。先ず金属が錆びるには3つの条件が有ります。それは

1)空気 2)温度 3) 水分

この3つの条件を見たした時、金属は腐食(いわゆる錆び)が発生するんです。逆に言えばこのどれか1つでも欠ければ錆びないんです。例えば海にかかっている橋!必ずペンキを塗ってますよね。あれはペンキによる塗装で空気を遮断しているんです。金属に使われる表面処理(メッキ)も別の金属で表面に皮膜を作り空気を遮断し錆びないようにしているんですね。
でもメッキも古くなって錆びてくるじゃないか!と御考えのあなた。それはメッキによる表面皮膜がダメージを受けその隙間から錆びてきたんですよ。
それともう一つ!ねじなんかでは応力がかかっている状態(締め付けられている状態)の方がよりいっそう錆びやすいんですよ。これはステンレスで気の遠くなる程の塩水噴霧試験(塩水を定期的に吹きかける試験)をやった会社が有りましてそこのデータで証明されてます。ステンレスも真っ黒になり穴まで空いてしまいました。